敵の変化
爆発音がしてその方向を見ると官兵衛の船からも戦艦尾道が被弾するのが見えた。鉄盾を越えて空中で砲弾が爆発し、そこから炸裂弾のような物が降り注いだ。そして60数える毎に物見の報告が来るはずだがそれが途絶えた。
「物見を変えろ。人数も増やせ。敵の船の位置を教えろ!清水とやら、敵船に向かって砲弾を撃ちまくれ。敵船を近づけてはならん」
「承知!」
清水は海戦が初めてとは思えない官兵衛の指揮に惚れ惚れしながら指示を出しに行った。周りの船へも合図を出した。
清水は甲板を見て戦艦官兵衛の三連砲塔に気付いた。そうだ、この船にはこれがあったのだ。新しい物見に船の位置を報告させて撃ちまくれば勝機はあるはずだ。
武田海軍の方はすでに駆逐艦櫻3隻と楓3隻が小早川水軍の両脇に近づいている。正面に並んだ鉄盾で砲弾が防げないように横から回り込んだのだ。小早川水軍もそれに気付いて一部の船が楓と櫻の方向に船首を向け始めている。その前に櫻と楓から砲弾が飛んだ。
一気に6隻の船を大破させた。だが、そこで敵からの砲弾も飛んできてゼンマイブースターの加速で砲弾を避けながら離脱する。敵の船が追いかけてきて敵の戦列が乱れる。逃げる楓と櫻を追うように出てきた船を武田海軍の別の船が狙い撃つ。
小早川水軍の方は物見が入れ替わり、側面の状況が官兵衛に伝わってきた。
「何をやっている。船列を立て直せ!砲撃はまだか?」
官兵衛が叫んだその時、戦艦官兵衛からの砲撃が駿河マーク参に向かって始まった。他の船は楓、櫻を援護してきた船を狙い撃ちはじめる。
官兵衛は物見にある指示をしていてそれが確認できた事を聞いて、
「勝った。これも天運」
そう小さく呟いてからまた怒鳴り始めた。戦は声が大きくなるものだ。
戦艦駿河マーク参、戦艦清水がスクリュークラッシャー砲の通常弾を連射する中、戦艦用宗からの発砲がなかった。手旗信号で故障という合図が来ている。
「こんな時に。また佐々木殿の船ね。ちょっといただけないわね。敵の砲弾は網で捕えて被害を抑えて!先頭空母からの支援は?」
「はい、子駿河改が30隻敵船に向かっています。例の武器を装備しています」
ここまではほぼ予定通り。戦闘空母を待機させておいて良かった。
「通常弾の中に一発、あれを仕込んで!」
小早川水軍からの砲撃が届き始めた。捕獲網を続けて発射し手前の海に落下させていたが敵の砲撃が止まない。
「仕方がない、網がなくなる前にこちらも鉄盾を、そしてそのまま前進」
鉄盾を出してしまっては大砲が撃てなくなる。だが、敵の攻撃の物量が多いのでかなは的確な判断を下した。結果的ににそれは功を奏し敵の砲弾を鉄盾で防いでいる。清水も用宗も鉄盾を出しているのが見えた。だがなぜか用宗の周りだけ敵の砲弾が飛んできていない。その事には未だ気づく余裕はなかった。
「敵船の様子は?」
官兵衛は、報告に来た物見に聞いた。この物見は優秀で官兵衛の知りたい事を的確に答えた。
「こちらの砲弾を最初、投網のようなもので防いでいましたが予備が無くなったようでこちらと同じ鉄盾を出してきました。我らの砲弾は鉄盾に防がれていますが、敵も盾を出したために砲撃ができなくなっています。鉄盾を出したまま前進して距離を詰めてきています。また小船が三十ほど戦艦の前に出ました」
「その小船を砲撃しろ。盾への砲撃も続けるんだ。敵が盾を下げれないようにしなければならん」
「清水様に伝えます」
次の物見がやってきた。官兵衛は物見の数を増やしている。正面、右、左の情報を的確に入手したかったのだ。
「左側ですが、突っ込んできた船は下がりそれよりも大きな船が距離を取っての側面攻撃をしてきています。こちらも砲撃し敵3隻、こちらも3隻が大破しました。当面左側は大丈夫と思われます」
「こちらの小型船を左側から敵旗艦に向かわせろ。盾の横から攻めるんだ」
官兵衛はかなの戦法をそのまま真似るつもりのようだ。武田はこちらから前に出るとは思ってないだろう。今までそういう動きはわざと見せていないからだ。それに気づかれないように砲撃を緩めずにいるのだ。その時、戦艦官兵衛の上空で物凄い爆裂音がした。艦内にいた官兵衛でさえ耳を塞ぎ座り込むほどの轟音と謎の振動が艦隊を襲ったのだった。そしてその音は小早川水軍の物見の聴覚を奪った。官兵衛の左翼への指示は合図で送られたのでなんとか伝わったが、物見への報告・指示が一時的にできなくなってしまった。
「かな様、爆音弾が敵船上空で破裂しました」
「ここまで聞こえたわね。全く恐ろしいものを作るわね」
竹中半兵衛作、爆音弾。殺傷力は皆無だが音に特化した砲弾です。何やら増幅とか共鳴という原理だそうですがよくわかりません。
「敵を殺さずに戦闘不能にしたいって半兵衛様は言ってたけど、こんな音したら味方もやられちゃうじゃない。なので海上砲撃で試したのだけど……… 、改良しないと使えないかも。今のうちに子駿河改を突っ込ませて全弾発射後、即離脱で」
楓2隻、支援の巡洋艦3隻が敵の砲撃で航行不能になったとの知らせが入る。敵の左翼からの反撃だった。右翼は無事なようだ。
「敵が急に強くなったけど、何があったのかしら?」




