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未来を知った武田勝頼は何を思う  作者: Kくぼ


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反転

 伊谷は兵に手旗信号で前を行く戦艦用宗と連絡を取ろうとしますが返信がありません。部下の報告を受けた伊谷は、焦りながら独り言を言っています。


「佐々木め、こちらに気づいていないのか?後ろを気にする余裕がないのか?だが戦闘にはなっていないようだし何なんだ、あいつは」


 佐々木は優秀な部下です。要領がよく気も利くタイプで、この位置まで取り立ててきたのは期待も込めてですが、ちょっとこの対応はいただけません。戦艦金谷には加速用のブースターはついていません。正確に言うと一応ついてはいるが緊急時の回避用で前の船に追いつくためには使えない。流石に戦艦ともなると大きすぎてエネルギーが足りないのだ。そこはゼンマイ駆動の限界だろう。ガソリンエンジンは加速装置のような運航はできないのです。仕方なく戦艦金谷は最大船速で用宗を追尾していきます。




 前を行く戦艦用宗の艦長佐々木は兵の報告で後ろから武田海軍の船が近づいてきていることを知った。佐々木も独り言を言っています。


「流石は伊谷様だ。どうやらまだ時機ではないようだ」


 佐々木は兵に船を止めるように指示して子駿河を用意させ、戦艦金谷へ向かった。ここは詫びねばならない。




 佐々木は戦艦金谷に着くなり伊谷のところへ向かった。


「殿、もしかして某が仕出かしましたか?」


 佐々木はしらばっくれている。伊谷は佐々木の様子を見つつ、


「かな殿の指示は停船だった。合図を見落とすとは武田海軍ではあってはならぬこと」


「申し訳ありません。あそこは敵を追いかけるものと思い込んでおりました。これは某の過ちでございます」


 他意はなさそうだ。単純に合図を見落としたように見える。


「そなたは戦の経験がまだ足りないのだ。今、戦力を失うわけにはいかない。戦はまだ始まっていないということを………」


 そこまで言って伊谷は気がついた。秀吉が宣戦布告はしたが、まだ戦いは起きてはいない事を。ここで武田から仕掛けるのは良くないのではないか?かな殿に言うべきか?そして戦艦駿河マーク参が追いついてきた。


「かな殿。この後はどうされますか?」


 かなは少し考えてから答えます。


「そうね、用宗一隻だけでは勝てるかわからなかったけど今なら」


 そこで一度考えてから、


「敵の船に乗ってるのが誰かわかったのよ、小早川秀秋、隆景が隠居して秀吉の甥が継いだんだって。ここで脅しておくのもいいかなって」


 伊谷は驚いて、


「追いかけるのですか?瀬戸内海に入れば敵の本拠地、どんな備えがあるかわかりませんぞ」


「大体はわかってるのよ。それに例の風魔も東北へ行っているしね。脅威はないと思う。強いていえば、もっと強い船が出てくるかもだけど、隆景なら一番強い船で大阪へ行くんじゃあないかな?もしもって事もあるし」


「草が高知へ避難してしばらく経ちますが大丈夫でしょうか?情報が足りていないと思います」


「そうねぇ。さっきの戦闘の感じだと敵の射程は少し前のうちのくらいかな。危なくなったら逃げましょう。足の遅い戦闘空母は後方で待機させます」


 伊谷はかなの決心が変わらないのを感じ、


「わかり申した。全艦第一戦闘準備、このまま敵船を追う」


 伊谷は戦艦金谷へ戻って行きました。かなは戦闘空母に指示を出してから船長室に入ります。


「小早川秀秋かぁ。話を聞くと坊々というか、たわけみたいだけど、どう出てくるかしらね?」








 武田の船が再び鶴翼の陣もどきで敵船を追いかけ始めた頃、小早川秀秋の乗る戦艦尾道は全速力で瀬戸内海の入口まできていた。船を操る家老の清水景治はやっと一息ついた。


「殿、ここまでくれば大丈夫でござる。もうじき瀬戸内海に入りまする」


「そうか」


 小早川秀秋はあのような大砲を初めて見たのだが、あんな武器があっても逃げなければいけないという事に恐怖している。武田の船にビビっているのだ。そこに見張りから伝令が来る。


「清水様、味方の船が出迎えに来ております。その数30」


 清水は安心した。それだけいれば武田も容易には攻めてこないだろう。ところがそれを聞いて、小早川家を牛耳ろうと考えている家老の山口宗永が余計な事を言い出します。


「秀秋様。味方の援軍でございます。ここで武田水軍を迎え撃ちましょうぞ」


 焦ったのは清水です。まずは秀秋を陸に上げてそれからにしないと何が起きるかわかりません。


「山口殿。まずは秀秋様を廣島までお運びするのが先決。武田との戦はそれからでも遅くはありません」


「先ほどは数で劣っていた。今度はこちらの番ではないか?それにここで殿が自ら指揮を執られ武田に勝てば太閤様もお喜びになるに違いない。殿、ご決断を!」


 秀秋はオロオロしている。そう言われてみればその通りのように思える。だが、清水の言う事ももっともだ。どうしたらいいのか?


 そこに再び伝令が来る。船が50に増えたと言う。その中にはこの船より大きな船もあると言うのだ。清水はそれを聞いて驚く。完成していたのか新型艦が!小早川秀秋は、山口に再度促され、決断した。


「この船を後ろに配備する。本陣のようにだ。そしてここで武田を迎え討つ」


 清水は諦めて、戦の準備に入った。新型艦があればなんとかなる、いや、しなければならない。












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