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未来を知った武田勝頼は何を思う  作者: Kくぼ


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家老の争い

 清水景治は焦る。敵の全貌もわかっていないのに、しかもここで敵と会うとすれば武田の可能性が高いのだ。長宗我部の残党の可能性もあるが、清水の勘がこれは危ないと言っている。


「山口殿、貴殿は水軍の事はわかりますまい。殿、ここは戦を避けるべきです」


 清水が小早川秀秋に訴えると秀秋は清水を見てもっともだという顔をする。それに対して山口宗永が別の事を言い出す。山口宗永は、秀吉が信頼している武将で秀吉から秀秋では不安だら、お前が秀秋を助けて小早川を仕切るように言われてきている。おかげですっかりその気になっているのだ。ここで古参の清水家に負けるわけにはいかないのもあってなんとなく引けなくなってきている。


「小早川隆景様は長宗我部を破りその功績を殿下は心から誉めておられました。それは水軍の力あってこそと聞き及んでおります。この水軍はこの四国では敵なしではなかったのですか?」


 この船団は元々、真っ直ぐに瀬戸内海に入り廣島へ行く計画だった。それを急に変更したのは小早川秀秋だ。なんの功績もない秀秋が縁故だけで手に入れた領地へ向かう途中、せっかくだから四国を一周したいというので航路を変えたのに甲板に上がったのは一瞬だ。秀秋は水軍を手に入れたのを身で感じたかったのだろうがそのせいで敵?と遭遇してしまった。四国では敵なしというのは長宗我部を破った小早川隆景が秀吉への報告の時に殿下が発した言葉だ。それをいいように使われている。


 秀秋は山口の発言を聞くとまたもっともだという顔をする。清水からしたら秀秋はついこの間領主になった男でどんな人間なのかわかっていない。今まで仕えて来た隆景は真っ直ぐで慎重で尊敬すべき領主だった。この男はなんなのだ?はっきりしない?


「殿、この船団は10隻で構成されておりまする。この戦艦尾道は武田の船を元に新たに製造した新型艦ですが、5隻は殿下への贈り物を積んでいた輸送船で今は殿の家財道具しか積まれておらず戦には役に立ちません。敵の戦力がわからないまま進むのは危険です」


 秀秋はまたもっともだという顔をする。山口はまたか、と思いながら発言する。秀秋の優柔不断はいつもの事なので山口にとっては扱いやすい。


「この場所は豊臣家の領地です。ここにいるのは味方か敵の残存戦力でしょう。この巨大な船があれば敵を一掃できますぞ。ここで景気付けに敵を倒して進みましょう。中納言様」


 秀秋は赴任前に中納言の官位を賜った。何もしていないのに。ただ、官位は嬉しかった。中納言様と言われて、秀秋は決断をした。




 結局、戦艦尾道を含む10隻は謎の敵船団に向かっていく。清水はこうなったら仕方がないと、船員に指示を出している。まだ、こちらの射程距離には敵は入って来ていない。敵は海上に止まっているようだ。


「敵はこちらに驚いて動けないのか、それとも気がついていないのではないですかな。その大砲とやらを撃ってみては?」


 山口は能天気に話しかけてくる。清水は緊張していたが間抜けな問い掛けにちょっと気が緩んでしまう。


「まだここからでは届きません。山口殿は大砲を撃ったことは?」


「ありません。一度見てみたいと思っておりました。清水殿、先程は失礼した。今後とも秀秋様をお支えしていかねばならん。お力を」


 清水は小早川家には恩がある。秀秋はよくわからない人ではあるが、関白のいや、太閤の甥だ。お家を盛り立てていくのが責務なのはこの山口も同じなのであろう。


「わかり申した。その事に関しては異論はござらぬ」


「敵船が見えて来ましたな、横に広がっている?こちらの大砲を恐れているのですかな?」


 だんだんと敵船団が見えるようになってきています。


「5隻、いや、後ろにもいるな。しかもでかい、あれは武田の船では?」


「まさかに。ここは四国沖ですぞ、我らの領地に勝手に入っているのですか?」


「山口殿、海は広いのです。陸地のように国境に線が引けるわけでもなし、海の上に見張りを置けるわけでもなし。海の上は自由なのです。さて、引き返しましょう。分が悪い」


「しかし、ここで敵を見逃すわけにもいきますまい。中納言様のご指示を」


「一刻を争います。直ぐにも引き返しましょう」


 そこに秀秋が現れた。


「何事か、うるさいぞ。敵はどうした?」


 山口が経緯を説明すると秀秋は少し考えてから、


「清水の言うことももっともだ。だが大砲は見てみたい。そうだ、一発威嚇で撃って敵が驚いている間に下がるのはどうじゃ。どうじゃ、どうじゃ、いい案であろう」


 なぜか秀秋はドヤ顔だ。清水は焦っているのでなんかむかつきながらも


「殿、そのような時間はありませぬ。今直ぐ退却を」


「清水殿。殿のお仰せじゃ、支度せい」


 山口に上から目線で言われさらにむかつく。こいつとはやはり仲良くはなれそうもないと再度認識しつつ、大砲発射の合図を出した。


「最大射程で中央のでかい船に向かって撃て!」


 爆音と共に砲弾が発射された。

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