表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
未来を知った武田勝頼は何を思う  作者: Kくぼ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

382/471

お市と信忠

 その頃、徳は岐阜城にいた。徳はすでに家督を源三郎信之に渡して隠居した武藤喜兵衛を連れてきている。


「大屋形様は東北ですか?ぼちぼち時期が来たと思っておるのですが」


「そうね。あたいの方はいつでもいいんだけど。東北の仕置が終われば次は」


 そこに割り込んできたのはお市だ。今回は珍しくお市も出てきていた。


「また物騒な話をしていますね。もう歳です。死ぬのを待てば良いではありませんか?」


 秀吉の事だ。お市は秀吉を殺し損ねた過去がある。勝頼とは違う形で未来とリンクしてしまい、茶々がどうなったかを知ってしまった。その未来はもう起きないが秀吉の恐ろしさを感じてしまった。そしてこの世界でも武田の中では最も秀吉を知っている、その不気味さを。


「いっちゃん。それはそうなんだけどね。向こうが待たないだわさ」


 喜兵衛は徳の言う意味を考えた。同じ意見だった。秀吉が死ねば豊臣は崩壊するだろう。それを待つというのは策としてはたしかにその通りなのだが、秀吉もそれをわかっている。だからこそ元気なうちに仕掛けてくる。仕掛けられるのがわかっているのだから準備ができる。


「徳さん。秀吉に子が出来るとは思わなかったのだけど、何かしたの?」


 お市は秀吉がどれほど女好きか知っている。未来でも子はなかなか出来なかった。茶々とだからできたのではないかと思っていた。つまりもう子は出来なかったのではなかったのか?徳は驚いてお市の顔を見て、


「いっちゃんは気付いたのね。さすが織田信長の妹!」


 と言ってからお市に経緯を長々と説明した。経緯の中で後藤信尹の名前が出た時に驚いたのは武藤喜兵衛だ。


「師匠、あの愚弟めが関わっていたのですか?」


「あれ?知らなかったっけ?」


 豊臣方の後藤信尹は武藤喜兵衛の弟だ。真田の名を捨てて大友宗麟に仕えていたのだが、今では名が知られるほどになっている。当然真田兄弟とは連絡を忍びを通じて取り合ってはいてお互いの状況はわかっている。だが、この話は初耳だった。


「そんな薬が。それを秀吉に与えて子が?そんなにうまくいくものなのですか?」


「偶然というか、運ね。こっちでコントロールできるわけではないし。あたいは反対したんだけどね。三成が跡を継いだ方が楽そうだし」


 そこまで聞いてお市は理解した。勝頼の考えなんだと。実際、子ができるかは運だろう。出来なかったらそれでよし、出来れば家中が荒れる。三成の時代を待つのではなく、その前に決着をつける気なんだ。誰のために?


 お市は黙り込んで考えている。運良く子が出来た。そして三成は佐和山に戻ったという。あの秀吉が子煩悩になるとは思えない。そこに、与助が現れた。


「殿、一大事でございます」


 与助は今でも武藤喜兵衛のことを殿と呼ぶ。


「どうした。珍しく慌てているではないか?」


「石田三成が甲賀の忍びに殺されました」


「そうか。師匠、荒れますでしょうか?」


 徳は大して驚いていない。


「自害って事になるでしょ。このままでは収まるわね。与助、この事を大屋形様に。指示を聞いてきて」


 与助はそれを聞くと走っていった。お市はまだ考えている。


「想定内だけど、勝手に動くのもね。いよいよ大詰めだし。さて、信忠殿のご機嫌はどうかしら?」


 想定内と聞いてお市が顔を上げた。徳は大名や名家の出ではない。それを気にした事はないが、それなのにこんなに頭が良いというか回るのがすごい。


 勝頼には正妻の他に側室が何人もいる。


 正妻:彩    今川義元の末娘で長男 信勝と三男 信和の母だ。

 側室:しお   徳が見つけてきた高遠の庄屋の娘。長女 春と次女 夏の母だ。

 春は伊達小次郎に嫁いでいる。 夏は穴山に嫁いだが………。

 側室:華名   徳が見つけてきた諏訪一の美女。次男 信平と三女 幸の母だ。

 信平は結城家を継いだ。

 正室:市    織田信長の妹 子連れ再婚 娘茶々は信勝の妻。

 側室:甲斐姫  忍城主 成田氏長の娘 四男 四郎の母だ。

 妾頭:徳    一番の古株。高遠の農家の娘。


 徳が出身では一番の格下だが、実際は一番影響力がある。勝頼の軍師は何人もいるが筆頭軍師でもある。お市は自分があの立場でああ振る舞えるか自信がない。あくまでも勝頼を立てているところが素晴らしいと思っている。


 今回お市が同行したのは甥の織田信忠に会うためだ。



 織田信忠は御一行を岐阜城の広間に通すように言って、しばらくしてから広間に入った。こういう所にプライドが表れている。一時期は父親のおかげとはいえ天下人になれそうだった。それは脳裏から消える事がない。


 広間に入り上座に座ると、


「信忠殿。徳さまに失礼ではないですか?立場をわきまえなさい!」


 お市の喝がいきなり飛んだ。控えていた丹羽長秀は下を向いている。


「叔母上。ご健勝で何より。ですが、ここは岐阜。織田の領地。武田の俗国とはいえ勝頼殿以外に上座を譲るわけには参りませぬ」


 わかってないなあ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ