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未来を知った武田勝頼は何を思う  作者: Kくぼ


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密室

「おおーん、お、おお、うぉおお………… 」


 秀吉は三成に抱きついて嗚咽状態だ。部屋に入るなり遺体に抱きついたのだ。周りは唖然としている。特に後藤信尹は秀吉を見るのは2回目だ。事前にどんなやつか知らなければ騙されたであろう。それくらい泣き喚いている。


「何で死ぬ事があろう。余は咎めないと言ったではないか。なんで、なんで……… 」


 秀吉はそのまま10分ほど泣き続けた。周囲はただそれを見守るしかなかった。




 秀吉はそのまま何も言わずに大阪城へ戻って行った。石田屋敷に来た秀吉の様子は瞬く間に大阪中に人の声として広がっていく。翌日、大阪中の話題は石田三成が自害し、それを聞いた関白が直ぐに弔問へ訪れたという話だ。帰り道に豪華な籠の中で秀吉が泣いていたとの話がどんどん広まっていく。


「関白の子が三成の種というのはやはりただの噂だな、本当だったら首を晒してとことん責めるのがあの猿のやり方だ」


「関白様を猿と呼べるのは織田信長だけって聞いたぞ?」


「おう、俺がその信長よ!」


「嘘つけ、この呑んだくれが!」


 酒場の会話だ。


「まあまあ、なんにせよ、処罰がないということは無罪ということだ。死んだからといって許すような男ではないと聞く。無実なら死ぬ事もなかろうに」


「三成さんもかわいそうだよな。向こうの都合で養子になって関白になれると思ったら子ができたから用済みってか。死にたくもならあな」


「たしかに」


 町ではそんな会話が飛び交っている。実際、秀吉の女好きは有名で、今度はどこどこの大名の娘に手をつけたという話は酒のつまみになっていた。そういう意味でも秀吉は人気なのだ。跡取りが出来ない事も下衆な話題が好きな民の間では、あれはあいつの子だ、いいや、あいつだろうと好き勝手に言っては盛り上がっていたのだ。三成の子と言っていた連中も昨日の事件から、すっかりあれは間違いで秀吉の子だったんだと思い直し酒を呑んでいる。そんな中、すっきりしないのが細川幽斎だ。幽斎は石田屋敷を訪れている。


「左近殿、それがしは前田利家が黒幕だと思っている。そもそも、孫が関白になれるのだ。邪魔者を、いや失敬。三成の存在を消しておきたかったのではないか?」


 かなり強引な推測だ。前田利家が三成を暗殺?


「細川様。推測だけでは動けません。それにあの殿下のご様子からこれ以上事を荒立てないほうが良いかと」


「それでは左近殿はこのまま引き下がると!」


 左近はあくまでも冷静を装っている。本当は怒っている。だが、細川に当たっても仕方がないし何も解決しない。そもそも細川幽斎は何なんだ。


「そうは言ってはおりません。前田利家様以外の可能性もあるのですから。誰が主人を殺めたのか?そもそも今の三成様を殺めて何になるのか?それがわかるまでは動きませぬ。それよりも細川様は何をされたいのか?なぜここにいらした?」


「それがわからんのだ。わしはどうしたいのだろうか。この間、明智十兵衛の夢を見た。わしは元は足利幕府に仕えていたのに今のわしはあの猿にこき使われるだけの男になってしまった。こんなはずではなかったのだ。幕臣としての誇りがいつのまにかどこかに消えてしまった。十兵衛が裏切り信長が死に、義昭様までお亡くなりになった。生き残るため、家を残すため、そうだ。家、忠興を守る、家を守るため強い者に従っている。義昭様を担ぎ上げた時、わしには大義があった。わしは今、大義を求めているのだと思う。左近殿、三成の死はそのままにはできん。わしがとことん調べるぞ。秀吉にも調べるよう言いつかっておる事だし」


「三成様が殺されたのは証拠がないとはいえ間違いのない事。それがしは石田家を去ります」


「な、何と。それは待たれたほうがいい」


「直ぐではござらん。後始末もありますゆえ。ですがそれがしは三成様とのご縁で石田家に仕えました。縁が切れればそれまでの事」


 左近は元々は三成に拾われただけだ。誰が殺したのか、今後はそれ次第と心に決めていた。




 細川幽斎は島左近と連絡を取り合う約束をしてから一度自宅へ戻り、それから大阪城へ出仕した。秀吉から噂の出処を調べるように言われていたが、継続するのかを確認したかった。秀吉はやつれているように見えた。


「三成は死んだ。死人を調べてどうするというのだ。そんな事も………、もう良い、下がれ」


 秀吉はそれだけ言って幽斎を下がらせた。幽斎はそれならば、と前田利家を調べることにした。幽斎は根が正直なのだ。故に騙されやすい。




 大阪城には秀吉しか入れない秘密の部屋がある。その部屋の存在を知る者は少ない。秀吉の自室に壁の裏にその部屋はあり、出入りは秀吉のみが知るからくり仕掛けの壁返しと、忍び専用の通路だ。その忍びも容易くは通る事ができない罠が多く仕掛けられていて、要は初見殺しの罠が多数あるので忍び込んだ者には死が待っている。今、その部屋の中に秀吉と甲賀の忍び、飛龍と地龍が揃っている。


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