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未来を知った武田勝頼は何を思う  作者: Kくぼ


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災い

 細川幽斎は帰宅後、後藤信尹に明日伺うと使いを出して、床に入った。不思議なことに滅多に見ない夢を見た。


「藤孝殿、公方様には何としても京へお戻りいただき、この戦国の世を仕切って頂かねば」


 声をかけてきた明智十兵衛だった。まだ若い、いつの頃だろうか。十兵衛の目は言葉と裏腹に曇っていた。発言と目の色に矛盾がある。そうだったのか、あの時から十兵衛は公方様を見限っていたのか。あの時の俺は兄上とともに幕臣として正しい道を進んでいたはずだ。そういえば武田勝頼に会ったのもあの頃だ。あの時、勝頼はまだ家督を継いでいなかった筈だが何か風格のようなものが感じられた。そういえば公方様は勝頼公の側女にご執心だった。ただの踊り子にしか見えなかったがあの女が武田を大きくしたと殿下が言っていた。どこでどうなればそうなるのか?公方様が十兵衛を頼った時からこうなる事は決まっていたのかもしれない。





「公方様、我が殿が公方様の刀にも槍にもなると申しております。織田信長こそが真の忠臣であります。公方様のために二条に屋敷を建てておりまする」


 場面は変わって、調子のいい事を言っているのは木下秀吉だ。木下?そういえばこいつは百姓の子では無かったか?俺はこんな奴を関白にしたのか!それで今もこいつにヘコヘコしている。この野郎もこの頃から天下を狙っていたのだろう。ヘラヘラしている猿顔の裏が今なら見える。この時は確か十兵衛は織田信長の家臣になっている多はずだ。秀吉といい十兵衛といい公方様を全く重んじていない。自分がのし上がるための道具としか思っていないのが今ならわかる。


 十兵衛はある日突然信長の家臣になった。あれは武田が岡崎城を攻めた頃だったと思うが、公方様から突然十兵衛に見限られたと哀しそうに告げられた。未だに明智十兵衛という男がわからない。底が見えないのだ。






 こ、これは俺か!また場面が変わった。


「公方様。某が付いていながら………、一体誰が本陣へ攻撃を」


 この時、細川藤孝は攻めてきた前田利家と槍を交えていた。蜂矢の陣を敷いていた足利義昭の本陣は矢尻にある。前に進んでいたのだから背後を突かれるとは想定していなかった。側面を少数の兵で仕掛けてきた前田利家の奇策の気が付き、応戦をしていたのだが、その時、背後には危険が無かった筈だ。


 公方様が倒れたという噂が戦場に駆け巡った。今では誰かが故意に言いふらしたようにも思える。そして織田信長も荒木村重に討たれたと聞き、利家と一時休戦をして本陣へ駆けつけたのであった。


「公方様、これからそれがしはどうすればいいのだ。十兵衛め、いくら信長の命令とはいえかつてお世話になったお方を攻めるとは、ゆ、許せん。公方様の首を渡してはならんぞ。前田、お主には渡さん!」


 前田利家は少し離れたところで座り込んでいる。戦の最中とは思えない態度だ。


「細川殿。上様が亡くなった、公方様もだ。それがしもお主も主無しになってもうた。そこで、だ。お主に頼があるのだが」


 こうして前田利家は秀吉についた。そして娘を献上し子が跡取りとなる。




 細川幽斎は飛び起きた。利家、あいつの都合のいいように動いている。どう言う事だ?今までなんで気が付かなかったのか。


 居ても立っても居られず、日が昇る前に家を出て後藤の屋敷に向かった。




 後藤信尹は起きると直ぐに庭で刀を振る。決して剣豪ではないが鍛錬は続けていないといざという時に身体が動かない。そして有事は近いであろう。


 刀を振っていると門の方で足音がした。こんなに早く誰だろうかと様子を伺うとそこには汗だくの細川幽斎がたっていた。


「細川様、どうなされた。いらっしゃるとは聞いておりましたがこんなに早くから。何があったのです?」


「後藤殿。す、すまん。じっとしておられなかったのでつい迷惑だと思いつつ来てしまった。前田利家、彼奴こそが、いや、待てよ」


 幽斎は秀吉の後を利家が取るのではと思っていた。だが、それは、     吉報だ。悪い話ではないではないか。そう思ったら急に気が抜けて地面に座り込んでしまった。


 後藤信尹は幽斎を部屋で休ませて、一緒に朝餉を取ることにした。結局、前田利家の名を出してからそれが何なのか話そうとはしない。信尹は幽斎が秀吉の下で苦労しているのをよく知っている。おそらくは石田三成の件で来たのだろうが、そうなると子の祖父が前田利家。秀吉が死ねばという事か。だがまだ秀吉は死なないだろう。拾の時代がしっかりするまでは気は衰えまいて。


 朝餉の支度ができ、幽斎を呼び、汁を飲もうとした時にそれは起こった。急に使者がやってきて大声を出している。


「細川様の家のお方のようです。お通しいたします」


 何事か気になる。話は一緒に聞いたほうがいいと信尹は部屋へ使者を招き入れた。使者は幽斎を向いて膝をつき、


「石田三成様、ご自害!」











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