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未来を知った武田勝頼は何を思う  作者: Kくぼ


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石田屋敷

 石田屋敷を加藤清正が訪れた。三成が白装束で大阪城にて腹を切ろうとしたと聞いて飛ぶように急いできたのだ。

 ところが三成は部屋に閉じ籠もってしまい、清正と会おうとしない。仕方なく島左近が相手をしている。


「加藤様。申し訳ございません。ああなると三成様は何かきっかけがないと出てきません」


「仕方あるまい。しかしいくら身の潔白を示すためとはいえそこまでしなくても。お主の提案か?」


「まさかに。それがしはお止め申しましたが聞き入れていただけず。そのうちになるようにしかならないと思い、結果的には三成様の意見を通したのです。秀吉様は命まではとらないだろうと。所詮噂ゆえ」


「その噂だが、お主はどう思う?昨日、後藤のところへ所用があって行ったのだが彼奴は有象無象と言いおった」


 人の噂などあてにならない、誰かが言って面白ければ話は広がる。民はこういう話題が好きなのだから。そしてそれを言うのも広めるのもそこらの民だと後藤信尹は言っている。


「後藤様?以前細川幽斎様から話を聞いた事がございます。智慧者だとか。そうですか、有象無象と。冷静な判断ですな」


「わしもそう思う。殿下はあくまでも噂だとわかっておいでだろうが、火元を気にしておられるご様子。三成は立場が難しくなっている。お主の支えが必要だぞ、左近」


「はい。加藤様がご心配されてましたことを主人に伝えます」


「で、お主はどう思う?火元の事だ」


「それがしの推測など当てになりません。殿下にもそう申し上げたのですが意見を言わされました。それがしは近衛様ではないかと申し上げました」


「五摂家か、あり得る話ではあるが。武田の筋ではないのか?」


「噂に聞く勝頼殿はそのような策は取らないような感じがしています。加藤様は武田勝頼とは?」


「相見えた事はない。殿下はいずれぶつかると申されていたのでわしも調べはしたが、家臣に優れた者がいるようだ。縁あって蒲生の生き残りが当家にいるのだが、聞いても信じられない話が多い。妖術とも思えるが忍びに聞いてもそんな物は知らないという。家臣がいいだけなのか、本人がどういうお方なのかまではわからん」


「某は放浪の身の時に武田領地を旅した事があります。それとなく民から聞いた事ですが、悪い噂は聞きませんでした。税は下がり、物資が豊かになり、飢饉の時にも民が飢えないよう配慮がされたとか。縁がなく勝頼殿へ繋がる事が出来ず、奉公することにはなりませんでした」


「縁か。三成と縁があったそうだな」


「はい、例の直江兼続の手紙を偶然入手してお届けしたのがご縁。その縁を風と考えました。風に逆らっては人は前に進めませぬ」


「そなたが敵にならなくて良かった。それは三成の持つ強運だろう。我らは元々下級の民だ。殿下に付いて行って必死に頑張ったらいつのまにか大名になっていた。そのご恩には答えねばならぬ」


「三成様も同じお考えでございます。殿下に刃向かうような事をするわけが無いのです」


 その時、石田屋敷に新たな客人が訪れた。細川幽斎である。左近は加藤清正が来ている事を告げたが、


「加藤殿が。それは丁度いい、同席させてもらえまいか?」


 というので不思議な3人の会談となった。細川幽斎、足利義昭に仕えた後秀吉に乗り換えたと噂は良くはないが、この2人とは面識もあり仲も悪くない。秀吉の近くで苦労している姿が仲間意識を持たせている。





「加藤殿も来ておられるとは思いなんだ。実は左近殿にお聞きしたい事があってな。例の火元の事なのだ」


 左近は


「加藤様ともその話をしておりました」


 左近は今までの話を掻い摘んで伝えた。すると、


「後藤殿がそのような。確かに噂はあくまでも噂。それに踊らされるのは、という事か」


「細川殿、三成を大阪へ戻す事は出来ないだろうか?佐和山に引っ込んでいては勿体ないではないか?」


「加藤殿。仰る事はわかる。だが、殿下のあの様子では叶うまい」


 しばらく三成の話をしたあと、細川は


「島殿、近衛と申したそうではないか?殿下に調べるように言われて困っている」


「あくまでも某の推測。聞き流していただきたい」


「そうはいかん。そう思った理由をお聞かせいただきたい。殿下の性格を知っておろう」


「出処は大阪城、誰が得をするか。そこからの推測です。ですが、後藤殿のお話を聞いた後では考えても仕方のない事と思っています」


「それはわかる。だが殿下がそれで納得するとも思えん。何か持っていかないと、そうだ。後藤殿のところへ行くとしよう。困った時にはあの御仁だ」


 細川はそんな事を言って帰って行きました。その後、三成が顔を出しました。


「清正、来てたのか?」


「伝えたであろう」


「そうであった。すまない。一家臣としてお仕えすることも許された気がしていない。言葉にできない感情というのはこういうものなのか」


 三成なりに悩んでいるのであろう。こいつが謝るのは珍しい。


「お主の忠義には偽りはない。今は堪えよ。また風が吹くこともある」


 清正は久しぶりに三成と酒を飲んだ。昔話をしつつ、何度も今は我慢と繰り返して告げ、自分の屋敷に帰っていった。


 その様子を屋根裏から見ていた男は、深夜に行動を起こした。



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