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未来を知った武田勝頼は何を思う  作者: Kくぼ


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嫌疑

 大阪城から城下の石田屋敷へと移動する間、三成は一言も口を開かなかった。面白くないのである。腹を切る覚悟で出向いたのに、殿下は左近と話をし勝手に処遇が決まってしまった。この石田屋敷は三成が聚楽を出る時に、あくまでも一家臣として仕えるという意思表示も含めて極めて質素な屋敷を建てたものだ。周囲には家臣の屋敷が並んでいるが土地も小さめで凝った造りも無い。こういうところに三成の真面目さが出ているのだが、そういう振る舞いを面白くないと考える輩もいる。


 左近が口にしたあのお方とは誰なのか?殿下が俺に聞こえないように左近に耳打ちさせた、つまり俺は知る必要がないという事だ。面白くない。


 殿下が俺に聞こえないようにした事に対して、左近に聞く事もできない。面白くない。三成に対しては咎めは無かった。佐和山へ戻り大阪へは兄を置けという指示だ。噂に過ぎないとしても三成を大阪へ置いては気持ちが悪いというところだろう。これも三成には面白くなかった。間違えなのだから大阪にいてもいいではないか、と思ってしまう。すでに豊臣家ではなく、ただの石田三成なのだ。何が悪いのか?


 屋敷に着いた後、左近は三成の機嫌をとるべく面会を申し出た。三成の性格はよくわかっている。それをフォローするのが左近の役目と理解している。ところが三成は面会を拒否して部屋に閉じこもってしまった。


 左近があのお方と言ったのは、近衛信尹の事だった。前の関白だ。あくまでも推論だが加藤清正や福島正則は関係ないであろうし、前田利家も違う。小早川は戦でそれどころではないであろう。可能性があるのは秀吉を恨む毛利一派と考えるのが妥当だが出処は大阪城だという。五摂家は秀吉を関白にした事を後悔しているという。これも噂ではあるが間違っているとは思えない。近衛家は関白の時に色々と暗躍していたと細川幽斎から聞いていた。左近は陪臣なのであまり上位の者とは接点が持てない。情報は欲しいが直接話を聞くとなると難しいのだ。そこで秀吉にも近く、隠居の身である幽斎と定期的に会うようにしている。特に、三成が養子時代は色々と助けてもらっていた。


「三成様にも困ったものだ。ここは我慢しかあるまいて」


 左近は三成の忠誠心に揺るぎがない事を知っている。どんなに邪険にされようが主人は秀吉一人という強い意志を。




 細川幽斎は秀吉に呼び出された。


「さっき三成が来た。目の前で腹を切ろうとしおった。芝居ではなく本当にだ」


 幽斎は顔が青くなった。噂の出処は確かではないが、幽斎は秀吉に子ができた時に疑ったのだ。それを独り言でぼそっと口にした事があった。それが誰かに聞かれて広まったとは思えないが可能性はゼロではない。


 幽斎は薬の効能を自分で試したのでよく知ってはいる。とはいえ、あれだけやってできなかった子があっさりできれば疑いもする。


「三成様、いえ石田殿がそのような。まさか本当に切ったのですか?」


「そんなわけがあるまい。やだ、島左近が面白い事を言っていた。噂の火元は近衛だと。調べろ!」


 はい、と返事をしてすぐに下がりました。機嫌が悪そうだったのです。


 幽斎は島左近に会おうと思いました。石田屋敷に使いを出して自宅へ戻りました。



 秀吉はそのまま拾に会いに行きました。小姓が慌てて先に知らせようとするのを止めて一人で向かいます。


 拾は遊び疲れて眠っています。秀吉はお摩阿を抱き寄せ、この子はわしの子だ、とぶつぶつ繰り返してつぶやきます。それをお摩阿は優しく、そうです、殿下の子ですと繰り返して答えます。しばらくそうしていましたが、我に返ったように動き出し自室へ戻りました。


「誰かいるか?」


 すっと男が現れました。甲賀の飛龍です。飛龍は双子の地龍と共に若い頃から秀吉に仕えている忍びで信長の命を奪った男です。


「飛龍か。そういえば小太郎は東北へ出向いているのだったな。お前が持ち帰った空飛ぶ乗り物の絵は参考になった」


「手に入れる事ができなかったのは残念ですが、敵も手強く。特にあの徳という女は何をするか想像ができません」


「勝頼の側女か。その女が武田のおかしな武器を作っていると聞く。殺せるか?」


「難しいです。今までも何度か刺客を送りましたが近づく事もできていません。勝頼並みに警戒が厳しく、一度風魔の技で武田家臣に変装して近づかせた手練れがいたのですが、すぐに音信不通になりました。ご用件はその事で?」


「いや、言ってみただけだ。勝頼にしろその側女にしろ、戦場で息を止めてやる。そうでないと天下は取れん」


 その話は前にも聞いた。もう何回目だろうか。最近秀吉は同じ事を繰り返して話すようになった。だがそれは前に聞きましたとは言えない。飛龍はあくまでも忍びの立場を崩さない。そこが風魔の小太郎との違いだ。飛龍たちと小太郎の接点はない。秀吉が紹介しないのだから競う必要もない。言われた仕事をこなせばいい。


「して、ご用件は?」


 秀吉はある指示をした。それがもたらす意味を飛龍は理解したが、命令に従うだけだ。どうなろうと知ったことではない。







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