復活のかな
かなは豊臣水軍の調査を行っていた。長宗我部の水軍は弱くはない、のに一方的にやられたという噂だった。
かなは武藤喜兵衛のところの特殊部隊ゼットのチーム巳を丸ごと貰い受けている。巳、つまり蛇である。チーム巳は水軍に特化させた部隊だ。かなは徳に受けた訓練を思い出して日々、チーム巳をしごいている。
「蛇は泳げるのよ、わかってる?」
「かな様、ゼットは空を飛んだり、機械を動かしたりというのは知っていました。ですが泳ぐのですか?敵は水中には居ません!」
「ぐだぐだ言わない。ついてこれないやつは外すから。さっさとあの島まで泳げ!」
訓練の合間に駆逐艦楓改に乗って瀬戸内まで出かけている。途中大阪湾には近づかないようにだ。武田水軍は三河湾に主力部隊を置いている。伊勢湾は武田の勢力圏内だが、大阪湾は勢力圏とは言えない。大阪城へ水運を使って運び込まれている物資も多いし、通航は要注意だ。戦争中ではないので我が物顔で通るのはやめている。
徳が製作した『見えるんです』という名の双眼鏡はレベルアップして望遠鏡に進化している。かなはそれを使って豊臣水軍の調査と長宗我部の動向を海から調べている。
「かな様。長宗我部の家臣に会って来ました。武田の手は借りないと言っているのに変わりはないそうです」
海は広い、四国もだ。チーム巳のリーダーとなった男、名を鬼灯という。顔はイケメンなのだが性格は鬼だ。リーダーになるのは実力が伴わないと無理なのです。特に特殊部隊ゼットは。
「そうか、気は変わらないか。お屋形様にもお考えがあるようだし、監視だけは続けさせて。島の連中はどうしてるの?」
島の連中とは以前から、瀬戸内の島に住まわせていた草達の事だ。秀吉が毛利にきてからも引き続き活動させていたが、豊臣の造船所ができてからは監視が酷くて草として活動できなくなっていたのだ。風魔の拠点がある事を掴んだので、逆に住み難くなってしまった。
「土佐に移動させています。土佐は戦場になりにくいと考えました」
「そうね。今のところ九州からの海を使った攻めはなさそうだし。もう瀬戸内の港は小早川が抑えているのよね?」
「はい。小早川は港を占拠しましたが、長宗我部に陸地から攻められ取ったり取られたりを繰り返しています。小早川の船は我らのに外見は似ています」
「五郎盛信が奪った戦艦と、武田の船との交戦結果から改造したのね。でも空母はないでしょ、あれはお金がかかりすぎて無理って徳様が言ってたし」
「それがそれらしい船を見たという話がありまして。造船所にあるのですが近づけません」
「秀吉は金があるって事ね。鬼灯は徳様へお伝えしてください。しばらくは情報収集と訓練ね」
「はっ!」
かなは清州城に戻った。水中訓練はマニュアルを作って日々リピートさせている。
「徳様、聞きました?空母ですってよ」
「前に気球を見られただわさ。まあ想定内!」
「真似するのは簡単って言ってましたけど、原理まではわからないのではないですか?私には見たって作れませんよ」
「人には得意分野ってのがあるだわさ。かなは作るのは苦手でも壊すのは得意でしょ」
「それって褒めてませんよね?」
「作るのは鍛冶屋とか大工とかに向いている人。問題は設計ね。あたいが熱気球作るのにどれだけ試行錯誤したか。訓練も必要だし、まだだれも見てないのよね?」
「はい」
かなは空母らしき船は報告があったが何が飛ぶのかはわからないと言っています。
「とすると、ロケット?あれこそ無理ね、一体なんだか。まあなんでもいいだわさ、空から来るなら対空武器の出番だし。まあ想定内」
「それって私が使うんですよね。よっしゃ私も訓練訓練」
かなは射撃は超一流なのです。
「その前に軍議に出るだわさ。豊臣の動きの報告会があるから」
大広間に入ると錚々たる面々が揃っていた。武田信豊、武藤喜兵衛、武藤信之、本多忠勝、織田信忠、丹羽長秀、滝川一益、そしてなぜか影猫がいる。
「かなを連れて来ただわさ。初めての人もいるわね、あたいの昔からの部下よ。戦艦駿河マーク3の艦長やってる」
頷く者、おお〜っと呟く者の中で武藤信之だけ下を向いている。古府中で人質時代におねしょしてしこたま怒られたトラウマがあるのだ。こわ~いお姉さんなのです。そんな事を気にせず徳が仕切り始めます。
「まずは滝川殿。伊勢志摩の方はどう?」
「目立った動きはありませぬ。あの蒲生との戦以来何事もなく戦力増強に努めております」
滝川一益はここにいる皆に助けられた。その恩は命懸けで返すと誓っている。
「丹羽殿、伊賀は?」
「坂本城にいる細川めは明智十兵衛の娘を嫁に貰ってから人が変わったように内政に重きを置いております。定期的に贈り物を届けてくるようになりました。細川幽斎は大阪城に詰めているようでしばらく姿を見かけません」
「贈り物ねえ、それに騙されないようにね。丹羽殿なら大丈夫だろうけど」
「裏があるか時を稼いでいるか」
「或いは本当に腑抜け、まあそれはないわね。幽斎は相変わらずか。少しゆっくりしすぎているのがなんとも。次に影猫、あんたが来ているってことは三成に何かあったの?」
徳は話を影猫に振った。影猫は特殊部隊ゼットのチーム丁のリーダーで今は佐和山で女中となり三成の監視をしている。
「徳様。三成は豊臣性を返上し、石田三成に戻りました。大阪城へ出仕する事なく内政に取り組んでいたのですが、秀吉から呼び出しがありました」
「それがどうしたの?」
それはそんな事もあるだろう。わざわざ影猫が来るというのだから一大事のはずだが、徳には想像ができなかった。唯一思い浮かぶのはあれ、だが流石にないだろうと勝頼に言われて忘れていたのだ。
「拾が三成の子ではないかという噂が大阪で。三成は弁明に出かけました」
やっぱし。




