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未来を知った武田勝頼は何を思う  作者: Kくぼ


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決着

 小山は今までの緊張と悩みでかなり消耗しています。せっかくうまくいっていたのにまさかの井伊直政登場で大ピンチでしたが、そのピンチを抜け出すために気力を振り絞って話し始めます。あれは偽物だと確信して。活路はそこしかないのです。


「お屋形様、大殿。井伊直政殿はこの間、城へ突然現れたのです。そして城の女中に斬りつけました。不幸にもその女中は死んでしまいそれがしが捕らえようとしたところ抵抗したので斬りつけた次第。それがしは足だけでなく胸にも斬りつけました。ですが、そこにいる井伊直政殿には胸の傷がありません。偽物でございます」


 何を言い出すかと思えば。甲斐姫は拳を強く握りしめています。怒鳴りつけたいところですが勝頼の手前そうもいきません。ですが、偽物なのは本当のような気がしてきました。どういう事?


「それで、偽物だとしたらなんなのだ?」


 勝頼は冷静に小山に問います。


「お夏様が居なくなった事は申し訳なく存じます。殿を斬った事もそれがしの責任でございます。腹はいつでも切りましょう。ですが汚名を帯びたままでは死にきれません」


「つまり、そなたの言う事は正しいのだな。井伊直政を斬ったと申したが間違いないか?」


「間違いありません。仕方がなかったのです。どのような罪でもお受け致しますが家名に泥を塗ったままでは死ねません」


 小山は必死に訴えます。勝頼はそろそろかな、と


「そうか。佐助、そんなに直政は重症なのか?」


 勝頼は井伊直政に向かって佐助、と話しかけました。真田幸村はえっ、佐助なの、本当に偽物?と焦った顔をします。幸村も知らなかったのです。井伊直政だった男は頭を下げてから、


「井伊様はそこの小山様の言うように胸を斬られており、城へ赴くことができませんでした。面目ないと申しておりました」


 部屋の中に不思議な空気が流れます。各々何がどうなっているのかは同じですが、焦り方が違います。幸村は気が付かなかった事に、梅雪は勝頼がどこまで仕組んでいたのかを考え、そして一番焦ったのは小山です。


 勝頼は周りが動揺する中、冷静に


「しかし佐助、見事な物だ。余も最初は気が付かなかったぞ」


「例の風魔の技術でございます。小田原攻めの時に風魔の拠点から押収したものを使って徳様が密かに解明し、それを武藤の殿に伝授したのです」


「錠、知っていたか?」


 屋根裏から錠が現れて首を横に振りました。きいてないよー!という顔をしています。味方にも情報が漏れないところが徳徳秘密なのです。


「佐助、で、井伊はなんと言っていた?」


 佐助は井伊直政から聞いた話をゆっくりと話し始めました。小山は話が進むに連れて震え出します。小山が直政を斬りつけた話になった時、


「大屋形様、こ、この者は一体なんなのですか?今まで忠義を尽くしてきたそれがしよりこのような忍び風情を信じるのですか?」


「黙れ!発言は許しておらん。この者は余が信頼している者だ。わかったら黙って最後まで聞くが良い。お主にも聞くことがあるから待っておれ」


 小山は我慢できなくなってしまい発言するものの却下です。そして佐助が話を続けます。


「女中が井伊様を庇って逃げる時間を稼いでくれたそうです。ですが多い女中ということでしたので亡くなった女中のようです。井伊様はもしもの時に使うように言われていた煙幕弾を使ってなんとか宇都宮城まで辿り着いたそうです」


「例の川中島で真田が使ったやつだな。あれを使えば確かに時間は稼げる」


 北条の海津城攻めを防ぐために使った、煙幕油を手榴弾のように使えるようにしたもののようです。井伊直政は、武藤喜兵衛から小田原攻めの功績を認められて褒美に貰ったそうで、大事に持っていたのですが使い所としては最高でしょう。それで命が助かったのですから。


 直政は、元領地ということもあり、あちこちで匿って貰いながら宇都宮まで逃げたのです。幸村はしぶてえなあ、あいつ、と思いながら何処で佐助と入れ替わったのかを考えていました。一緒に小山城を出て直政を探しに行ったのに?


「さて、小山。お主の意見を聞こう。井伊直政を斬った、で、井戸の事はどう説明する?」


「わかりません」


「お主とお主の部下だけ城の水を飲んでいないようだが、なぜだ?」


「そ、それがしは家の用事があり出仕していなかったのです」


「ほう、城の一大事に留守居役が出仕していないと?」


「そ、それは………、井伊殿を探していたのです。何処へ逃げたのか、罪人は捕らえなければなりませぬゆえ」


「なかなか口が逹な、お主は。頭も良いようだ。で、井伊直政は生きている。余は直政を信じたいがそれではお主は不公平だと思うか?」


「それがしは井伊殿を確かに斬りました。生きてはいない、つまりこの者の証言は嘘でございます」


「そうか、実はな小山。余はここに来る前に井伊直政に会って来たのだ。夏にも、だ。双方ともお主が主犯と言っておるがどう弁解する?」


「有り得ません。それこそそれがしを騙そうとしているのではないでしょうか?」


 また穴山が城中に響くような声で怒鳴る。


「大屋形様の話を虚言と申すか?正直に答えよ!」


 小山はなんとか命だけは助かりたいと頭を高速回転させます。どうしたらいい、このままでは。そうだ!


「大屋形様は本多正信という男をご存知でしょうか?」


 勝頼が待っていた名前がやっと出て来た。勝頼は頷いた。




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