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未来を知った武田勝頼は何を思う  作者: Kくぼ


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勝頼到着

 梅雪は、小山を牢から出して自宅謹慎とした。3日後には勝頼が到着するのでそれまで沙汰を待つ事にしたのだ。真田幸村は戻ってこないし、東北は菅原が向かっているのなら焦ることはない。菅原とは今川を攻める時に一緒だったが、見事な軍師ぶりだった。あのような無名の者が埋もれていてそれを大名にまで抜擢させるのだから人事とは面白いものだ。それに見合うだけの活躍をしていると聞く。勝頼の人を見る目が優れているのだろうか?ならばなぜ、本多正信を殺さなかったのか?あの時殺しておけばこの事態は避けられたのではないか?


 梅雪は、毎晩錠と酒を飲んでいる。不在中に不始末がおき、当主であり嫡男でもある長男を失って精神的には参っていた。だが、そんな素振りを見せるわけにはいかない。まだ解決してはいないし、敵の目的が混乱である以上、冷静さを失ってはいけないのだ。


「錠、お主はお屋形様の側に長く仕えておるが苦労はないか?」


「苦労しかありませぬ。姉がお屋形様の側女になったことをきっかけにそれがしと高遠の百姓から器用な者達が集められて、それからは地獄のような特訓の毎日。戦になれば一時も気を抜けず、多くの仲間を失いました。それがしは運が良く生き残っただけに過ぎませぬ」


「武田がここまで大きくなったのは、お屋形様の構想が素晴らしかったからではあるが。徳様の不可思議な武器があったからとも言える。徳徳機密であったか?秘密?まあどちらでも良いが信玄公ですら情報を持っていなかった」


「口は災いの元、人の口は塞ぐ事はできません。信頼のあるお方でも、秘密の会話が忍びから漏れる事もあり得ます。それを姉はリスクコントロールと言っていました」


「南蛮語だな。コントロールは管理であったか?人心を管理するのは難しい事だ。小山は可もなく不可もなくと思っておったが」


 梅雪は話を変えた。錠はそろそろかと


「その小山ですが、牢にいる間に集まっていた部下たちの動きが止まりました」


「嘆願してこなかった奴らだな?」


「小山には近づかないようにしているのですが、使用人達の交流があるようで、野菜を運ぶ者が文を」


 錠は小山の部下にはどうもおかしな奴らがいると言う。牢から出すように嘆願してきたのは若い武士達で、小山が城主の時に小姓をしていた連中だ。殿であった小山を慕っている。

 それに対して、小山に近い者達は静観していた。錠は何か不思議に思いこいつらをマークしていたのだった。


「錠、お主の言うおかしな連中が裏で動いているという事か」


「はい、文までは盗み見ることができませんでした。怪しまれるのも不味いので。それと佐助が来ました」


「真田のところの忍びだったな。なんと言っておった?」


「お屋形様を待つことにしたと伝えたところ、そうお屋形様に伝えますとだけ言って去って行きました」


 それだけか?こちらの様子を見に来たのだな。


「錠、お屋形様次第ではあるが、信道に付いてくれぬか?武田が天下を取った後でいい」


 信道は梅雪の孫だ。錠は梅雪の気持ちがわかった。俺をお守りとして求めている。


「それがしはまだ隠居する歳ではございません。ですが、お屋形様と姉の許しがあれば」


 錠はこの数日穴山と仕事をして、重臣の難しさを少しだがわかった気がしていた。縁戚とはいえ一家臣にすぎず、大名とはいえお屋形様には逆らえない。戦は酷い。今回の件は戦場で起きたのではなく、誑かされたようなものだ。それに、桃と所帯を持つ約束もまだ果たせていない。結論を出せる立場ではないが心が動いた。


「徳様か。お屋形様より手強いな」


「姉はそういう印象ですか?」


「お若い頃から存じ上げておるが、不思議なお方だ。お屋形様の目の付け所がいいのか、よくあんな逸材が村娘に………、いや失言であった。忘れてくれ」


 錠は笑いながら、


「いえ、村娘に相違ございません。やんちゃでお転婆な姉です。子供の頃から行動力だけはありましたが、あの姉が新兵器など作ることになるとは。ですが、あの姉があって今のそれがしがいます。姉に鍛えられてなければとっくにこの世を去っているでしょう」


 2人は深夜まで飲み、語った。不思議とウマがあった。勝頼が本多正信を殺さなかったのは豊臣秀吉との火種になる可能性があったからではないか?他に手はなかったのか?ここまでは予想できなかったのではないか?色々と腹を割って話せた。錠は勝頼に近いところにいたので穴山が知らない事も多かった。徳の話になり錠が泣き出した。梅雪も信正の話になると泣き出した。お互いに慰め合いそのうちに寝てしまった。




 そして勝頼が小山城に到着した。予想と違い真田幸村はいなかった。そしてなぜか甲斐姫を連れている。


「お屋形様。お待ちしておりました」


 穴山は城門で勝頼を迎えた。錠は何処か隠れているようだ。勝頼は穴山の顔を見て、


「小山とやらを連れて参れ。それと、家督相続の件、信道へ下野を任せよう」


 勝頼は、梅雪からの何通かの報告に、本多正信を殺さなかった事がこの事件に繋がった、とは書かれてはいないもののそういうふうにも考えられるような表現があった。確かにそうだ、穴山梅雪、三雄の話では武田を裏切り、というより勝頼に見切りをつけた男。ここで信頼を失うわけにはいかない。それこそ本多正信の思う壺だ。


 機嫌をとるわけではないが、要望には応えないとなのだ。梅雪はホッとしたような顔をしてから


「ありがたく存じます。小山を連れて参りますのでお待ちください」


 と答えて、部下を走らせた。



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