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未来を知った武田勝頼は何を思う  作者: Kくぼ


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上司思いの部下

 翌日、翌々日と面談、梅雪は調査を行った。幸村は打ち合わせをした後、佐助と何処かへ行ってしまった。


「幸村め、さすがは真田の血筋という事か。一徳斎殿ほど癖はないが観察力は秀でる物があるな。行く先も告げないで行きおってからに」


 当然、行き先のあたりは付いている。夏から聞いた話と小山の話は一応辻褄は合ってはいた。一部を除いて、だ。小山は牢に入れて梅雪配下が見張りをしている。現段階では小山の配下を信用するわけにはいかない。打ち合わせでは、幸村の意見はもっともだと思ったが証拠がなかった。


「これは本多正信が仕組んだはずだが、旅芸人もいなければ本多とやらもいない」


 梅雪は念の為に飲食物は全て宇都宮城から運ばせていた。宇都宮国綱が自ら運搬してきた。異常事態に動かないわけにはいかないという判断だ。


「大殿、昨日上杉様と菅原様が仙台へ向かわれました。本多正信は佐竹領から仙台へ向かったようです」


「宇都宮殿。何もお主が自ら出向かなくても。すまんな」


「信玄公の最後のお話を伺いたく参りました。決着がつきましたらお願いいたします」


 それが理由ではあるまいに。宇都宮国綱は信玄、勝頼のお気に入りだ。土地柄手柄は立てにくく出世は難しいが悪いようにはしないよう申しつかっている。義に厚く判断に迷わない、信玄が宇都宮城に籠った事がこの男の良さを物語っている。


「兵はどのくらいだ?」


「上杉様から千、菅原様が五百ほどです。戦というより本多正信と風魔を相手にする部隊だと上杉様が仰っておられました」


「上杉様というのは景勝様か?直江ではないのか?」


「景勝様が出ておられます。直江様はお姿がありませんでした」


 そんなはずは?また何か考えているようだ。幸村といい直江といい、若造が出しゃばるものよ。逞しいものだ。それに引き換え我が子は………。しかし景勝様が自らご出陣とは?ああ、そういうことか。


 梅雪は勝頼宛に手紙を出した。今までの経緯と、信正に対する詫びだ。そして許されるなら今、駿府へ出仕させている孫の武田信道を穴山の跡取りにしたいという内容だ。信道は信玄の弟に梅雪の娘が嫁いでできた子だ。梅雪にはもう男子がいないので苦肉の策だった。


 手紙は錠の部下が使者として持っていった。錠は梅雪の護衛をしながら情報収集に追われている。


 小山は牢に入れている。あの後、夏を探すように言ったが見つけられなかった。見つけられなくて当然なのだが、牢に入れる口実にした。幸村曰く、小山は怪しいと言う。梅雪は結城信平から城を渡される時、地元の国衆として小山秀弘を紹介されそのまま貰い受けた。この小山城は元々は小山家のもので、当主の秀弘は信平の義父の弟だ。以前、勝頼の関東征伐で小山は北条方だったが、縁者ということもあって結城に預けられた経緯を持つ。


 その後の小山は可もなく不可もなく仕えてくれていた。穴山も、武田の重臣は皆同じ状況だが急激に大きくなり領地が増えたので、領国を治める人材が不足している。地元の国衆や農民との付き合いも大事な仕事なのだ。領国の安定化は勝頼の指示でもある。そして勝頼は国衆をうまく使うようにと言っている。力だけではなく信頼だ、と。


 梅雪は小山に対しては可もなく不可もなく普通に扱かっていた。特に贔屓にはしていないが元城主ということもありそれなりに扱ってきた。だが、家督を譲ってからはあまり気にしなくなっていた。信正が邪険に扱っていたのかもしれない。




 四日後、小山の部下が上申に来た。小山には非がなく牢に入れるのをやめてくれと言うのだ。信正の方に問題があったのは多くの国衆が見ているので確認してほしいと嘆願してきた。梅雪は、


「その方らの言い分も理解できなくはない。だが、それでは留守を守る役目を果たせていない小山の責をどう考える?」


「そ、それは殿が女郎に夢中になり……… 」


「黙れ!そうだとしても信正の留守を守るのは誰だ?」


 小山の部下は黙ってしまう。この者達は小山の配下だが今回の薬のことは知らない、単純に上司をなんとかしたいと思っているだけだった。小山は今回の作戦は一部の配下にしか伝えてはいなかったのだ。その配下には余計な事をしないでただただ待て、と指示をしていたのだがこの部下達は小山を失ってはという想いからの行動だった。


 部下達は項垂れて引き下がっていった。梅雪は錠に小山の部下を調べるように命じた。何か引っかかったのだ。


 錠の調べが終わった後、梅雪は小山を牢から出した。そして再度問うた。


「小山、その方の部下達に免じて牢から出すことにした。だが、未だに夏の行方はわかってはおらん」


「それがしの部下がですか?」


「お主の命乞いに参ったのだ。いい部下を持ったな」


 誰だ?勝手な事をしおって。だがこの様子だといい方にいっているようだ。小山は部下が変な行動をして目をつけられる事を避けるべく何もしないように指示をしていたのだが、取り越し苦労だったようだ。


「お方様の行方が未だでございますか、申し訳ありません。この小山、お屋形様にお詫びしたく存じます」


 梅雪の目が光った。やはり、こいつは……… 。

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