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未来を知った武田勝頼は何を思う  作者: Kくぼ


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伊達に片倉あり

 駿府城では、戻った幸村の報告会が開かれています。


「そう、三成は謹慎なのね。どう出るかだわさ」


「幸村、どう思う?」


 勝頼は徳の呟きをそのまま問います。勝頼が立てた策、それは三成を弾く事でした。三雄と寧々から石田三成という男が秀吉を崩す点になると聞き、かなり前から調査をしていたのです。関ヶ原を起こした男がこの世界では秀吉の養子になるとは想定外でしたが、すでに三雄達の歴史とは大きく変化しているので何があっても不思議ではありません。


 豊臣は毛利をうまく取り込みました。気がつけば当主の輝元は死んでますし。ただ内乱の種は残っています。また、養子の三成の立ち位置が中途半端になっています。そこで秀吉に子ができれば波乱が起きると考えて実行したのですが、ここまではうまくいきました。ですがここからが問題です。


「大屋形様、徳様。三成を見た事は?」


 大屋形とは勝頼の事だ。2人は首を横に振ります。振った先には信勝と茶々がいて真剣にこの会話を聞いています。


「以前、直江殿が文を三成からもらったのを見せていただきました。あのまんまの男です。まっすぐで正論を行く。ですが秀吉には従順です。秀吉が間違っていても逆らう事はなさそうに感じました」


 そうか。三成をどう使うかだが………。


「宴で三成の重臣である島左近という男に会いました。元は筒井家の重臣だったそうですが縁あって三成に仕えています」


「ん?三成は宴に出ていたのか?」


 勝頼は疑問をそのまま投げかけました。謹慎って言ってたよな?


「いえ、三成は聚楽へ戻りました。以後も聚楽から出ず、謹慎していました。秀吉に逆らいそうもないと申し上げましたがそこから来ています。これは影猫からの情報ですが島は前田利家に取り入って三成の事を補佐するよう仕向けていたそうです。宴にも三成の代わりに出席したと言っていました」


 幸村はここで一息ついて周りを見ます。徳に教わった会話に人を巻き込み技術です。こうすると皆が注目するという話術なのですが、


「いいからさっさと話すだわさ!」


 と徳に怒られました。ひどい、と思いつつ気を取り直して


「島は三成こそは自分の運命の主君であると自信を持って話していました。まっすぐで世の行末を案じ民のために尽くせる立派な主君だと。前の筒井家と比べているのかも知れません。それがしにも三成を立ててお互いにいい日ノ本を作っていく手助けをしてほしいとこっそり言ってきました。目は真剣でしたよ」


「それで?」


 勝頼は先を急がせます。聞きたいのはその先なのです。


「三成は聚楽を出て別の領地をもらうつもりだと。ただし、以前のように政治の中心にはいたいと言っているそうです」


「養子縁組を破棄すると?」


「そうしないと秀吉に命を狙われると考えているようです」


 豊臣秀次、三雄の世界での関白は秀吉に子ができた後、存在自体が邪魔になり秀吉に殺されたという。三成はそれを感じて自ら引き下がるという事か。


「三成は切れ者だな。普通、権力を手にした者はそれを手放そうとはしないものだが」


「命には換えられません。それがしは感心いたしました。聚楽には影猫がいます。この先どうなるか分かりませんが引き続き聚楽で三成を見張るよう話しておきました。で、影猫によると三成は秀吉に恩があり刃向かう事は無いと感じているそうです」


 影猫がそこまで言うほどか。問題は島左近だな。


「わかった。それと風魔の行方はどうなった?」


「大阪、京には一時期それらしい奴らがいたそうですが、最近姿を眩ませています。帝がなぜ武田を将軍にしたかを調べていたそうです。大阪の旧隠れ家も見つけられてしまいました。まあその時には影も形もなくしてはいましたが、よくぞ見つけたものです。その後もしばらく大阪にいたようなのですが、バッタリ消息を絶っています」


「どこへ行ったと思う?」


「おそらくは北」


 それを聞いて徳が、


「あたいもそう思う。目が上方に向いている今こそ絶好機」


 勝頼は報告を聞いた後、武藤源三郎に文を書きました。三成の動向を逐一知らせるようにです。





 北、北といっても広い。徳が北と言ったのは伊達小次郎がいる仙台である。勝頼が東北遠征した時、最上、南部、相馬、岩城、田村、佐竹、結城、そして伊達で領地の線引きをした。伊達は米沢を結城に明け渡し仙台にいる。米沢は結城の領地とは離れているが、城代を置き運営している。たまに当主の結城信平も米沢に顔を出している。信平は勝頼の子で、現在の将軍、信勝の弟だ。最初城代に井伊直政を置くつもりだったのだが、直政が信平の側を離れないというので諦めた。直政は遠州井伊谷にも領地がある。


 伊達小次郎のところには信平の姉、春が嫁いでいる。そして春と一緒に伊那の吾郎も老体に鞭打って最後の奉公と言って仙台に住んでいる。吾郎は伊那の忍びを引き連れてきていた。武田忍びの主流は真田の特殊部隊ゼットになっているので伊那勢はもっぱら情報収集が仕事になっていて第一線から退いていたが、


「吾郎。戦は戦うだけのものでは無い。戦いが始まった時には勝利を確信してなければならない。それには情報が不可欠なんだ」


 勝頼にそう言われて小田原までは戦場付近で影の活躍をしていた。その後、東北の調査を命じられて、そのまま東北担当になって、結局春が嫁いだ事もあり、春の爺扱いになっている。


 吾郎が毎日の日課である散歩という名のパトロールをしていると前から立派な武士が歩いてきた。伊達家にこの男ありと言われる重臣、片倉小十郎だった。


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