お祝い
お拾い様誕生後、真田幸村は信勝からの祝いの品を持って大阪城を訪れています。祝いの品を選んだのは天海、元明智十兵衛です。天海は普段は駿府城にいて信勝の政事を補佐しています。天海は勝頼亡き後の事を考えているのです。これは勝頼から命じられた様々な指示の中に含まれています。
幸村は徳と一緒に高天神城にいますが、駿府へはちょくちょく出向いています。現在、天海と幸村は仲良しです。信勝を支える次世代の男として期待されているのでしょう。
幸村は堂々とした口調で話します。幸村は信勝同様に徳から話法なる教育をたっぷり受けさせられているのです。
「関白殿下、我が主人武田信勝よりお拾い様ご誕生の祝いの品を持参いたしました。お納め頂けますようお願い申し上げます」
「そちが真田幸村か。あの智将、武藤喜兵衛の子で勝頼殿の信頼が厚いと噂には聞いておるがなかなかの漢のようだな。どうだ、余に仕えんか?」
幸村は秀吉の後ろをチラッと見てからほぼ即答のように答えました。
「勿体なきお言葉にございます。このような晴れやかな場所にはそれがしは似合いませぬ」
この大広間、200畳はある広さだが広いだけではない。秀吉の後ろには金の鎧と金屏風、秀吉本人からもオーラが出ているが、それにバフをかけるように光って見える。
「武田の方が良いと申すか。さて、公方が直接祝いに来ないとはどういう事か?真田幸村よ、答えよ」
秀吉は幸村にカマを掛けても全く動じないので攻撃に出ました。
「信勝様は最近信玄公の具合が芳しくなく、お側にいたいという事で参上できずそれがしを遣わしました。時がくれば参上したいと申しておりました」
「時が来れば、か。余が死ぬのを待っているとも聞こえるが、余にも子ができた。子沢山の武田には勝てぬが後継ができた以上、負けはせん」
「殿下、武田は戦は好みません。お拾い様のご誕生を心よりお祝い申し上げる次第」
幸村は動じない。秀吉は金屏風を背にしてすわっている。そしてそれを上座とし、両側に3人づつ大名が座っている。幸村がおかしな挙動をしないか目を光らせている。東側には上座から三成、加藤清正、福島正則、西側には前田利家、小早川隆景、黒田官兵衛だ。
幸村は誰1人として面識がない。どれが大納言秀長だろう?なんて勝手に思っている。ただ、豊臣三成だけは誰だかわかった。話に聞いているまんまだった。この時、秀長は病に倒れていてその事は秘密にされていたのだが幸村によってその事実が武田方に伝わることになる。
お摩阿の方が妊娠後、秀吉は遠征する事をしなくなった。主だった武将へは大阪に建てさせた屋敷に常駐するように命じ、週に一度各地の運営、問題、課題について報告させている。各武将は三成に報告してから、三成経由で秀吉というのが聚楽建築後の流れだったが、数ヶ月前から三成には報告がこなくなっている。その情報は大阪に潜んでいる影猫から得ていた。三成は浮いているようだが、この場にいるとなるとさてさて。
風魔による調査が厳しく武田忍びは大阪、京からは撤退しているが影猫は今、聚楽で女中として働いている。変装して美貌を隠しながらである。幸村は三成と思われる男にわざと声を掛けた。
「そちらが三成様とお見受けいたします。真田幸村でございます。顔色が冴えないようですが具合でも?」
「真田殿と申したな。心配ご無用、それよりも殿下に祝いの品を!」
機嫌が悪そうだ。なんか真面目そうなやつだ。噂通りだね。大屋形様の策は上手くいっているように見える。幸村が手を挙げると控えていた付き人が大きめの木箱を持ってきました。秀吉は、
「これはなんだ?信勝殿は一体何をよこしたのだ?」
「まずはこのゼンマイをお回しください。この把手を回すのでございます」
その時加藤清正が、
「殿下、危のうございます。それがしにお任せあれ」
と言って秀吉を下がらせたようとした。それに対して前田利家も同意したが秀吉は
「危険があるわけ無かろう。武田は卑怯な真似はせんよ、そうだろう真田殿」
「繰り返し申し上げますが武田は戦を好みません。それにこのような場で失礼な真似は致しません。そちらは?」
「加藤清正でござる」
「おお、あの加藤様で。となるとそちらが前田様でこちらが福島様でございますか?」
2人は首を縦に振った。秀吉は早く祝いの品が見たかったらしく、
「うるさいぞ、早くどんなものか説明せんか!」
と声を荒げます。そこに三成が前に出てゼンマイを回そうとすると、一喝、
「ならん。お前は触るな!」
結局幸村が操作をする事になりました。ゼンマイを1回してからその下にあるボタンを押すと、箱の中からゆっくり首と、手、足が出てきて武者人形に変形したのです。一同、驚きのあまり声が出ません。ようやく秀吉が、
「真田殿、これは一体どういう物なのだ?」
「これは二代将軍、武田信勝様がお拾い様が立派な武将になられる事を祈願し設計された逸品でございます。将軍が贈る贈り物としてただの人形では、と、今は赤児でも徐々に成長して大将になられる姿を模した物にございます」
「気に入った。公方殿へは礼をしなければならんな。三成、何か考えよ!で、これはどうやって戻すのだ?」
幸村がゼンマイを回していくと、箱に徐々に人形が仕舞われていきます。秀吉は幸村と一緒に何回か人形を作ったり仕舞ったりして楽しんでいました。
その頃、伊達の領地に本多正信と風魔の一団が侵入していました。




