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未来を知った武田勝頼は何を思う  作者: Kくぼ


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錯乱

 後藤信尹は少し考えて、あれを実行することにした。いつ仕掛けるか、それは信尹に任されていたのです。そして今こそが絶好機のように思えたのです。


「細川様。これを秀吉様に献上したいのですが」


「突然なんですか?これは………、丸薬ですかな?」


「はい。南蛮から渡ってきた精力剤というものです。秀吉様はおそらく武田勝頼に子が沢山いてしかも信勝が優秀な事に危惧していると思われます。この丸薬で秀吉様に子ができたらどうなりますか?」


 秀吉に子?今まであんなに励んでできなかったのにか。考えた事は無かった。後継?


「後継でござるか。それは天下の一大事でござる。おお、そうか。そうなれば武田を相手にする事より子に目が行くかもしれません。ですが、その丸薬に効果があるのですか?」


「実は、武田勝頼に子が多いのはこの丸薬の効果らしいのです。それがしはその話を堺の商人から聞きました」


「ほう、噂ですかな?なんと言う者からのお話ですか?」


「堺の紋次郎という男です。嘘を言うような男には見えませんでした。とはいえそれがしも話半分でしたが、それを聞いて大友様の配下時代にキリシタンから同じ物を手に入れたのです。いつか使う時が来るかも知れないと」


「紋次郎?確か堺の有力な商人でしたな。ですがすでに死んでいる」


「そうなのですか?お亡くなりに。切れ者に見えましたが残念な事です。それで最近噂を聞かなかったのですね」


 話は通っている。幽斎は後藤信尹を信頼していたが関白殿下への献上となると流石に慎重になっている。この丸薬、勝頼が子供の頃に作った薬部隊が開発した強壮剤だ。最初は苦いだけで効果がなかったが、改良に改良を重ねて飲めば朝まで元気になるようになった。ただ、それだけ頑張って体力的に疲れなくなるわけではない。当然だが頑張った分だけ疲れるのだ。勝頼もそれを知っていていざという時にしか使っていない。後藤信尹はこれを影猫から手に入れていた。






 細川幽斎はその丸薬を秀吉に献上した。万が一、毒だと困るので自らが毒味を兼ねて味見をした。毒どころか暫く反応しなかった愚息が………、効果は抜群だったので自信を持って秀吉に効能を説明できた。さすがは後藤信尹だと改めて感心した。


「殿下。素晴らしい秘薬を手に入れました」


「そのような物。今までどれだけ試した事か」


「それが、これはあの武田勝頼の子沢山の素だそうで………」


 秀吉は幽斎が今までに見た事もないくらい自信を持って勧めるので、念の為に配下にも試させてから事に望んだ。秀吉が今一番可愛がっている前田利家の娘とそれを試すことになった。効果はものすごく毎晩励むことになってしまって、昼間は疲れて公務が疎かになった。だが、夜は激しく元気だった。


 公務が疎かになった事を知った三成は呆れながら、


「関白殿下。そのような事では困りまする。公務に影響が出るようでは、あれも差し控えていただきませんと」


「つまらぬ事をいう。余の子作りより優先すべき事があるなら申してみよ」


 秀吉は目の周りに隈を作りながら怒鳴った。真面目な三成には秀吉が何を言ってるのか?その姿が道家にも見えたが冷静に、


「わかりました。武田の仕置きはどうなされます?」


 と話を変えた。


「今、幽斎と正信に思案させておる。今更焦ってもいい策はでまいて。三成、お主の意見を聞こう」


 三成は焦った。あの武田を仕置き出来るとは思ってはいない。秀吉に我に返って欲しくて口から出てしまっただけなのだ。


「長丁場になれば豊臣には不利です。何か理由をつけて上洛させそこで殺すのはどうでしょうか?」


「ならん。余は関白だ。関白が将軍家を騙し討ちなどできるわけはなかろう。お前はやはり頭が固い。いいから下がっていろ!」


 三成が出ていくと風魔小太郎が入ってきた。


「あれが三成か。勝頼は駿河で死んでもらわねば。京で死なれてはお主に面目が立たないだろうに」


 小太郎はそんな事もわからない男を後継ぎにしたのかと、暗に秀吉を攻めている。秀吉は疲れた顔をしながら小太郎を見て、


「何かわかったのか?」


 と聞いた。三成の事は頭が痛いのだ。


「痕跡がない。敵ながら見事だ。京に武田忍びの隠れ家があったのだが、今は蕎麦屋になっている。今の店主は売りに出ていた家を買っただけで何も知らない男だった」


「隠れ家があった事は分かったのだな?」


「ああ。ちょうどお主のところの前田利家が京に入った頃に姿を消している。明智を見張っていて前田が来たから逃げたように見えるが、果たして?」


「その後の動きは?」


「今追っておる。そいつらが武田の宣伝をしていたのはわかったが帝との繋がりが見えん。帝への接触を見張っているが全くといって無い。こちらが探る事は想定できるだろうからそうは尻尾を出さないだろう」


「もう京にいないのではないか?」


「甲賀を使って堺も見張っている。それと………」


 その時、秀吉が寵愛しているお摩阿の方が懐妊したとの話が飛び込んできた。秀吉は小太郎の話を最後まで聞かず部屋を飛び出していった。小太郎はそのまま席を立った。


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