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未来を知った武田勝頼は何を思う  作者: Kくぼ


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ここで登場

 話が終わったと、皆は各々色々な思いにふけながら席を立ったところでした。関白交代、しかも五摂家以外の百姓上がりの武家が関白になったのです。その瞬間、皆は改めて自分達がしたことに恐怖を覚えました。これは失敗だ、と。何ということをしてしまったのか、と。ですがもう覆す事は出来ません。なるようにしかならないと思う者、何が手を打たねばと思う者、様々です。そんな悩みながら席を立ち帰ろうとした矢先でした。突然発言した後陽世天皇の声に皆が固まります。事前打ち合わせでは無かった事です。秀吉も席を立っていましたが、


「皆様、座りましょう」


 と笑顔で言いながら腹の中は怒りが込み上げています。何だこいつ、とばかりに。帝は何もしないと聞いていたのです。お飾りの癖に何を言いたいのか?ですが、秀吉は関白です。帝には従わねばなりません。後でギャフンと言わせてやると思ったかはともかく、明日にでも頭から抑えつけねばと思いつつ席に座りました。


 後陽世天皇は皆が座り直すのをじっと待ってから話し始めました。


「朕は豊臣の秀吉を関白に任命した。これは朕が平和を望むからだ。民が穏やかに健やかに暮らせるようにしたい。それには戦をやめねばならないと朕は強く思う。関白、如何であろう?」


 秀吉は突然自分に話が振られて慌てた。どうやって頭から抑えつけるか考えていたのです。


「帝の仰せの通りでごじゃーます」


 訛りが出てしまったが、周囲が誰も笑わないのを見て安心した。誰も俺には逆らえないのだ、と改めて認識する。後陽世天皇は秀吉を見て、ウンと頷いてから再び話し始める。


「では、関白よ。どうやって戦を無くす?」


 秀吉はこの展開に焦る。なんでこんなお飾りに威張らなければならないのだ。イライラしてきた。その様子を下座に控えていた細川幽斎が見てオロオロし始める。いくら秀吉でもこの場では控えていなければならない。


「全て力で従えます。武家関白として」


 秀吉は本音で答えた。丁度いい、ここで宣言して仕舞えばいい。帝などお飾りだ。大人しく毎日楽しく過ごしておればいい。そのくらいの贅沢はさせてやる。ここにいる五摂家とやらもだ。家柄がなんだ!帝がなんだ!お前たちはたまたまその家に産まれただけであろう。何をした?何をして偉くなった?俺は違う。俺は耐えに耐えて戦に勝ち成り上がったのだ。俺こそが天下人に相応しい。秀吉が帝を見て立ち上がったその時、帝が声を上げた。


「武家関白?関白は関白。武家の棟梁にあらず」


 秀吉は立ったまま答える。こいつどうしてくれようか?帝の首を取り換えちまおうか?


「武家の棟梁だった足利将軍家はもうおりませぬ。この豊臣の秀吉にお任せあれ。すぐに戦のない世の中にして見せましょうぞ」


 そう言って今度は五摂家の面々の顔を一人づつ睨む。文句があるなら言ってみろとばかりにだ。と、そこで再び帝が話し始める。


「武家の棟梁に相応しき者、その者を征夷大将軍に任ずる。武田勝頼、いでい!」


『!!!!!』


 帝の後ろの襖が開き、3人の男が現れた。武田勝頼、武田信勝、そして本多忠勝である。秀吉が驚いて前に出ようとするとそこに本多忠勝が立ちふさがる。


「どこかで見たことのある顔だーぎゃ。家康のところにいた奴だな。このわしの前を塞ぐとは手討ちにしてくれるわ」


「出来るものならやってみるといい。このわしに勝てるならばな」


 忠勝は思いっきり秀吉を威圧しますが、秀吉も引きません。百戦錬磨は秀吉も同じなのです。2人が睨み合う中、勝頼はその横をスルッと通り抜け、帝に向かって座ります。


「征夷大将軍、武田の勝頼、ここに見参!」


 その後ろにはいつのまにか信勝が座っています。音もなく移動したようです。忠勝はそれを見て信勝の後ろに移動します。護衛の役目を思い出したのです。勝頼は、


「これは関白に任ぜられた秀吉様ではありませんか?お久しゅうござる。確か、春日山でお目にかかった以来でございますな」


 呑気な勝頼の態度にさらに怒りが込み上げます。帝に本多忠勝に勝頼、なんだこいつらは!と、ふと信勝の存在に気が付きました。こいつは誰だ?


 後陽世天皇は冷静に振舞います。


「関白よ、そこに座ると良い」


 秀吉はそう言われては座るしかありません。勝頼を睨みながら座ります。勝頼はそれを見届けてから平然と、


「お目にかかれて恐悦至極に存じます」


 勝頼が帝に頭を下げると、帝がすかさず


「征夷大将軍、武田の勝頼。その将軍の座を武田の信勝に譲り渡せ!」


「仰せつかりました。勝頼、将軍の席をこの信勝へお渡しいたします」


 そういうと後ろに下がった。信勝が前に出て帝に頭を下げながら、


「武田の信勝。武田家、2代目将軍の座、拝命いたしました。日ノ本の平和のため、身を粉にして務める所存にございます」


「将軍よ、よくぞ申した。頼むぞ」


「ははあ」


 頭を深々と下げる武田の3人。なんだこの茶番は?秀吉は呆気にとられている。大声で叫び、ぶち壊そうと思ったがここは禁裏。帝の前で騒ぎを起こせないし、無理に暴れれば本多忠勝が黙ってはいまい。それに信勝が不気味だった。さっきの身のこなし、忍びの類にも見えた。


「さて、関白よ。関白も将軍も日ノ本から戦無くすと申したな。その考えを聞かせてもらおう」





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