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未来を知った武田勝頼は何を思う  作者: Kくぼ


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ドロン

 チーム戊の、りこが台車で大きな黒い箱を運んできた。その間に清州城の兵が弓の的を用意している。天海はそれを見て裏で手を引いている者がいると考えた。武藤喜兵衛あたりであろうか?


 黒い箱の周りにあいが近づいて掛け声をかける。


努崙(ドロン) いっきまーす!」


 その声を聞いたりかが何やら箱に向かって手を動かし始めた。しばらくしてふと的の方を見ると何かが宙に浮かんでいる。信勝は、


「おお、空を飛んでいるぞ」


 天海は、


「これが武田の不可思議武器というやつか。面白い。勝てない訳だ。これをあの徳という女子が製作したのか?面白い」


 とにかく面白がっている。天海は昔、徳とは面識があった。可笑しな歌と踊りをする女子のイメージしかないのだが武田の不可思議武器は徳の発案だというのは、すでに忍びの調査で広まっている。当然、天海も秀吉もそれを知っている。


 努崙(ドロン)と呼ばれた宙に浮かんでいる物。それは円形をしていた。今でいうフリスビーのような大きさだ。その努崙(ドロン)が的の方へ動き始める。


「おお、動いた。そうか、これが操縦というやつだな」


 信勝は信平から、対蒲生戦の時に武藤喜兵衛が使った無人爆弾車の事を聞いていた。この5人が操縦していたという事も。しかし、どうやって宙に浮かんでいるのだ?子供の頃、糸で吊った人形が宙に浮かんでいるのを見た事はあるが糸らしき物は見えない。


「天海、あれはどうやって宙に浮かんで、いや、空を飛んでいるのだ。父上からお主は物知りだと聞いている、わかるであろう?」


 無茶振りだ。それでも天海は、


「初めて見るものです。どうやって空を飛んでいるかは、これを仕掛けた、そう、あそこに隠れている御仁に聞かれるのが良いでしょう」


 それを聞いて信勝は周囲を見渡す。そして建物の陰から様子を伺っている男と目が合った。その瞬間、その男は跪き頭を下げた。


「撃っつよー!じゃない、いっるよー!」


 あいの声が響き渡る。それを聞いたみれいが、


「ほいきた。照準セーーットじゃなかった、狙うわよ!ホイ!」


 大きな黒い箱は操縦装置だった。そのボタンらしき物を押すと努崙(ドロン)から矢が発射され、的を見事に射抜いた。魔神組が信勝の前に並んで控える。そしてある男が近づいてきてあいの横に座り、


「武藤信之でござる。お屋形様、お久しゅうございます」


「源三郎であったか、古府中以来か、達者のようだな」


「家督を継いだご挨拶に伺おうとしていたのですが、こちらにおいでになると聞きお待ちしておりました」


 そう言って頭を下げた後、話を続けた。


「この者達は、父、喜兵衛が鍛えた特殊部隊ゼットのチーム戊の面々でございます。ご覧に入れたのは新兵器、努崙(ドロン)と言います」


「そうそう、武藤家を継いだ話は父上から聞いていた。母上が祝いを贈ると行っておったぞ。武田も次の世代の活躍が今後の戦を左右するだろう。お主には期待している。それとこの者達の事は信平から聞いておった。何やら父上の妄想を現実化したそうだが、あの父上がな。これとは…………………、まあそれはともかく努崙(ドロン)とはどういう意味だ?」


「はい、これは例えば夜間に使う場合、暗闇に紛れて音もたてずに宙を移動し、敵将を矢で射る事ができます。そして射った後、その姿をドロンと眩ます事ができるのです」


「ほう、それでドロンか。面白い名だ。誰が付けた?」


「我が父、喜兵衛です」


 天海は武藤喜兵衛に蒲生氏郷が倒された時の事を思い出した。負けると思ってはいなかったが、天海は後詰めを行わなかった。そのお陰で今は武田の配下だ。そう思うとこの武藤信之という男、天海の正体を知っているならいい気はしないかもしれん。


 天海の正体は、勝頼、信勝、信豊、そして武藤喜兵衛しか知らない事になっている。勝頼が以前京で世話になった僧で物知りゆえに信勝の補佐に付けた事になっている。


「お屋形様、こちらの御仁は?」


「ああ、余の兵法の指南役で天海と言う。父上が余の目付としてつけたようなものだ」


 天海は頭を下げると源三郎もそれに習った。


「大屋形様がそのような。天海殿、天海殿のお目にはどう映りましたか、この努崙(ドロン)は?」


「矢が一矢では勿体無いと思いまする。平衡感覚を保つのが操縦の肝とお見受けいたしました。矢を3本、5本と試されてはいかがでしょうか?」


 源三郎は驚いた。徳が同じ事を言っていたそうなのだ。これはいかんとばかりに


「ご助言感謝致します。お前達、すぐに研究所へ戻るぞ」


 源三郎は信勝に断りを入れてから信勝達より先に清州城を出て行った。


 信勝は、


「慌ておって。どちらかと言うと源二郎の方が慌てものという感じだったが、人は変わるものだな」


「お屋形様。あのお方が武藤喜兵衛様のご嫡男、源二郎様と言うのは?」


「ああ、今は真田幸村と名乗っている。面白い男よ、いずれお主も会う事になろう」


 2人は護衛とともに駿府城へ向かっていった。そこには信玄が待っている。

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