十兵衛の首の行方
直江兼続は、織田信忠と共に岐阜城へ向かった。そこに梟が現れた。梟は上杉軍の忍びの棟梁だ。武田の忍びにもその実力を認められている凄腕の忍びです。
「直江様、京の様子を与助に聞いて参りました」
与助とは武藤喜兵衛子飼いの忍だ。今は京に町民として住んでいる。上杉の忍びと武田の忍びには過去の経緯から交流がある。とは言ってもある程度の暗黙の境界線はある。与助が漏らす情報は話してもいいというレベルという事だ。
「で、予想通りか?」
「はい。勝頼様も清洲城へ向かっております。そしてあのお方も」
ふうむ、どこまで秘密にするのだろう?恐らくは上杉、織田には秘密にするだろうな、話はどこからか漏れて広がるものだし。といっても興味はある。まあ当分は知らない振りをするとしよう。だが、与助が漏らしたという事は勝頼もそれを承知という事だ。兼続は前回、武田信玄が生きていると思い単独行動をした事を、後から上杉景勝に怒られた。知っている事と、それを知って動く事は別だと。
「与助殿からは?」
「状況のみ、あのお方の事は一言もありません」
やはり秘密という事だ。いきなり清洲へ行ってみるか、戦の報告もあるし。向こうもこっちが来る事は想定内だろうし。そして兼続は愛の兜を脱いで少し離れたところを馬に乗って進んでいる織田信忠に近づいて話しかけた。
「織田様。勝頼様が清洲へ向かっているそうでございます。それがしは美濃へ寄った後に、清洲へ赴き、戦の報告をしようと思います」
「余も行く。今回、織田に上杉を応援するように言ったのは義兄上、勝頼様だ。余も行く義務がある。だが、なぜ清洲へ?」
「さあ。そこまでは」
兼続は清洲へ行く前に岐阜城で時間を潰すことにした。あのお方が消えた頃に行くのがいい。
勝頼は清洲城の城門へ近づいていく。信勝を連れてきている。徳は来ていない。誘ったが断られた。
「信勝、ここが信豊の居城、清洲城だ。元は織田信長の城だったが尾張を治めるのにこの城を使った」
「はい。立派な城にございます。この城門までの起伏は攻められた時に何かを起こす物に見受けられます。それがしは東北へは行き、他国の城は見ましたが西は初めてです。武田領の城は皆、工夫が施されているのに驚きました。城を改築されたのは信豊でしょうか?」
信勝は信豊の事を呼び捨てにした。既に武田の家督は信勝が継いでいる。武田のお屋形様は信勝であり、勝頼は大屋形だ。信玄はというとご隠居と呼ばれている。ただ実際は勝頼が仕切っている。秀吉がいなくなるまではという想いが強い。
「そうだ。信豊に真田兄弟、ああ、昌輝と喜兵衛が城普請に加わった。お前は砥石へ行ったことがあったな?ああいう山城は地形を最大に利用しているが、城下町との関係がな。平野にある城は城下は賑わいやすいが防御には弱い。その土地、そこで何をしたいかで城普請の仕方は変わる。まあいい勉強になるだろう」
そう言いながら勝頼自身は城普請をした事がない。偉そうにしてるだけだ。ここに徳がいたら突っ込まれてるとこだが、徳はあの男には会いたくないそうだ。今は、結城に行っている。結城を継いだ信平が心配らしく、なぜか甲斐姫まで連れて関東へ行っている。甲斐姫は実家も近いから許したけど、徳と一緒って一抹の不安が感じるのはなぜだろう?
勝頼は清洲城へ来る前に、諏訪原城の諏訪神社で三雄の娘、寧々と話をしてきた。今回の件を報告すると、目を輝かせて、
「そうなるのね!あり得るあり得る。勝頼さん、それは間違って無いと思う。けどね………」
色々と助言をしてもらった。寧々は姓を諏訪に変えたそうだ。そうでないと子孫ぽくないと言っていた。三雄の病状はあまり良くないらしい。それなので寧々は気合いが入っていた。
「私に任せて!想定外ばっかりだけどシミュレーションしてみるから」
何の事かはわからないが、相談はできそうだった。ただ、決めるのは勝頼だから、と三雄に釘を刺されているらしい。
城門をくぐるとそこには変な格好の………、
「魔神組一番、あい」
「魔神組二番、ひなた」
「魔神組三番、りか」
「魔神組四番、みれい」
「魔神組五番、りこ」
『5人揃って、魔神ゴー!』
変わった戦闘服?を着て何やらポーズを決めている5人の娘たちがいた。その後ろからニヤニヤしながら信豊が現れた。
「ご無沙汰、遠いところようこそ」
信勝は目が点だ。勝頼は、
「徳から聞いて知ってはいたが、やれやれだ。元は俺の寝言がキッカケらしいが衣装が違うぞ信豊。俺の知っているのは魔法少女だ、ではない。相変わらず遊びココロ満天だな。喜兵衛は来ているのか?」
「来てるよ。あれと話し込んでる。お屋形様、どうされた?」
「どうされたではない。父上がいなければ怒りまくっているところだ。こんな出迎えがあるか!」
「お屋形様。お屋形様は真面目すぎるのです。たまには気を抜かないと精神が持ちませんぞ」
勝頼はそれを聞いて、
「信豊、俺とは違うんだ信勝は。信勝に従ってくれ。信勝、信豊に悪気はないんだ。許してやってはもらえないか?」
「父上。わかりました。今は色々な経験を積む時、信豊は大事な家臣です。これからも指導いただきたい」
信豊が平伏する中、ずーーーっと変なポーズで固まっている5人はどうしていいか動けずにいた。勝頼は、
「チーム戊だったな。徳から話は聞いている。精進致せ!」
『はい!』
5人は下がっていった。何かしようとしていたようだが、今は構ってはいられない。城に入り、奥の部屋に通された。襖を開けると下座に座る老人がこちらを見て微笑んだ。
「お久しゅうございます、勝頼様」
明智十兵衛光秀がそこにいた。




