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未来を知った武田勝頼は何を思う  作者: Kくぼ


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真の目的

 前田利家に秀吉からの使者が現れた。風魔の小太郎だ。だが、小太郎は正体を隠していて普通の武士の格好をしている。小太郎は前田利家に繋いでもらい、いきなり話し始めます。


「秀吉様からの伝言を持ってまいりました。達治と申します。お人払いをお願い申し上げます」


 使者?それに人払いだと?秀吉め。何がしたいのだ?利家は清正だけを残して話を聞く事にした。この使者はただの武士にしか見えないが只者ではない感じがする。これは利家の勘だった。護衛が必要と思ったのだ。それにこの男は誰だ?秀吉の周りにこんな男がいた記憶がない。だが、人を驚かすのが趣味みたいな男だし、それ以上は警戒しなかった。


「人払いをしたぞ。この男は加藤清正だ。秀吉の信頼も厚い男だから同席させた。話せ!」


 小太郎は利家、清正とも初対面だ。特に清正がどんなやつか見たいと思っていたので丁度良かった。


「申し上げます。そのまま京へ向かい京を制圧しろとの仰せでございます。その後に畿内、丹波、丹後を抑えるように、と」


 清正は後藤信尹の行動を思い出していた。あやつはこれを予想していたのか?ただ、ここでは利家の方が上だ。使者も利家宛なので無言を聞いている。利家は驚いて使者へ問いただす。


「秀吉の狙いは明智なのか?同盟を結んで明智の領地を進んでいる我らにそのまま明智を攻めろというのか?」


「それがしは秀吉様の伝言をお伝えに来ただけでございます。前田様が信じない場合、こちらの書状をお渡しするように言われました」


 小太郎は、利家の表情を見ながら手紙を出した。横目で清正の気配を探りつつだ。清正は前に出て小太郎を睨みながら手紙を受け取り利家に渡す。清正と小太郎は水面下で火花を散らしている。敵対しているわけではないが、警戒と興味だ。


 利家は手紙を読みだし、段々と手が震えてくるのが見えた。読み終わると一度天を仰ぐように首を上に向けため息をつく。そしてその手紙を清正へ渡した。読め!とばかりに。


 小太郎はそれを気にせず、


「それではそれがしはお暇いたします」


 と帰ろうとします。慌てて利家が、


「達治殿と申したな。返事を持っていってもらおう。明日まで待たれよ」


「必要ござらん」


「なんと申す!」


 達治こと小太郎は清正を見て笑ってみた。慌てている利家よりも清正だ。こいつの反応の方が面白い。ところが清正は周囲を気にせず手紙を読んでいた。小太郎がわざと笑って見せたのを受け流している。故意なのか、偶然なのか。そして手紙を読み終わると、


「達治殿。返答はいらないのだな。前田様、京へ向かいましょう」


「清正、秀吉に返事は必要だろう」


「これは急を要します。達治とやら、安心して戻られよ」


 ほう、やっぱりこいつは面白い。秀吉の次は三成ではなくこいつかも知れんな。そう思いながらも、


「失礼いたします」


 それだけ言って陣を離れていった。清正は達治に尾行をつけたが播磨に入ったところで見失ってしまった。それまでは普通の武士にしか見えなかったそうだが、急に姿が消えたらしい。それがわかるのはだいぶ先の事だ。それはともかく達治が退席した後、清正は


「前田様。後藤信尹はすでに京付近まで行っていると思われます。すぐに続きましょう」


「だが、上杉が目の前に陣取っているぞ」


「どうも向こうの動きもおかしいのです。直江兼続はこちらが攻めてこない事を知っている気がします」


「こちらが仕掛けた戦だ。攻めて当たり前ではないか?攻めないとは誰も言ってないぞ。どういう事だ?」


「使者が来て戦が起きずに我らが下がると思っている、そんな気がするのです」


「さっきの奴が来る事を知っていたと?そして我らがどこへ向かうかもか?」


「そこまではわかりますまい。ただ、秀吉様の考えている事を直江兼続めは想定しているようです。それがしはそう思います」


 利家は少し考えてから陣を少しづつ下がらせ、機を見て京へ全速で向かうよう指示をだした。どのみち秀吉には逆らえない。織田を裏切ることになり、毛利で拾ってもらった。求められるまま愛しい娘も妾に出した。もう秀吉と進むしかないのだ。天下を取るのは秀吉だ。だが、すっきりしない。あいつは何を考えているんだ。


「清正。最初からこのつもりだったという事か?わしにも打ち明けずに」


「手紙を見る限りそうなのでしょう。上杉は追ってはきません。ここは明智の領地、上杉が攻め込んで来れば地元の衆の抵抗を受けます。つまり我らは明智を攻めるのに、明智に護られる事になります」


 そんな上手くいくのか?だがそうなってきている。


「後藤信尹はこれを読んで先行したと?」


「結果から判断すればそうなります。ただわからないのが?」


「なんだ?」


「明智もバカではありますまい。一体京はどうなっているのでしょう?」


 まさにその通りだ。とはいえ行くしかない。前田軍は徐々に下がり、京へ向かい始めた。その様子を物見から聞いた兼続は、


「どうやら勝頼様の想定のように進んでいるようです。あちらは武藤殿に任せましょう。織田様、せっかくですのでそれがしを美濃まで連れていってはいただけませぬか?勝頼様も出てくると思いますよ」



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