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未来を知った武田勝頼は何を思う  作者: Kくぼ


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現れた男

 甚五郎の舞い上がっていた気分が急速に冷めていく。なぜここにこの男がいるのだろう?前は上杉景虎に仕える武士であった。それがここでは町人、どこかで聞いたような話だ。ま、まさかこやつ!


「確か、柴田殿でしたな。なぜ安芸に?」


「懐かしい御仁に会えて嬉しい。そこの茶屋で団子でも食いながら話しませんか?」


 これは怪しい、直ぐにでも立ち去るべきだと、


「それがし、急ぎの用がありましてな。すいませんがこれで」


 そう言って甚五郎が離れようとすると、


「待たれよ。急ぎとは、誰への手紙でござるかな?上杉から木下への手紙となればそのまま行かすわけにはいかんのです。あなたには昔世話になった。あの時分けていただいた米でどれだけ救われた事か。手紙を置いていきなされ。さすればここで見逃してしんぜよう」


「何を言っているのかわかりません。私は旅をしていて待ち人のところへ向かうところなので急いでいるのです。ところでなんで上杉からの手紙だと思われたのですか?」


「さあ、なぜであろう?持っていないというのならば仕方がない。奪うまで」


 柴田盛道が手を上げて合図をすると街角からするすると人が3人出てきて甚五郎を囲んだ。皆、刀を差している。ぱっと見は用心棒風だ。甚五郎は走って逃げようとしたが、簡単に地面に転がされてしまう。


「何をなさる!」


「恩があるので殺しはせん。身ぐるみ剥がさせていただく。おい!」


 盛道が声をかけると用心棒が甚五郎の上に乗り動きを封じようとする。甚五郎がもがいて逃げようとするので取っ組み合いのようになるが所詮3対1、勝ち目はない。甚五郎が足を押さえつけられてしまい逃げられなくなった時、抑えるのに夢中の用心棒の刀を奪い斬りつける。


「いた、貴様、手加減していれば」


 用心棒からすればこいつに恩があるわけではない。頭にきて一気に斬り殺してしまった。柴田盛道は、これは仕方がない、と一度両手を合わせてから死体を探し手紙を探る。ここは街中の路地を入ったところで騒ぎを聞いて人が集まって来ている。グズグズはしていられない。手紙を見つけると早足で街を出て行った。


 街を出て近くの小さな林の中に入ると一人の男が待ち構えていた。


「どうだ、奪えたか?」


「はい、ここに。ですが抵抗したため殺してしまいました。恩があった男なのですが、まさか甲賀の草だったとは。話を聞いても信じられませんでした」


「そういうお前も上杉に潜り込んでいた間者であろうに。十兵衛様は早くから上杉に目をつけていた。長尾景虎が足利義輝公に会いに上洛した時からだそうだ。いずれ天下を動かすだろうとお前の父を送り込んだ」


「それがしは北条側に付きました。十兵衛様からはどちらへ付くか指示がなかったのです。負けるとは考えておりませんでした」


「それもあの武田勝頼がいたからだ。上杉を属国にするとは十兵衛様も想定外だったそうだ。それはともかくその手紙だ。三成の手紙の返事のはず。わしはそれを持って京へ向かう。む、何奴?」


 柴田が振り向くと街道から林に堂々と入ってきた男がいた。なんだこいつ?


「そこもとらがさっきの騒ぎの首謀者のようだな。騒ぎを遠くから見ていたが殺して奪い取るほどの大事な物に興味があって尾行してきたのだ。そうしたらさらに親分がいるとは、これはまたさらに面白くなった。今の話だと明智十兵衛の手の者のようだな」


「お主には関係ないものだ。どうやら浪人のようだし、そうだ。金が欲しいなら使ってやってもいいぞ。この男に気付かれずに尾行できるのだから腕は立つのであろう」


「金か。確かに必要だが、お主らから貰うよりその手紙を届けた方が金になりそうだ」


 用心棒の3人は首領らしき男の目配せで刀を抜いた。その男は、


「やれやれ。わしは槍の方が得意なのだが仕方あるまいて」


 と言いながらゆっくり刀を抜く。用心棒が斬りかかるが、間合いの取り方が絶妙だ。3人が連携したら勝てないと見たのか常に相手が1人になるように動き、確実に1人づつ倒していく。首領らしき男はこの隙に逃げ出そうとしたが反対側にも浪人が現れ逃げられなくなっている。結局首領らしき男と柴田盛道は戦うしかなく殺されてしまった。


 最初に現れた男が目配せをすると別に浪人が手紙を探し出し、男に手渡した。


「ほう、これは面白い。これは喧嘩になるぞ。しかしどうしたらこんな返事になるのだ?返事というからにはその前の手紙に対してという事だが、はて?これは会ってみたい、いや、会わねばなるまいて」




 男は浪人の格好から武士として恥ずかしくない衣服に着替えて、郡山城へ向かった。そこは毛利の拠点であり、今は木下秀吉の主城でもある。そこに手紙の宛人がいるはずだ。


「三成様、お客人です。上杉からの手紙を持参したそうでございます」


 小姓が三成へ要件を伝えると、


「不可解な!忍びがわざわざ城門から訪ねてくるのか?誰が来た?名乗ったのか?」


「はい。それが………、」


「なんだ?」


「島左近清興と名乗られました」


「!!!」


 筒井順慶の死後、行方が知れなかった島左近が訪ねてきた?なんで上杉の手紙を?上杉の家臣だったのか?

 脳みそがおかしくなりそうな三成でした。

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