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未来を知った武田勝頼は何を思う  作者: Kくぼ


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三成の焦り

石田三成。秀吉がまだ織田信長の配下で長浜城主だった時に、二人の兄とともに秀吉配下となりました。三成は小姓として秀吉の側にいるようになり、その時に才能を見出されます。毛利の中で立場が弱かった秀吉を陰から支え、要所要所で活躍してきたのです。ただその活躍は表に見えるものではなく、縁の下の力持ちのような功績でした。


尾張時代から秀吉に仕えている加藤清正や福島正則とは違い、後から加わったのに、そして大して戦では役に立たないのに秀吉に贔屓されているように周りからは見えていました。加藤清正は三成の苦労を知っていたので影でフォローをしていたのだが、三成が養子に決まると態度を一変させます。


「秀吉様はガキの頃、飯が食えない俺らにたらふく飯を食わせてくれた。この恩は一生忘れないし、一生をかけて尽くす意味がある。だが、それを養子の三成に対して同じようにできるのか?」


これは福島政則と加藤清正の会話だったのですが、この会話は秀吉陣営で広まってしまいます。清正は悪気はなかったのです。三成とは仲が悪いわけでもなく、ああいう役目をする人も必要だと思っていました。ただ、跡取り、つまり主君になるというのに戸惑いもあり対応できていなかったのです。そしてその噂は三成の耳にも届きます。三成は、


「あいつらの言う事もわかる。わかるが武士たる者、主君に仕えて当然。それがしが主君として思えないならそれまでの事」


と、くそまじめに言い放つ有様でした。三成は素直なのです。素直だからこそ思った事を口にします。ただそれは他人にあまりいいようには聞こえません。その事を三成は悪いと思わないのです。そしてついに秀吉の耳にも噂が聞こえてくるようになりました。詳しく調べたところ、これはまずいと思い間に入って仲介をしたほどです。これによりこの3人は和解しました。清正と政則は秀吉の顔を立てたのです。秀吉の事は実の親のように思っています。特に秀吉の正室であるねねは実の母親と同じくらいに慕っています。秀吉は三成に対しては、


「人は上手く使え。お前を養子にしたのはそれができるからだ。できなければ養子を解く事もあるぞ!」


と脅しをかけました。三成もそれを聞いて考えを改めようとしますが、根が真面目なのでなかなか上手くはいきません。実は三成は自分が悪いと思っていませんでした。噂を広めたのは清正だし、なんで自分が怒られるのか、と思いましたが秀吉に迷惑をかけたのは事実です。名誉挽回をするべく、何か成果を出さねばと考えます。そしてこの事が武田調略に対して成果を出さねばという三成の焦りに繋がるのです。





三成は最上、伊達、佐竹、上杉に文を出しました。運んで行ったのは甲賀の忍びです。それも各地に長く住んでいる草を使いました。今は武田の領地内で目立った動きはできません。それは絶対に避けるよう秀吉に言われていました。つまり警戒の厳しい尾張や駿河は通れないという事です。特に本多正信の一件から武田領の警戒が厳しくなっているのです。そのため、日本海側から回り込むように手紙をゆっくりと地元の草を渡り歩くように使って届けさせました。春日山城に向かったのは長年春日山近くの農家を営む草で、甚五郎という者です。ある日、甚五郎の元に風車を持った使いが現れました。


「甚五郎、お役目だ。使者となってこの手紙を上杉景勝へ届けてくれ」


「甲賀の方ですか。もうかれこれ30年近く音沙汰がなかったのにまた急ですな」


風車が甲賀の者という合図でした。ですが、甚五郎は父親からそれを引き継いでから始めて 実際に合図の風車を見たのです。なのに、この使いは甚五郎の名前を知っていました。


「お前の流す情報はとても役立っている。長年の務め、大義であった。上杉から手紙の返事をもらったら引き上げてくれ。もうここに住むことはできまい」


「父の代からここに住みここで育ちました。この地を離れなければいけないのはどうしてもでしょうか?」


「お主の正体はすぐにばれる。そうなればもう草としてに務めはできなくなる」


「ならば、私でなく貴方様が使者となればよろしいのでは?」


「わしの顔はまだバラしたくはないのだ。すまん、生活は保証するし、褒美も出す。頼まれてくれ。わしはまだ越後に留まるように甲賀から言われておるのだ」


甚五郎は仕方なく、手渡された衣服に着替えて春日山城に向かいました。そして上杉景勝へ面会を申し出ました。


甚五郎はなぜか城内にすんなりと案内されました。甚五郎は今は武士の格好をしています。木下秀吉の使者と名乗り待機室のような小部屋で待っていると、その部屋に男が入ってきて正面に座りました。


「木下秀吉殿のご使者だとか。直江兼続と申す者でござる。この上杉で家老を務めております」


そう名乗った男は甚五郎を値踏みするような目で見ながら話しかけてきました。甚五郎は、


「これはご丁寧に。我が主人、木下秀吉様より書状を預かって参りました。上杉景勝様へお渡し願いたい」


「殿へ書状をですか。で、甚五郎殿はどちらから参られた?播磨か?」


ん?俺は名乗ってないぞ。なんで俺の名前を知っているんだ?


「なぜ私の名をご存知なのですか?」


「先程名乗られたであろう」


あれ、そうだっけ?そういえば城に入る時に名乗ったのかもしれないなと思い始める。なんせ草とはいえ初めてのおつかいじゃないお勤めである。結構いっぱいいっぱいなのです。


「それでは直江様、この書状をお願いいたす。返事は出来るだけ早くいただきたく存じます」


「承知した。しばし待たれよ」


兼続は部屋を出て景勝の元へ向かった。






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