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未来を知った武田勝頼は何を思う  作者: Kくぼ


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 1ヶ月が過ぎた。勝頼は駿府城にいる。駿府城には信玄もいた、というより駿府城は信玄の居城でもある。寒い古府中より温暖な駿河の方が年寄りには過ごしやすいのだ。駿府城の中に作られた信玄館と名付けられた一廓に信玄は里美と住んでいる。信玄の側室で生き残っているのは里美と油山の方の2人だけだ。油山の方は盛信の件があってから表には出なくなっている。上杉夫人の菊や織田夫人の松とは連絡を取っているようだが、それは見て見ぬふりをしている。


「ふむ。諏訪原城でそんな事が。で、その服部とかはどうしたのだ?」


 信玄は里美の入れたお茶を飲みながら世間話でもするように勝頼に聞いた。勝頼は、


「先ほど解放しました。裏も取れましたし」


「解放しただと。甘い、甘いぞ勝頼。そもそも本多正信を殺しておけばよかったのだ。そうすれば今の状況は違うものに………、そうか。お前はそこまで考えて。だが、服部はどうして?」


 信玄は大屋形という立場ですが、あくまでも隠居の身という立場を崩していません。配下に直接指示をしないようにしています。北条の真似をしたくないのか、勝頼を信頼しているのか、その両方でしょう。ですが、意見が合わない時にはこうやって問い糺す事があります。勝頼が必ず正しいわけではないのです。勝頼には俗に言う爺と呼ばれる人がいません。強いて言えば子供の頃に付けられた跡部勝資あたりがそう言えるのでしょうが、実際には勝頼には三雄という軍師がいて、爺の役目というよりはただの世話役に過ぎませんでした。


 それが今の勝頼を作ったのですが、信玄はそのマイナス面を気にしています。この時代ならではの事、勝頼の思想は数百年先の出来事に影響されているのです。それがいつか足を掬うのではないかと、自分が爺の立場になろうとしているのです。


 里美は黙って聞いています。早くに実の母親を亡くした勝頼は里美に厳しく育てられました。育ての母であり、勝頼も母のように接しています。


「父上は流石でございます。まず、本多正信ですがご推察の通りわざと泳がせました。武田の敵は明智ではなく木下秀吉です。秀吉とどこで、いつ、どのような戦いになるのか。どうやれば勝てるのか、それを考えた時、泳がせた方が得だと考えたのです。あの男は何かをしでかします。そしてそれが、」


「戦には理由がいる。ここまでお互いの勢力が大きくなれば決戦になるのは必定。だが、ただ戦を仕掛けるだけではその後に民が付いてこない。それは一時期の天下であり長続きしないとでも三雄殿に言われたのであろう。わしはそういう考えをした事がなかった。帝を支えて戦をしていれば天下を取れるとは思ってはいたが、その後何代もその天下を続ける事までは考えていなかった。このままいけばいずれはぶつかるだろうが、ただ勝つだけではお前の考える日ノ本は作れないという事か」


「はい。機は熟しつつあります。武田は美濃から東を手に入れました。要所要所に重臣を配置し、地元の有力大名とも縁戚関係を結びました。三雄殿に子を沢山作り、有力大名に嫁がせろと言われた意味が最近になってわかるようになりました」


「婚姻といえば武藤源三郎と本多忠勝の娘が式を挙げたな。わしからも祝いの品を送っておいた。里美に選んでもらった」


「あの子供が嫁をもらうなんて、殿や私が爺婆になるわけですね」


 里美は源三郎や源二郎が人質として古府中にいた頃、よく一緒に遊んでいた。あの女騎馬武者も今では優しいお婆ちゃんになっている。


「そうでしたか。源三郎からはお礼の文が届いたそうですね。今、あっちは忙しくこっちまではこれないでしょう。そういえば、この間源二郎、今は真田幸村ですが里美様に会いたいと言っておりました。今度連れてきましょう」


「源二郎殿は徳さん付きだとか。そういえば源二郎殿は女子の方はどうなのです?」


「今はそれどころではないようで。いずれいい縁談を用意したいとは思っております」


 女性はどうしてもこういう話題になる。源二郎の事は徳も気にしていたからまあ大丈夫だろう。


「勝頼、話が逸れたぞ、いやわしが逸らしたのか。それで本多正信がきっかけになって戦の大義名分ができると?」


「再び闇に戻るか、武田の内乱を狙うか。例えば東北、有力な味方である織田や上杉の撹乱。それは起きたら起きたで解決すればより強固な絆になります。ただその可能性は低いと思っていました。不満を持っていた室賀でさえ、武田を裏切りませんでした」


「で、行き先が明智だとわかったのだな。先程裏を取ったと言ったが?」


「はい。服部半蔵の情報の真偽を確かめました。それと大久保信正と名を変えた本多正信の動きもです」


 勝頼は調べた内容を信玄に説明した。しばらく話をしていると茜が現れた。茜は勝頼の祖父、信虎の世話をしていた女性で忍びの心得がある女性だ。信虎の死後、信玄がそばに置いて使っている。


「お屋形様、直江兼続様からの書状が届いております」


 兼続から?なんだろう?





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