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未来を知った武田勝頼は何を思う  作者: Kくぼ


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賊の目的

 賊は明智十兵衛の使者だと名乗りました。勝頼は、


「使者がコソ泥のような真似をするのか。明智十兵衛の器が知れるわ!」


 といきなり噛ませます。すると、使者は冷静に


「武田様に近付くのが難しく、しかもそれがしの動きも先程のように見張られていまして。大変失礼をいたしました」


「正面からはこれない、と言いたいのか。まあよかろう、で何用だ?」


 勝頼は受け答えに満足し話を聞くことにしました。なんにしても聞きたい事が山盛りなので殺すわけにもいきません。勝頼が顎で錠に合図をすると桃がそれを見て賊ではない使者の縄を解き自由にさせます。すでに武器は取り上げています。


「手紙を持参しております」


 というと、その忍びは上腕部を歯に仕込んだ刃物を使って小さく切り裂いた。そこに小さな筒が入っていた。賊は筒を腕から取り出すと目の前に置き、


「ごめん」


 と言って傷口を縫い始めた。徳や錠、桃は唖然としている。殺されても文が見つからないようにしていたのだろうが大胆なやり方だ。傷口を縫い終わると、筒を拭いてから中から丸まった手紙を取り出し、一歩前に出て、置いてから元の位置に下がった。


「錠、桃、こいつは武器を持ってないんじゃ無かったのか?なんか色々と出てくるぞ」


 勝頼が笑いながら言うと、2人は真っ青です。


「今回はいい勉強になったであろう。次はないぞ、いいな」


 勝頼の言葉にホッとする2人でしたが、聞こえてきた


「特訓だわさ!」


 と言う徳の声で再び震え上がります。そのタイミングでチーム乙のメンバーが現れて、桃に耳打ちします。勝頼は、あいつらの正体がわかったのかと思い、


「ここで皆に聞こえるように申せ、あの2人はどこのものだ?」


 というと、そのメンバーは桃の顔を見てから改めて勝頼の方を向いて跪き、


「三河に長く根付いている伊賀者でございました。錠様が調べた帳面に記載がありました」





「さて、十兵衛からの文は後でじっくりと読ませてもらう。まず聞こう。なぜ、余がここにいる時を狙ったのだ?」


「駿河は警戒が強く入り込めません。三河も長居はできません。そちらの方々のお仲間でしょうか、疑われたら最後、そこを離れるしかありません。先程、賊の素性を三河に根付いた伊賀者と言っていたのもそういう事です。昔からそこに住んでいる草は生活がそのまま活動になりますので普通に動けるのです。よそ者は目立ってしまうので。ただ、皆様は草を伊賀者と見破っておられたようで、大したものです」


 勝頼が錠を見ると、当然だという顔をしています。そのくらいの事は承知していて、その中で怪しい奴をマーキングしているのです。ですが、


「錠、そいつらをマークしていたのになんでここで襲われるんだ。何を得意顔になってる!」


錠は珍しく勝頼の声に怯まず答えます。


「お屋形様。申し訳ありません。こちらから申し上げてもよろしいですか?」


「いいぞ、お前達の発言は自由だ」


「その様な者は各地に点在しております。絶えず見張っているのはごく一部の者だけで、通常時全員を見張るのは不可能なのです。あの2人は、普段は百姓をしていて目立った活動をしていなかったのです」


 それもそうだ、そんなのまで見張ってたら人が何人いても足りない。


「錠、ならこいつの素性はわかるか?」


 錠は改めて捕まえた賊を見ました。どこかで見た事がある顔です。


「伊賀者です。例の大名集結の時に二条城で見ました。恐らくは明智十兵衛の手の者かと」


 もしやあの時?


「お主、名は何という?」


「山影にございます」


「十兵衛のところには長いのか?」


「はい。それがしの父が明智光安様にお仕えしておりました関係で、十兵衛様が美濃を追われた際に越前に同行いたしました。それ以来のご縁でございます」


「伊賀者なのか?」


「はい。伊賀者と言いましても全国に散らばっており、それぞれ派閥がございます。元は横の連絡もありましたが戦国になり、敵味方に分かれる事が増えました。今の伊賀忍びには統率者がおりません。各地にそれぞれの主君を持つ小集団がいるのが実情です。それがしは一匹狼ゆえ、あの様に同じ伊賀者に狙われるのです」


 狙われていたのを知っていてここに来たのか?山影は話を続けています。


「あいつらは服部半蔵という伊賀の頭領の配下で、長年三河に住んでいる者たちです。最近、服部半蔵が京に現れ始め、それからそれがしの行動が見張られる様になりました」


「ほう、服部半蔵という忍びがいるのだな?初めて聞く名前だ」


 勝頼は顔に出ないようにしてすっとぼけています。


「そうですか。それでは大久保信正という御仁の事は?」


「知らんな」


 こっちは本当に初耳です。


「服部半蔵はその大久保信正の配下です。最近京に現れ、明智家の参謀となって来ています。兵はいませんし、領地もありませんが頭が回るので十兵衛様が率先して使っているのです」


 大久保信正か。何者であろうか?


「山影よ、同じ伊賀者で同じ明智に仕える仲なのに何故に争う?おかしいではないか」


「十兵衛様は左馬助様を失ってから人が変わってしまいました。目指す道を見失ってしまったのです。ただ、今更後にも引けず、新参者を頼るようになりました。明智十兵衛は実は二重人格なのです。この文は冷静な方の十兵衛様がお書きになりました」

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