武田では
武田家でもこの2年の間に動きがありました。明智との戦に勝利し、岡崎城の一件が片付いた後、勝頼は西への攻撃をしないよう指示し、足元を固めるようにしました。戦続きで犠牲が多く、やる事が多すぎるのです。戦争だけしていればいいのではありません。それに勝頼は元々戦が嫌いなのです。
まず、信平が結城家に入りました。井伊直政は与力として結城領に三千石の土地を貰って生活しています。井伊谷の領地はそのまま残っています。それだけではなく、浜松城も井伊家の物となり、城代として引退した直虎が入りました。
信勝は茶々と婚儀を結び早速子ができました。もうすぐ産まれる予定でお市はずっとそわそわしています。古府中には徳が作った赤子用のおもちゃが既に用意されています。ただのおもちゃかと思ったら何かの試作品のようです。電池で動く馬なのですが、これが試作品?
馬場美濃守信春は天命で無くなりました。天下にその名を轟かせた鬼美濃も年には勝てません。馬場の家には子が沢山いましたが、嫡男の昌房が家督を継ぎました。馬場の領地は出来たばかりの小田原城へ移転したばかりで結構ゴタゴタしましたが、手伝いに行った井伊直政がうまく仕切ってなんとかしたのです。これによって直政の主人である結城信平の株が上がりました。小田原は北条が治めていたこともあって難しい土地です。だからこその馬場信春だったのですが天命には勝てません。直政の努力の結果として結城家は加増になり、遠江へ移転となりました。関東は穴山信君が小山城に入って旧結城領も治めています。武蔵には山県昌景が睨みを利かせています。信平が遠江で選んだのが浜松城でした。浜松は井伊が貰っていて井伊直虎が城代で居ましたが、本人も再引退したがっていたので直政に井伊谷と二俣城を与えています。結城は遠州半国を治める事になりました。残りの半国は長年の功績から竹中半兵衛に与えられています。居城は高天神城です。ここには例の研究所があり、徳や真田幸村も高天神城に住んでいます。半兵衛の領地にはあの諏訪原城も含まれています。そこには勝頼用の特別室がつくられました。
尾張は武田信豊、美濃に織田信忠は変わっていません。織田は伊勢志摩に加え伊賀も取りました。伊勢志摩は滝川一益、伊賀は丹羽長秀が治めています。勝頼は岡崎の件の後、岐阜城を訪れて信忠に西の防衛は織田の役目といい、切り取った領地をそのまま与えました。声には尊厳があり、何かあれば取り上げるぞ、とばかりにです。妹の松姫の前ではデレデレでしたが。
飛騨には秋山信友、越前には菅原隆則が抜擢されました。菅原は元々は駿河蒲原家の家臣でしたが、勝頼に才能を見出され数々の戦で戦功を挙げています。今まで昇進に興味がなく、駿河でのんびりと暮らしたがっていましたが、
「菅原殿。頼りにしております」
と、徳に言われてギブアップです。菅原は徳には頭が上がりません。越前は明智領の若狭と面しており大事な位置です。ただその後ろの加賀、越中は上杉が治めていて何かあればすぐに支援が来る事になっています。
武田信玄は直江兼続によって生きている事を突き止められました。突然、宇都宮城に兼続が現れて
「快気祝いでございます」
と越後の米と酒を持ってきたのです。信玄も馬場信春の具合が悪いと聞いていて見舞いにも行きたかったので、兼続と面会しました。
「直江殿、武田信玄である。会うのは初めてだがそんな気がしない」
「直江兼続にございます。ようやく拝顔できまして恐悦至極にございます」
「で、なんの用だ?」
「はい。そろそろ表に出てきてもいい頃と考え参上仕りました。誠に失礼ではございますが、きっかけです」
信玄は大声で笑った。実は信玄は表に出る理由を欲していた。ここまで隠れて死んだ事になっていると返って出難いのだ。
「兼続。そなたは面白いな。勝頼が気にいるわけだ」
「上杉を今後ともよしなにお願いいたしまする」
「お屋形様は勝頼だ。わしは何もせんよ」
そうして信玄は小田原へお忍びに出かけ、馬場信春の死に目に会う事ができました。街に武田信玄が生きていたと噂が流れ始めます。それを聞いた徳は、信玄を駿府城に呼び、イベントを計画しました。駿府城は元々信玄の居城です。徳は周辺の属国にお触れを出し駿府城の二の丸広場に人を集めました。城下には人が溢れ大賑わいです。信玄は、二の丸の特製ベランダに
「信玄、ふっかーーーつ!」
という徳の掛け声とともに兵の前に現れました。
「おおおおおおおおお」
兵が雄叫びをあげます。それに対し信玄が手を降っています。そして信玄が床几を持ち、上に掲げると場が静かになります。信玄は徳が持たせてくれた電池式の拡声器を持っています。
「皆の者、武田信玄、この日ノ本を武田が導くために再び勤めていく。お屋形様、勝頼を支えて武田幕府を開く。良いか!日ノ本を導くのは我らが武田勝頼だ。勝頼に続くのだ!」
「おおおおおおおおおおおお」
横にいた勝頼は、なにこれ?となっています。徳が信玄復活のお披露目するというから来てみればアイヤーという感じです。仕方なく勝頼は信玄の横に立ちます。
「おお、お屋形様じゃ」
「お屋形様じゃ」
兵の声が聞こえてきます。




