表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
未来を知った武田勝頼は何を思う  作者: Kくぼ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

303/471

目的?

 信平は当然の事のように言い放った。


「そこで井伊直虎殿に伺いましたが、最初は室賀殿は止むを得ず出陣した模様。ここから考えられるのは、城を誰かが占拠しそれを咎めようと室賀殿は出陣された。ところが、今生きている者は不可思議な証言しかしていない。一色が城を奪いそれに室賀殿が合流したとかなんとか!肝心の本来証言すべき御家来衆の山家三方衆の奥平殿、長篠城の菅沼殿は討ち死にされた。それなのにに何も無かったかのように、奥三河は静かだとか」


「奥三河だと!誰に聞いた?」


 勝頼は自分が知らない情報を信平が知っている事に驚いた。いつの間に奥三河の様子まで?信平は驚いた父親を少し怪訝に感じながら答えた。


「影猫です。それがしより先にこちらに来て三河を走り回ってくれました」


 直政は影猫の名前を聞いて顔がにやけた。直政は影猫に陰ながら惚れている。勝頼は影猫と信平の接点を不思議に思ったが、それだけ厳しい戦を経験したのだろうとここは追求しなかった。今はまだ正信に余計な情報を与えないほうが良さそうだ。正信は影猫という名前だけをとりあえず記憶に残した。突っ立っている忠勝がイライラし始めたのが雰囲気でわかる。勝頼はそれを感じながら言い放つ。


「信平。正信殿は余の配下ではない。腹を切らせる事は出来んよ」


 信平は引き下がらない。


「そういうものですか。わかりました。ですが、無罪放免というわけにはいかないのではないでしょうか?」


 それを聞いた忠勝が、


「信平様。お屋形様にご意見なさるのはいかがかと存ずる」


 とだけ言ってまた黙り込む。信平が出しゃばったので忠勝は抑えに回る役目になった。本当なら忠勝が暴れるところなのだが、こうなると信平を庇う方に回らなければならない。親子とはいえ、こういった場で揉めるのはあまり良くない。すぐカバーに回った忠勝をみて、信平の頬がしてやったりという風に動いたのを勝頼は見逃さなかった。勝頼はそれをみて、信平が計算してやったのだと確信した。本当に成長したようだ。そして山県昌景が場をまとめようと言い切った。


「本多正信を追放処分とする。これはお屋形様の沙汰である。何人も覆す事なし!」


 場はお開きとなった。





 本多正信は何も言わずに出ていった。部屋では勝頼が腕組みをしたまま固まっている。忠勝は信平の後ろに座った。正信の後を追いかけようとして咎められたのだ。山県が、


「お屋形様。これでよろしかったでしょうか?」


「まあだいたい話は聞けたしな。山県よ、いい助け舟であった。お主がいてくれて助かったよ」


「そのためのそれがしでござる。尾行は?」


「ああ、ゼットの連中に頼んである。それとだ、信平。何しにここへ来た?」


 信平は、不満そうな顔をしている。本多正信を逃したのが気に入らないのだ。


「父上、参った理由は井伊直政の件のお許しをもらうためですが、それに加え武藤喜兵衛殿に自分が行くまで父上にのお相手を頼まれたのです」


「そうか。だがその不満そうな顔はなんだ?将たる者、真の感情を面に出してはいかんぞ、喜怒哀楽は自由に使い分けるのだ」


 そんな事を言われても。そうか、顔に出ていたか。


「それがしは若輩者ゆえその域には達しておりません。それよりも本多正信をお許しになるとは。そもそもあの男の目的はなんなのでしょうか?武田家に入り込むだけなら他にも方法があると思うのですが」


 信平は室賀謀反の話を聞いてから、信勝よりも自分を立てようとしていた家臣達の顔を思い出していた。悪気はなかったのだろうが、信勝よりも信平の方がお屋形様に向いていると煽てられればそれこそ悪い気はしない。信平にその気がなくても周囲にそういう雰囲気が出てしまう。慌てて否定して事なきを得ているが、人が増えれば派閥が増える。派閥が増えれば争いが起きる。今回の室賀の謀反は背景に信平と同じような物があったのではと考えたのだ。


 ところがこの本多正信という男、こいつが絡んで物事が複雑になった。何がどう入り組んでこの結果になったのか、結果は単純な物語となっている。話を聞いた時、嘘だ!と思った。室賀の立場を自分なりに考えてみた。結論は武田に逆らうのではなく手柄を立てる、だ。室賀は小田原攻めに参加している。誰よりも武田と戦って勝てない事を知っているはずだ。これには武藤喜兵衛、真田幸村も同意していた。幸村も小田原攻めに参加していて、戦後も勉強のために残っていた。その時の室賀の顔を覚えているそうだ。


「逍遥軒様を死なせてしまった事で腹を切りそうな雰囲気でした。それにより褒賞は無しになってしまった事も響いていたと思います」


 幸村が室賀の話をするときは寂しそうだった。幸村は古府中で生まれ古府中で育ち三河へ引っ越したが、真田本家のある上田やその近くの室賀の庄へも遊びに行ったことがあった。子供の頃に遊んでもらったこともあったのだ。





 本多正信は岡崎を出て尾張へ向かっていたが行方が知れなくなった。ゼットの尾行が付いていたのだが、途中何人も本多正信が現れ、結局見失ったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ