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未来を知った武田勝頼は何を思う  作者: Kくぼ


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信平の意見

部屋の中には忠勝の低音雑音のような唸り声が響いている。


「お屋形様。この者を外へ出してはいただけませんか?気が散りまする」


「正信殿。そなたにお屋形様と呼ばれる筋合いはない。それにこの男にはここに立っているように指示した。それが邪魔だと?」


正信は話の方向を逸らそうとしたが上手くいかなかった。勝頼が正信の反応を見ようとしていると感じた。山県昌景は黙って下を向いているし忠勝の存在といいどうも調子が狂う。この若いのが息子のようだが、いいところでも見せたいのであろうか?こいつを利用する事も考えられるな。


「申し訳ありませぬ。昔からこの男とはウマが合わないのです。姓は同じですが、出は違いまして性格も乱暴ゆえ」


忠勝は唸るのをやめた。乱暴に反応したようで急に静かになった。勝頼は忠勝なりの抵抗と理解した。全く見てて飽きないやつだ。一瞬忠勝を見て笑みを浮かべてから正信を見た。


「静かになったぞ。では余の問いに答えよ。どう始末をつける?」


「始末と申されましてもすでにこの世にいないお方にはお墓で詫びていただくしかありませぬ。それがこの世の理でございますゆえ」


「そういう事を申しているのではない。当然、墓では詫びるつもりだ。そなたの仕出かした不始末について問うておるのだ」


「それがしの不始末?」


どれの事を言っているのだ?どの案件も不始末とも言えるが手柄でもある。先程の話の流れからすると室賀を殺したことのようだが?正信は慎重に、


「室賀様を殺めるつもりはありませんでした。その件につきましては菅沼様にお聞き下さいますようお願い申し上げます。


「お主の言う菅沼とはどの菅沼だ?野田か、田峰か?それとも長篠か?」


「田峰城の菅沼様でございます」


「ほう、お主はいつから岡崎におる?」


「三月にもなりますか?」


「そうか、で、その菅沼とはどこで知りおうたのだ?」


「この戦の最中でございます。それがしは旧徳川の者を集めて菅沼様の支援に入りました」


「その旧徳川の者というのは誰の兵だ?」


「ここを治める武藤様の兵かと」


「お主は他人の兵を勝手に使い、死者まで出しておる。今回の戦、城を見聞したがさほどの大戦ではなかったようだ。それにしては死者が多すぎる。しかも居留守の者で生き残りは腹に何かを抱えている者だけだ。これをどう説明する?」


「それがしにはわかりません」


雲行きが怪しい。疑ってかかってくるのは想定内だが、末端兵の事まで気にするとは!シラを切るしかない。


「お主の不始末。まずは室賀を殺した事。これは口封じと同じだ。やましい事を隠したとも言える。次に兵を殺した事、お主ほどの男なら殺さずに対処できたであろう。これもわざと殺した」


「お待ち下さいませ。武田様がおっしゃっている事がわかりません」


正信の答えに山県が、


「黙ってきけーーーい!お屋形様の発言中だ」


物凄い大声だった。戦場でも間違いなく遠くまで聞こえる声だ。それでも忠勝は微動だにしない。井伊直政はひっくり返っている。


「お主は褒美が欲しくてやったのか?」


「違いまする。その場の勢いでござった」


「だが、先程は家臣になりたいような事を申していたではないか?」


「後から湧いた欲でござる。侍は手柄を求めます。それは報酬に繋がるからです。今回多少余計な事をしてしまったかもしれませんが、結果論でございます」


「余計な事?」


正信はしまったと思った。つい口が滑ってしまった。だが、勝頼はそこを責めては来なかった。


「お主は室賀を直接ではないとはいえ殺し、大事な兵も殺してしまった。なぜか兵の家族には見に余るような補償金が支払われている。その金がどこから出たのか?」


「それがしは本願寺におりまして、休戦時に使い切れないほどの金子を頂戴いたしました。この度は多くの兵をうしなってしまいました。残された家族に僅かでもとお配りした次第でございます」


「それは感謝しなければいけないが、そもそもお主が来なければ何も起きなかったのではないか?」


「わかりませぬ」


勝頼は落とし所を決め兼ねていた。手柄には違いないのだが怪しすぎる。中に入れるわけにはいかなそうだ。


「本多正信。お主の罪は手柄で相殺するとしよう。三河、尾張、美濃、甲斐、駿河へは行かぬこと、それで放免してやろう。それでどうだ?」


上手いことやって潜り込もうとしたがダメなようだ。ここは引くしかあるまい。


「元々通りがかっただけでございますゆえ、それで問題ありません」


勝頼はあの室賀の首を思い出した。あの悔しそうな表情が訴えている物、あれは裏切り者の顔ではない。朝比奈、室賀、そして首謀者と言われている一色も死んでしまい、真相はわからない。状況はこの正信が仕組んだ事のように見えた。だが、証拠は何1つない。


「そうだ、一色という男を知っているか?」


「存じませぬ」


「そうか、わかった。で、信平に直政、これで満足か?」


信平は目を大きく開いてこう言った。


「なぜ腹を切らせないのですか?」

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