報告
結局、政宗は救出された弟の小次郎の顔を見て安心させた後、首を切られました。小次郎はかなり消耗していたので米沢城で身体を休ませています。小次郎は風魔に抵抗しなかったので殺されなかったようです。義姫が目の前で殺されて意気消沈していたのです。そこで暴れないのが臆病なのか冷静なのか、何にせよそれで助かったのでしょう。
政宗は最後は無言でした。輝宗の事や風魔、秀吉の事もあれからは何も話ませんでした。
勝頼は奥州の仕置を続けるべく、参加した武将達に論功褒賞を行いつつさらなる北上を考えています。ふと横にいた直江兼続が視界に入りました。
「直江殿、いつまでここにいるつもりだ?」
「そろそろお暇しようかと考えておりました。殿からも帰ってくるようにと知らせがきております」
「ならば、お市と信勝を宇都宮城まで送ってくれないか?山上道及も一緒に」
「承知仕りました。勝頼様はどうされるのですか?」
「陸奥まで行ってみようと思う」
それを聞いた穴山梅雪が、
「お屋形様。お屋形様自らが出向かれなくても良いのではないでしょうか?すでに甲斐から南部殿に来てもらうよう手配しておりますし、西も心配でしょう」
「甲斐の南部は陸奥の南部と出は一緒だったな。わかった、お主と馬場に任せよう。小次郎も元気になったら連れて行ってやってくれ。あと、相馬と岩城、佐竹も使え。武田の属国という立場を理解させねばな」
「承知!」
「武田の威信を見せつけてこい!」
穴山はそのまま部屋を出て行きました。東北の脅威は伊達、最上でした。伊達はひと段落しましたし、最上は逆らう気は無いと言っていましたが様子見の放置プレイをする事にしました。そこら辺は穴山と馬場に任せておけばいいでしょう。それに確かに、西が心配です。この時点ではまだ西の結果はまだ報告が届いていません。徳と半兵衛、喜兵衛が揃っているのですから大丈夫だとは思いますが戦は何があるかわからないのです。
結局勝頼は、皆と一緒に甲斐に向かって戻る事になりました。再び黒川城へより、結城によって信平の事を念押ししてから宇都宮城にもどりました。そこで直江兼続とはお別れです。宇都宮城には信玄が隠れています。まだ信玄が生きていることは秘密なので合わせる訳にはいきません。その兼続は信玄が生きていると思っています。なので近づけさせるわけにはいきません。
ゼットの面々には梟を監視させました。なんせ兼続の事です。何をしてくるかわかりません。悪気がないのが余計に困るのです。それだからこそ兼続なのですが。勝頼は宇都宮城の隠し部屋に入りました。忍び対策のされたこの部屋は古府中躑躅ヶ崎の新館にある物に似ています。
「父上、勝頼今戻りました」
「おう、戻ったか。早速話を聞かせてもらおうか」
「そうか。伊達に風魔か。で、その小次郎はどうするのだ?」
「伊達家を無くす事も考えましたが小次郎が生きている以上、継がせるべきです。伊達の家臣も小次郎なら納得するでしょう。最初は、春を嫁がせようかと思っていましたが芯が弱いので決めかねています」
「奥州に縁戚が必要と言っていただろう。他にいるのか?」
「今のところ。そうですね、うるさい母親も居なくなったので決めましょう。あっ、そうだ!」
「どうした?お前らしくないぞ、何を慌てている?」
「室賀です」
「室賀がどうした?逍遥軒の件以来、話を聞かないが」
「室賀に何か報いなければと思っていたのですが機会がなく。今回小次郎が死んでいれば室賀を東北にと考えていたのですが、小次郎が生きていてすっかり頭から消えていました。父上、室賀に浜松を預けようかと思うのですが」
「よかろう。真田を始め重臣達は領地を広げている。室賀にも報いてやるべきであろう。逍遥軒の事は運がなかったのだ。あやつが悪いわけではない」
信玄の弟、武田逍遥軒信廉は小田原の戦で命を落としました。その時に一緒に戦っていたのが室賀でした。勝頼は室賀を罰しませんでしたが、褒賞は控えました。流石にその場で活躍に報いる事は難しかったのです。ですが、その判断は遅すぎました。すでに事態は動き始めていたのです。せめて室賀が信玄の生きていると知っていれば………。
「で、父上。そろそろ駿河へお戻りになられてはいかがですか?もう隠さなくてもいいでしょう」
「勝頼。それがだな、国綱がよく面倒を見てくれて居心地がいいのだ」
宇都宮国綱を信玄は気に入っているようです。確かに若いのにしっかりしています。正室がすでにいるので娘を、というわけにはいかないのですがこの縁を強固にしたい思いもあるのでしょう。
「わかりました。武田家当主の娘を妾には出せません。誰か探してみます」
信玄は勝頼が理解してくれた事に満足して他の話に切り替えた。話す事は山ほどあるのです。
勝頼は翌日、信勝、お市とともに佐野城へ寄りました。ここで山上道及とはお別れです。本多忠勝が名残惜しそうにしています。行きと帰りでは態度が大違いになっています。
「道及、また会おうぞ!」
「おう、忠勝。お屋形様は任せたぞ!」
すっかり仲良しになっていました。信勝は男というのはこういうものなんだと感心しています。いずれ自分が家督を継げば部下になる者達です。心強いと思ってすぐに、
「あっ、父上。信平の方はどうなったのですか?」
「思い出したか。そうだな、どうなったのか?余も楽しみだ
忠勝は何の事か分からずキョトンとしています。信平は結城に養子に行く事になっています。その時に与力として本多忠勝を指名したのです。ですが、忠勝は武藤喜兵衛の配下ですので、勝頼は信平に自ら頼みに行くようにさせたのです。勉強を兼ねて。
その事がまさか気球に乗って空を飛ぶ事になろうとは考えてもいません。
「さて、喜兵衛は何と言ったのか。楽しみだ」
一行は武蔵から甲斐に入りました。勝沼の屋敷で休んでいると、伝令が飛び込んできました。
「室賀正武謀反、山家三方衆ともに岡崎城を占拠!」
しまった!遅かったか!




