伊達家の行方
米沢城の城門から兵と騎馬武者が出てきて、勝頼の方へ向かってくるのが見えました。城に閉じこもっていた伊達軍です。何が合図だったのかはわかりませんが、一気に全軍が飛び出してきました。佐竹の軍がそれに気づき、間に入って伊達軍を迎え撃ちます。山県昌景がそれを見て勝頼を下がらせようとして声をかけます。
「お屋形様、奥へ」
「山県。俺はここでいい。それより政宗の首を刎ねてしまえ。その方が良さそうだ」
山県昌景は迷わず伊達政宗の首を斬り落としました。勝頼の言い方が急げと言っているように聞こえたのです。風魔であれば自爆することもあると聞いていたので相手が変な素ぶりができぬように瞬殺しました。そして旗本を残し、伊達軍の方へ向かおうとしたが勝頼が呼び止めます。
「ここにいてくれ。あれは佐竹と結城にやらせろ。まだ終わってないかもだぞ」
勝頼がふと後ろの方を見ると信勝のことは本多忠勝が、お市のことは特殊部隊ゼットの桃と紅が護っています。流石にあいつらはわかっている。これが風魔だとしたらまだ終わっていないという事を。勝頼がさっさと政宗の首を落とさせたのは理由があったのです。
「山県、政宗の首を改めよ!」
山県は一瞬勝頼が何を言っているかわからなかったが、すぐに閃いた。
「ま、まさかに………、おお、これは!?」
城門から出てきたのは籠城していた全兵力だった。総勢四千名もの兵が一目散に勝頼本陣へ向かって来ている。武田軍は総勢四万にまで膨れ上がっていたが城を包囲していたため、勝頼の前には六千しか兵がいない。しかもまさか敵が攻めてくるとは思ってなく準備ができていなかった。そのため、各々が身近にあった武器を持ち敵に立ちふさがって戦い始めた。
騎馬武者で物凄く強い兵が何人かいて佐竹軍が押され始めた。そこに結城、岩城が加わる。戦闘を聞きつけ戻ってきた穴山が率いる関東勢も加わり乱戦となる中、20頭の馬が勝頼に向かって駆け抜けてきた。その中心の馬にはさっき首を斬り落とされたはずの政宗と同じ顔の男が乗っている。
政宗らしき男が乗った馬は周囲の騎馬武者に護られながら駆け抜けていく。その護衛の騎馬武者がバッタバッタと落馬し始めた。ゼットの面々がボーガンで狙撃していたのだ。乗り手を失った馬は四方へ散っていき、政宗らしき男と残りの騎馬武者の前に2人の男が長槍を持って立ち塞がった。山上道及と本多忠勝である。そしてこの2人が槍を振り回すと護衛らしき騎馬武者はあっという間に居なくなっていた。残りは政宗らしき男だけになってしまったが、戦闘の隙に大男2人の間をすり抜け勝頼に近づいている。勝頼は立ち上がりその男を凝視している。そしてその男は槍を振りかざし大声をあげた。
「伊達政宗ここにあり。武田勝頼、見事であった!」
そう言いながら勝頼に向かって槍を投げつけた。勝頼は何事も無かったようにその飛んできた槍を掴み地面に刺したあと、懐から銃を取り出した。
「先程も伊達政宗を名乗る不届き者が現れたので始末した。また偽物のようだが?」
「勝頼、覚悟!」
政宗は勝頼が言い終わる前に叫ぶと馬の上から刀を振るうが、勝頼はサイドステップから銃を連射した。この銃は9発連続で撃つことができる。弾倉を交換すれば更に撃てる優れものだ。弾丸は政宗の鎧を貫き、政宗は落馬した。勝頼は両腕両足を撃ったのだ。当然狙って。
「政宗の顔を知っているものはいないのか?」
勝頼が叫ぶと近くにいた相馬盛胤、義胤親子が名乗り出て父の盛胤が声を上げる。
「それがしが知っておりまする」
「こいつは本物か?」
「梵天丸めの事は赤子の頃から知っておりますがわかりませぬ。さっきの白装束も伊達政宗に見えました。ですが、まさかあのような……… 」
「………、そうか。相馬殿、また後で頼む」
最初に首を落とした政宗の顔は変装だった。山県昌景が首を改めた時に顔の皮膚がとれて別の顔が出てきたのだ。それ故にこの政宗が本物とは限らないのだ。落馬した政宗を兵が捕らえようとすると政宗は振り払おうとするが、手足が痛みで動かなかった。そしてもがいたものの捕らえられた。まだ城の兵と佐竹、結城、穴山の戦闘は続いている。まだ油断はできない。小次郎も偽物だったし、逃げた義姫も偽物だろう。
「という事は家族全員敵の忍びか何かということだ、恐らくは風魔。ならば、東北に拠点があるのかもしれん。錠!」
勝頼が錠を呼ぶとどこからか錠が現れた。
「風魔の拠点がないか徹底的に探れ」
「それについてご報告がございます」
「なんかわかったのか?」
「そこに直江兼続様がおいでです」
えっ、なんだそりゃ?錠に連れられて勝頼の前に直江兼続が現れた。梟も一緒だった。梟は義姫の首を持っていた。
「武田様、やっとお会いできました。直江兼続、手土産を持参いたしました」
「立派な手土産だ。大義である。梟の手柄か?」
梟は下を向いて控えている。さすが上杉の忍びです。それに対し兼続は
「我らがこの戦に間に合うように進んでいるとこの女が逃げてきましたので、捕らえようとしたのですが抵抗するためやむを得ず殺しました。どうやら風魔の者のようです。それと、道中で同じ顔をした女の死体を見つけました。梟によると伊達輝宗公の奥方だとか」
それを聞いた政宗らしき男が喚く。
「なんだと!母上が死んだというのか?」
「この首を見て驚かなかったお主が母上が死んだのか?とはなかなか面白いな。この首もお前の母だろう?」
梟がが持ってきたのは同じ顔の女だ。
「そいつは母上ではない。偽物だ」
「なんでわかる?」
政宗は急に無言になった。下を向いて唸っている。




