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未来を知った武田勝頼は何を思う  作者: Kくぼ


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そんなことってあるのね

 伊達政宗、伊達小次郎、義姫。3人揃ってなんと、家族レンジャー!! ではありません。そんなつまらない事を思ってしまうような違和感でした。3人の顔を改めて順番に見ます。勝頼の感じた違和感、それがだんだんと形に見えてきました。勝頼はそれをはっきりさせたく、政宗に話しかけました。


「伊達政宗。どこからが芝居だ?」


「芝居?ほう、面白い事を言う。なんのことだかわからん」


「ふむ。そもそもその白装束は芝居であろう。わざと懐の見つかるところに刃物を隠した。さらに足袋の裏にまで。だがそれはそこまで見つかる前提での芝居。輝宗殿が強硬派でお主が和平?それも芝居」


「それで。天下に名高い武田勝頼はどこまでが芝居だと思うのだ?」


「その偉そうな態度も芝居。それは置いておき、お主と義姫の会話だがそれも芝居のようだ」


 そこまで聞いた時、政宗は初めて驚いた顔をした。そして政宗は突然大声をあげた。


「は、は、は、は!」


 大声を出した伊達政宗をそこにいる全員が見た。周囲の視線が政宗に集中している。一瞬完全に気を取られたのだ。その隙を狙ってある男が動いた。勝頼に斬りかかったのだ。勝頼はその男が刀を振り抜く瞬間に霞のように己の残像を残し斬り捨てた。


「勝影流奥義、陽炎一閃」


 この技は上泉伊勢守が奥義と呼んでいて勝頼に修行を積んでいけばいつかは辿り着けるであろうと言っていた陰流奥義 『柳風舞桜』を改良した勝頼流の奥義だ。風で揺れる柳を敵に見立て、舞う桜の花びらのように美しく敵を倒す、いわゆるカウンター、後の先を取る陰流奥義『柳風舞桜』。足捌きと仕掛けるタイミングがポイントだ。勝頼はそれに残像を残す事を付け加えた。これによって敵は勝頼の幻の姿から視線が動かない。気がついた時には死んでいる。そうお前はもう………、というやつだ。


 皆の視線が勝頼に向いた。慌てて山県昌景が勝頼の横に来て敵に備える。勝頼は大声を上げる。


「義姫を捕らえよ!逃すな!」


 義姫はすでに駆け出し陣を抜けていた。ものすごいスピードで。



 勝頼は改めて座り直し、


「さて、政宗。本物の小次郎と義姫はどこだ?」


 勝頼が斬り捨てたのは伊達小次郎だった者?だったのです。勝頼が感じた違和感、それは政宗が現れてから始まった家族の会話です。発言を許可したわけではないのに、勝手に話始めた小次郎と義姫。場の雰囲気が変わり注目されるように人々が誘導され、しかも家族内の罵り合いで人の興味を引くような内容でした。勝頼はそれが家族芝居に感じたのです。しかもあらかじめ相談されていたような。政宗は、


「何を申す?俺にはわからん。さっきから芝居だの本物はどこだの、何を言っているのか?賊を勝頼殿が斬ったようだが、俺の知らん事だ」


 山県昌景の指示で、勝頼が斬り捨てた伊達小次郎だった者は変装だとわかりました。以前どこかで同じような事がありましたね。


 政宗はシラをきっています。ここまできてシラをきり続けるのは大したものです。ただの阿呆か智慧者か、それとも図々しいだけか。旗本が政宗を抑え付け地面に這いつくばらせています。勝頼はそれを確認してから改めて周囲を見渡します。お市が後ろの方で桃に守られながら震えているのが見えました。春の嫁ぎ先に決まっていた伊達小次郎が謀反を起こし斬られたのです。頭のいいお市はこの伊達小次郎が偽物だとわかっていましたが、心配なのは本物の方です。もう殺されているのでは、と考え震えているのです。


 小次郎と義姫は道案内として先を進んでいました。途中で勝頼がのんびり進んでいたこともあり勝頼よりも先行して米沢城へ到着しています。先日の軍議にもこの2人は出席していました。その時には入れ替わっていたようには感じませんでした。さて、どこで入れ替わったのでしょう?政宗にどこからかが芝居だ?と聞いたのはそれがわからなかったからです。そして、この変装のうまさ、例の風魔の生き残りの可能性もあります。まだ決めつけるのは早計ですが。風魔の行き先はこの伊達家か、もしくは当初の予想通りあの男のところか。


「政宗、ここまできてシラをきり通す覚悟はあっぱれだが許すわけにはいかん。お前が組んだ相手が風魔ならなおさらだ」


「風魔?はて、それは何か菓子の名前か何かですかな?」


 信勝は後ろの方で聞いていて、菓子のわけないだろうと怒っています。それを本多忠勝が肩を抑えてなだめます。


「その菓子を余に食わせようとしたという事か?あまり美味くはないようだ」


「それは失礼仕った。次回はもっと美味い物をお届けしたいものです」


「次回?」


「勝頼殿は小次郎の行方を案じているご様子。その後ろにいる女子はどなたかは存ぜぬが噂のお市殿なのか?勝頼殿は綺麗な女子には目がないという噂だが誠のようだ。小次郎と縁を結ぶのなら行方をお教えしても良いと申しておるのだ」


 女好きなのは認めよう。子孫を増やすのもお屋形の務めなのだよ。ここは挑発には乗らない。


「ここで命乞いか?伊達政宗も大したことはないな」


「笑止。生きていればこそ見返す機会が訪れるもの。死んでしまっては恨むことしかできん」


 生への執着なのか?確かに何かしなくては生き残れない状況ではあったが。




 政宗は流石にここまでかと思いながらもがこうとしている。全てはあの使者が来た事から始まったのだ。



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