政宗起動
その後、どんどん武田の兵が増えていき米沢城を取り囲んでしまった。周辺の城からの支援はもう望めない。周辺でも馬場、穴山、佐竹、結城の兵が個別撃破で城を落としていっている。
7日が過ぎた頃、特殊部隊ゼットの錠が現れた。
「お屋形様、城で動きがありました。伊達輝宗と政宗が言い争いになり政宗が輝宗を幽閉しました」
「親子ゲンカか。どっちかが和解でどっちかが徹底抗戦てとこかな?」
「そんなところです。どっちが和解側だと思います?」
「そりゃ普通に考えたら輝宗だろう。若い政宗は血気盛んだろうし」
「お屋形様。俺もそう思ったのですが逆でした。あれ?って感じです。あ、あれ?で思い出しました。姉ちゃんから伝言で、アレ使っちゃうよー!だそうです」
「そうか、逆かって何だって!アレ使うの!」
徳が熱気球を使うと言ってきたのです。それだけ追い込まれているという事です。もう決着はついたのだろうか?信忠は無事なのか?肝心なところの情報は届いていません。それだけ余力がないのでしょう。
こちら側に話を戻します。逆、つまり輝宗が徹底抗戦派で政宗が和解派、なんかおかしいです。
しばらくすると米沢城の城門が空き、中から白装束の武士が槍の先に白い布を付けて上下に動かしながら歩いて出てきました。一人きりです。小次郎がそれをみて、
「兄者、どういうつもりだ?」
と叫びます。義姫は震えながらそんな訳はない、あの政宗殿が降参などとあり得ないとブツブツつぶやいています。勝頼は山県に、
「山県、どう思う?」
「降参すると見せかけてお屋形様を狙うものと考えます」
「余もそう思う。だが、ああやって出てきたのを無視するわけにもいくまい」
「まずはそれがしが検分いたす。それで如何?」
「気をつけろよ」
そう言ってまずは山県昌景がこちらの陣に向かってくる伊達政宗の前に出ました。周囲には鉄砲隊が政宗を狙っています。山県の周りにも護衛の兵が張り付いています。政宗は大声で叫びます。
「伊達政宗でござる。武田勝頼様にお目にかかりたく城を出て参った。ご覧の通り戦う意志はない。お取り次ぎをお願い申す」
政宗は両手を上げてバンザイのポーズでおどけます。山県はいつでも冷静です。
「それがしは山県昌景でござる。お屋形様の前に用件をお聞かせ願いたい」
こいつが山県昌景か。この野郎のおかげで酷い目にあった。からかってやろう。
「山県殿でござるか。先日の戦いは見事であった。だが、そなたでは役不足、勝頼公にお目にかかりたい」
「そうでござるか。だがこれもお役目、このままお通しするわけにはいきませぬ」
山県は動じない。経験値では山県の方が上なのです。
「陪臣はすっこんでおれ。伊達家当主として武田の当主と話がしたい!」
「ほう、面白い事を言う。戦に負けて逃げまどい、籠城している当主がでござるか?」
「何を申す!あれは引き上げてやったのだ。武田と戦をする気は俺にはない。そもそも佐竹との戦にしゃしゃり出てきたのは武田ではないか。余計な事をしおって、正々堂々と言う言葉を知らんのか!」
正々堂々ねえ。白装束は覚悟の表れなのか見せかけか?山県は部下に指示を出します。
「となれば仕方あるまい。おい!」
昌景の周りにいた兵が政宗を囲みました。政宗は抵抗しようとしましたが直ぐに諦めます。槍を取り上げた後、隅々まで荷物検査だ。そうすると出てくる出てくる。懐にあった小刀を取り上げ、足にも小刀が隠されていた。足袋の裏にもだ。そして全て取り上げて縄で縛りあげてから勝頼の前へ連れていきました。
「ほう、なかなか見事な姿だな、政宗殿。おい、猿轡を外してやれ!」
勝頼は念のために5mほど距離を取って座った。政宗は不気味なほど笑顔だ。
「伊達政宗でござる。やっと会えましたな。それと随分と用心をしておられるが、勝頼公は臆病者でござるか?」
やっぱりこいつ面白い。でもなあ。
「いや、そうではないが。お主のようなケダモノと話す時には一応用心はしないとな。白装束で出てきた割にはあちこちに刃物を隠していたようだが?」
「自害するためでござる。他意はござらん」
足袋の裏にまで隠しておいてよく言うよ。履物に凹みがあってすっぽりはまるように細工までして。ああやれば足が痛くないのかって俺はやらないけど。まあここは冷静に、
「それを信じろと?」
「信じていただけなければこの政宗の器量がそこまでのこと。で、縄を解いてはいただけませんか?」
「解いてどうする?」
その時、小次郎が叫んだ。
「武田様、なりませぬ。兄は武田様と差し違えるつもりです」
その声に政宗は首を向けてニヤッと笑い、
「小次郎、お前いたのか。蘆名はどうした?」
「知らぬふりですか?そのくらいの情報はお持ちでしょうに」
「武田殿の忍びの警戒がきつくてな、大した情報は持っていない。ん、母上、なぜここに?」
政宗は義姫を見つけました。政宗は母を嫌ってはいません。嫌っているのは義姫の方なのです。
「政宗、あなたは負けたのです。このようなおかしな真似はせずに潔くなさい」
「これは母上。それがしは潔く城を出て参ったと言うのにそのようなお言葉とは。そんなに小次郎が可愛いのですか?」
「あなたのしてきた事は不快なことばかりです。武田様、この者の言葉に耳をかたむけてはいけません」
「義姫殿、余に意見を言うのか?」
勝頼はムッとして答えました。そもそも発言を許していません。小次郎にもです。勝頼は怒ったふりをしながら考えています。あれ?なんかへんじゃね?




