そのまた裏
織田信忠は持ってこられた首を見て冷静に答えます。
「これは蒲生ではない。鎧兜で偽装した影武者だ。本物の蒲生はまだどこかにいるぞ!」
曽根は信豊の顔を見ます。信豊はこれだったのか、気になっていたのは!と思い指示を出そうとしたその時、本陣右翼から敵兵が突っ込んできました。二百の兵がまとまって突っ込んできます。前側の兵が倒れてもそれを気にせずひたすらに前進をしてきています。あっというまに右側に守備していた小幡信真の隊を打ち破り本陣へと突入してきました。
「信忠ー!」
突っ込んできた集団の真ん中に蒲生氏郷がいました。そしてそのまま信忠目掛けて進もうとすると信忠の旗本が間に割り込みます。勢いが削がれたその時、
「忠三郎!覚悟ー!」
鬼のような形相の丹羽長秀が敵の後ろから襲い掛かります。丹羽長秀は後方から見ていて氏郷が入れ替わったのを見ていたのです。そしてやっと追いつきました。それを見た信豊は、
「信忠殿、こちらへ」
と自分の後ろに下がらせ、みれいから手渡された拳銃を両手に持って待ち構えます。近づいたら撃つ、と。
そこにさらに佐久間が追いついてきました。そして丹羽長秀隊に加わり蒲生隊に攻撃を仕掛けます。氏郷の兵は怯みません。氏郷の後ろ側の兵が必死に丹羽、佐久間の攻撃を受け止め、前側の兵は氏郷が進めるように進路を開けようとします。死ぬのが怖くないキリシタン兵は倒しても倒しても立ち上がるゾンビのようです。
とはいえ信忠は後ろへ下がってしまいました。届くのか、届かせねば!氏郷は甲賀から貰った焙烙玉を懐から出します。そして自分の周囲にスペースが空いた瞬間、野球のピッチャーが遠投をするように焙烙玉を投げました。信忠へ向かって焙烙玉が放物線を描いていきます。これで倒す、と思いきやそれを、
「ドッカーン!」
宙に舞った焙烙玉をチーム戊のあいがボーガンで撃ち抜き、焙烙玉は空中で爆発しました。小幡の兵は自分達の後ろ側、それも信豊、信忠がいる方向で音がしたので慌てて振り返ってしまいます。その隙を氏郷以下数十名は逃しませんでした。小幡の兵を相手にせず駆け出します。
もう前方には数えるほどしか兵がいません。戻る機を逃していた曽根が槍を持ち信忠の前に護衛に立ちます。チーム戊の面々が銃やボーガンを持って氏郷目掛け撃ちまくります。氏郷を庇って兵がバタバタ倒れますが、氏郷の勢いは止まりません。氏郷は再び焙烙玉を懐から出しました。この距離ではいくらゼットの面々でも射抜くのは不可能です。
「死ねー!信忠!、ウワッ!!」
焙烙玉を投げようとした瞬間、氏郷は前のめりに倒れました。そしてそのまま爆発します。焙烙玉が地面と腹の間で破裂したのです。誰かが氏郷に後ろからタックルして倒した拍子に焙烙玉が破裂しました。何が起きたかとよく見ると氏郷の上に鎧武者が乗っかっていました。佐久間勝之です。これで終わったかと一瞬気を抜いた瞬間、残りのキリシタン兵が信忠目掛けて斬りかかってきます。慌てて信豊、チーム戊の面々が銃やボーガンで応戦しますが、敵が怯みません。息がある限り攻撃をやめないのです。銃や矢で撃たれても即死しなければ攻撃ができてしまいます。敵兵があいに向かって刀を振り上げました。そこに、後ろから丹羽長秀の部隊が追いつきました。
「息の根を止めるのだ。こいつらは死ぬまで攻撃をしてくる。全員必ず仕留めよ!」
丹羽長秀の声が響き渡ります。そして本陣へ斬り込んできた敵兵は全員死に絶えました。
「まだ戦は終わっていない。気を引き締めよ!動けるものは配置につけ。怪我人は手当を!」
信豊はそう叫んで本陣の自分の位置で腰掛けます。そしてチーム戊に偵察を命じます。
「まだ何かあるかも知れん。周囲に気を配れ、頼むぞ!」
さて、中央部では武藤喜兵衛目掛けて進んでくる敵に喜兵衛が手こずっています。とにかくしつこいのです。敵は作戦も何もなく、ただ誰かが攻撃して隙ができればそこを通り抜けて喜兵衛に近づきます。すでに銃の弾は無くなりました。源三郎や旗本達が身を呈して喜兵衛を守っています。当然、本陣で何が起きているかなどわかりません。それどころでは無いのです。
チーム丙と丁の面々もいつの間にか近くに来ていて喜兵衛を守っています。側面はどうなったのか?わかりませんがきっと大丈夫なのでしょう。この時はそう思っていました。後でこの2チームはしこたま怒られます。
戦いは長引いています。兵も疲れています。なのに敵の体力が落ちません。ここを攻めてきているのは魔神一号機でビビった奴らなのですが、蒲生氏郷に敵討ちを鼓舞されて普段以上の力を出しています。俗に言うモードに入った状態、ラノベ風にいうとバフがかかっています。徐々に人数で勝る織田、武田軍の方が押されてきました。と、そこに地響きのような音がしてきます。
「とのーーーーーー!」
先頭を駆けてくるのは滝川一益、その後ろを兵が追いかけてきます。その後ろに菅原が一万の兵を連れてきたのです。
滝川一益は織田信忠の前で号泣しています。
「殿はそれがしを見捨てなんだ、助けに来てくれた。そのご恩返しがしたくて………」
「わかった。わかったから泣くな滝川。こちらこそ大義であった。お主のおかげで助かった」
「勿体ないお言葉で………」
滝川はまた泣いている。
喜兵衛は菅原と酒を酌み交わしている。
「菅原殿、助かり申した。菅原殿が来ていなければどうなっていたか」
「途中で明智左馬助の兵に会いました。戦う意思がなかったので放っておきましたが」
「徳様は一体何をしたのです?現場を通られたのでしょう。教えてくだされ」
「喜兵衛はいるか?」
信豊が信平を連れて現れました。そして一言、
「頭丸めろ!」
「へ?」
翌朝武藤喜兵衛は坊主になっていました。本陣が急襲され丹羽長秀の活躍で命拾いしたのですが、それは本来あってはならない事です。呑気に酒を呑んでいた喜兵衛を見て信豊がキレたのです。そしてそれは、特殊部隊ゼットの面々への再教育に繋がっていきました。




