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未来を知った武田勝頼は何を思う  作者: Kくぼ


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敵は武藤喜兵衛

 源三郎は大砲、中砲隊を指揮し、ご挨拶がわりに全砲門から一発づつ砲弾を発射しました。玉は通常弾と呼ばれるただの鉄球です。そして続けて次の砲弾を用意させています。


「どうだ、狙えそうか?」


「今ので大体あたりが付きました。いけると思います」


「わかった。次は鉄の盾を狙え!」


 最初の砲弾は敵の鉄盾を越えて敵陣へ着弾しました。土煙が上がったのが見えます。ですが、敵の動きが見えません。


「敵の様子は探れないか?」


 源三郎は横にいる矢沢頼康に尋ねます。ダメ元で。


「鉄盾が高く、奥の様子は見れません。ですが殿の読み通り敵は散らばっているようです。大砲の効果はほとんど無さそうです」


「そうだな。ただの鉄の球にしたのはそれもあっての事だ。佐久間殿、丹羽殿、次に鉄の盾を崩します。倒れると同時にお願いします」


 源三郎は佐久間勝之を見て話しました。佐久間勝之は佐々成政の娘婿に当たります。行方が知れない成政に代わって佐々家を継ぎ盛り上げて行きたいと考えています。それには手柄が必要だ。ここで成果を上げねばと気負っているのです。それが表情に現われています。


「武藤殿、お任せを。丹羽様、この佐久間。父、成政に代わり先鋒を務めたくお願い申す」


「佐久間、気負うな。良いか、引き際だ。武藤喜兵衛を信じよ!」


「わかっておりまする」


 本当にわかっているのか?そうこうしているうちに大砲の準備ができた。源三郎は狙いを鉄の盾に絞らせる。


「打て!打ったら次弾装填し、敵後方へ援護射撃。その後直ぐ様離脱せよ!」


 源三郎の掛け声に合わせて大砲と中砲が発射されます。ドーンという音とともに砲弾が発射され、先程とは違う放物線を描き、蒲生軍前衛が持っている鉄盾を直撃しました。昨日の手筒隊からの砲弾とは勢いが違います。打ち出された鉄球は鉄盾を持っている兵を押しつぶすように蒲生軍側に倒れていきました。


 それと同時に佐久間隊、丹羽隊、そして矢沢率いる武藤隊が敵陣に突っ込んでいきます。鉄盾が倒れて蒲生軍の鉄砲隊も乱れており、鉄砲を撃つ余裕がありません。その隙をついて突っ込んでいきます。


「援護射撃開始!!」


 源三郎の指示で急速装填した次弾を今度は後方へ発射します。おそらくは散らばっているであろう敵兵の牽制です。そして指示通り砲撃部隊は源三郎とともに下がっていきました。




 蒲生軍ではいきなり大砲の砲撃を受けましたが、兵を散らばせていたために運が悪い数名の犠牲ですみました。そうはいっても上から鉄球が降ってきて地面に落ちた衝撃はかなりの物で、怪我はしないものの近くにいた兵は震えています。氏郷は


「やはりいきなり打ってきたか。この後突っ込んでくるぞ、備えはどうか?」


「敵が来れば鉄盾の隙間から鉄砲を打ちかけます。すでに準備万端です」


「敵は武藤喜兵衛だ、決して油断はするな。機を見てわしも出る」


 ところが敵は兵でなく鉄盾を狙ってきました。高さのある鉄盾がこちら側に倒れた事により鉄砲隊が犠牲になってしまいます。そして敵が突っ込んでくるのが見えました。


「敵が来るぞ、鉄砲を撃てる者は撃て!兵は敵に突っ込め。そうすれば大砲は打てない!」


 そう指示して散らばっていた兵が前方に集まろうとした時、その周囲に再び砲弾が着弾しました。兵は驚いてしまい、大勢の兵が前方へ進めません。そこへ織田・武田軍が突っ込んできます。


「我こそは佐久間勝之なり、蒲生氏郷はどこだー!」


 大声をあげながら槍を振るう佐久間と、それを守りながら戦おうとする兵達が鉄盾を越えてきました。その後も続々と兵が蒲生陣へ侵入してきます。氏郷はそれを見て、


「少し思惑とは違うがこの展開ならば。行くぞ!」




 丹羽隊、矢沢率いる武藤隊も敵陣で暴れています。ただ敵が分散していて一人倒すと周りに敵がいないという不思議な戦場になっています。そして敵陣に入り込んだのは良かったのですが、敵の鉄砲隊が息を吹き返し、周りに味方兵がいないのをいい事に鉄砲を撃ってきたのです。


「殿、危ない!」


 佐久間の兵が佐久間を庇って鉄砲に撃たれます。その時、後方から敵が現れました。蒲生氏郷です。佐久間は熱くなり、


「蒲生氏郷だ!皆の者、続けー!」


 と突っ込んでいきます。丹羽長秀は無茶だと引き止めようとしましたが間に合いません。ここでは敵兵のほうが多く、状況が不利になってきました。計画ではこの辺りで引き上げる事になっています。丹羽は矢沢を見ました。矢沢は引き上げようと合図をしています。


「佐久間をここで見捨てるのか。それでは成政が浮かばれん」


 丹羽長秀は矢沢に礼をした後、佐久間を追いました。なんとか佐久間を引き戻そうと言うのです。矢沢はそれを見て目頭が熱くなりましたが、命令を守るべく引き上げにかかりました。丹羽様、ご無事でと願いつつ。


 蒲生氏郷は、佐久間の相手に兵を残して左右に兵を散らばせました。こんな奴らを相手にしている場合ではないのです。


「全員駆け抜けよ!雑魚は相手にするな。狙いは武藤喜兵衛、ただ一人!」


 氏郷の掛け声とともに兵が全力疾走で走り出しました。それを見て散らばっていた兵も走り出します。陣形などありません。一部を除き七千もの兵が各々が勝手に武藤喜兵衛を求めて進んでいきます。

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