決戦へ
翌朝、両陣営が動き出しました。昨晩、申し合わせた訳でもないのに、蒲生氏郷が仕掛けた夜襲が成功した後は何も起きませんでした。双方の物見は必死でしたが。
結局明智左馬助は音沙汰無しです。氏郷は左馬助がもう来ない前提で策を考えていましたが、実際に来ないのはショックでした。。少しは期待してしまうのが人間ですので。自分は左馬助にいいように扱われているのか、ならばここで見返してやる!と両頬を叩き改めて気合を入れ直します。
蒲生軍は前衛に昨日敵の砲撃を防いだ鉄盾隊を置き、その陰に鉄砲隊を配置しました。こうすれば敵の砲撃を弾き返せる事は昨夜実証済みです。問題は射程距離が長い大砲対策です。大砲は鉄盾を越えてきます。氏郷は案を話し、陣形を指図する時に部下から反論されましたが押し切りました。
「鉄砲隊は鉄盾で守れる。その後ろは兵を集めずに分散させておけ」
「それでは陣が組めませぬ」
「この戦は陣が必要な戦いではない。敵の砲撃は爆発と同時にマキビシをばら撒きこちらの行動が阻害されてしまう。兵がまとまっていない方がいい」
「前例がございませぬ。隊が乱れては勝てませぬ」
「敵の攻撃には前例がない。型にはまっていればいいというものではない」
そして陣形なしの適当に好きなところにいる配置?になっています。
そしてその指示に従って鉄盾の後ろでは、各々が好き勝手に場所を決めています。指示は集まりすぎない事、味方との距離を取る事でした。そして各々が一騎当千の如く敵を打ち破る事。そして狙うは武藤喜兵衛の首一つ。
戦の目的は織田信忠の首だったのですが、昨夜変更になりました。皆の仇、武藤喜兵衛の首に。
織田・武田陣営では昨夜軍議が行われました。源三郎が昨夜の手筒隊の攻撃が敵に無効だった事を強調しています。
「手筒隊一組に護衛を10人付けて敵陣内で使いたい。敵の鉄盾で防がれては意味がなく、手前で爆発しては我が軍が進軍できなくなります」
武藤喜兵衛は黙ってそれを聞いています。丹羽長秀は、
「殿、忠三郎の首を取るには滝川の到着を待つべきでは。敵が仕掛けてきたら武田殿の大砲を使い、我らは受けに回る方が確実と考えまする」
それを聞いた織田信忠は、
「滝川を助けに来た我らが滝川に助けられるというのか。長秀は冷静だな、余には考えもつかん策だ」
と褒めているのかわからない受け答えをしています。言葉の通り信忠的には無い案なのでしょう。
信平は黙って聞いています。攻めの源三郎、受けの長秀、色々な考えがあるものだなと思いながら。自分だったらどうするか?いい勉強になっています。徳と真田幸村はどこかへ行ってしまいました。気付くと井伊直政もいません。
「敵の夜襲は見事だった。丹羽殿とて先程襲われて命を落とすところであったのに、身を殺し、主君の安全を優先するその心、感服致す。だが、それでは信忠殿の格好がつくまい。やられっぱなしというわけにもいかんしな。喜兵衛、どうする?」
信豊はあくまでも喜兵衛に聞く。その上で決めるのがこのコンビのやり方だ。喜兵衛は、
「魔神一号機でやり込め、敵はかなりの損害を出した。それで勝負がつくと思っていたが、先程の夜襲は敵ながらあっぱれでござった。敵は大砲の存在を知り、手筒隊や桜花散撃の効果も身に染みて知っている。知ったからといって防げるものでは無いが、対策は打ってくると見たほうがいい。それだけの敵だ、蒲生氏郷は」
皆黙って聞いている。具体的にどうするかがわからない。
「源三郎、お前が蒲生だったら大砲はどう防ぐ?」
「遠くから飛んでくる砲弾は防ぎようがありません。空を見ていて逃げるくらいしかありません」
「その通りだ。防ぐ事はできない。だが、被害を減らす事は出来る」
「父上、着弾点に人がいなければいいという事ですか?」
「そうだ。わしなら兵をばらけておき、敵陣へ突っ込む。そうすれば被害は最小限となる。敵陣へ入ってしまえば大砲は使えないし、後は力の勝負となる。おそらく機を見てなりふり構わず突進してくる。問題はその機だ。そこを制したも者が勝者となる」
そうして喜兵衛は様々なパターンを皆で絞り出し、細かい指示をしていきました。
物見から報告がきます。
「敵は前面に高い鉄の盾を構えている部隊を置き、その後ろに鉄砲隊を配置した模様。こちらから仕掛けるのを待っているように見えます」
喜兵衛はそれを聞き、信豊に聞きました。昨夜取り決めたいくつかあるパターンからどれを選ぶかを。
「どれで行きますか?」
「敵は菅原達が向かってきている事を知らないから、こっちから仕掛けると思っている。兵糧の問題もあるからな。大砲を打った後、敵に突っ込むと敵の鉄砲隊が待ち構えていてこちらが崩れたところに一気にこちらの陣に突っ込んできてお前の首を取る」
「それではそれがしが死んでしまいます」
「それが敵の作戦ならそれに乗ってみるのも手だ。喜兵衛の首で勝てれば悪くはない」
「悪いです。ですがそれが確実かと。伝令を、作戦南で行く。準備を怠るな!」
作戦南、伝令を聞いた丹羽長秀は驚きました。それを選ぶとは、武田信豊はやはり怖い、と。ひょうきん者に見えるのはわざとなのだと理解したのです。




