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未来を知った武田勝頼は何を思う  作者: Kくぼ


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氏郷の作戦

 蒲生氏郷は、左馬助のところに定期的に連絡係を派遣して左馬助の到着タイミングを調べていました。いつ応援が到着するかで取るべき作戦が変わってくるのです。ところが、夜になって連絡係が帰ってこなくなりました。最後の連絡は海山堂を出て夜のうちに到着するというものでした。


「おかしい。何があったのだ?おい、10名、いや20名兵を出して左馬助殿の軍がどこにいるのか見てこい」


 まさか、左馬助が我らを見捨てたか?だが何のために?我らが全滅し、織田・武田を消耗させたところを叩いていいとこ取りをするつもりか?


 氏郷の脳裏を悪い予想が駆け巡ります。ここで左馬助がこないのは想定外でした。左馬助の到着予定になってもまだ誰も現れません。氏郷は頭を切り替えて自分達で戦う事を考え始めました。懸念はたくさんありますが、


 ・まだ爆発や幽霊の正体がわかっていない

  普通に考えれば何か奇術のような変わった事をした。とすると準備がいる筈だ。となると、この夜は準備にうってつけだ。


 ・我らは五千だが、捕まえた甲賀衆や丹波・丹後の兵を合わせれば八千にはなる。寄せ集めにやる気を出させるためにも夜中に成果が必要だ。


「精鋭部隊で夜襲を仕掛ける。敵の武器の秘密を探る」


 氏郷はすぐの蒲生軍から選りすぐりの兵を集めて行動を起こしました。


 氏郷の連絡係を殺したのは佐助でした。佐助は徳の熱気球からの攻撃を遠目に見ていたのです。あれはなんだと思いながらも小田原攻めでも不可思議な攻撃をしていた人達なので、興味深くかつ結果を見極めていました。これで明智軍は応援にはこれない、その事実を、応援の明智軍の状況を蒲生氏郷が知るのが遅れた方がいいと判断したのです。佐助は、喜兵衛からそういった判断は自分でするように指示されいました。それだけ佐助、そして双子の片割れ与助は信用されています。


 このやり方は上杉謙信が甚内にさせていたのと同じです。甚内の忘れ形見である佐助と与助に同じ事をさせているのは全くの偶然です。



 佐助は蒲生の連絡係が一人から大勢になったのを見て始末するのを諦めました。流石に危険が大きすぎます。ですが、こいつらが戻り氏郷が事態を知るのは早くて夜明け。戦には役立たないでしょう。熱気球は蒲生軍には何もせずに北へ消えて行きましたので、おそらく味方の軍と合流しているはずです。ならば、と佐助はこちらに向かっている菅原の方へと足を向けました。



 徳が織田・武田軍に現れた頃、すでに蒲生軍は夜襲の準備を終えていました。百名づつの5つの隊が夜の闇に溶け込んでいます。氏郷はそれ以外にも策を練っています。夜襲部隊が狙うのは敵の前衛、そこには佐々軍の佐久間勝之、武藤軍の矢沢頼康が夜襲を警戒して陣取っています。


「佐久間殿。仕掛けてくるならボチボチかと」


「物見を出しております。動けばすぐにわかります」


 佐久間は自信ありげだった。矢沢は与助を呼び周囲の警戒をさせていたが、範囲が広すぎて全方位は賄いきれず、海側を佐久間に任せていた。敵が進んでくるなら見つかりにくい山側だろうと。そしてその予想は当たり、蒲生軍の夜襲部隊が山間を進んでいるのを与助が見つけました。与助は合図の花火を上げます。


『ヒュー〜〜 ボン!』


 辺りがざわつき始めます。矢沢隊から200名の兵が花火の方向へ向かいました。佐久間は


「矢沢殿、今のは一体?」


「あれは敵の夜襲部隊が来たという合図です。うちの配下を山間に配置しておきましたので。ですが警戒を怠らないようにお願いします。夜襲部隊が一つとは限りません」


 矢沢頼康の予想は山側が本命で、海側はもしかしたら程度というものでしたが、実際は山間を進んでいた夜襲部隊は囮でした。合図で騒がしくなったのを機に海側に潜んでいた部隊が一気に佐久間隊に近づき鉄砲を放ちます。


 佐久間隊は不意を突かれ数名が死傷、そこに敵が斬り込んできました。狙いは鉄砲組でした。鉄砲を撃てなくしようというのか、散々荒らし回った後、佐久間隊が体制を整えた頃には夜襲部隊は引き上げています。そして別の夜襲部隊がその後ろに陣取っていた丹羽隊にも仕掛け、同じようにヒットアンドウェイで引き上げていきました。


 佐久間隊も丹羽隊も警戒をさらに厳重にし、見張りも増やしています。海側と違って山側は戦闘が続いています。蒲生軍は百名、矢沢隊は二百名と数では優っているのですが、山の上側にいる方が有利ということもあり、数の多い矢沢隊が苦戦しているのです。


 源三郎が戻ってきました。状況を聞いて、


「何かおかしい。夜襲の目的がはっきりしない」


「源三郎様、それがしも腑に落ちません。敵は佐久間隊の鉄砲組を狙ったようで、かなりやられています。それが狙いかとも思ったのですが」


「頼康、こういう時は敵の気持ちになって考えるのだ。お前ならどうする?」


「私なら………」


 矢沢頼康がそこまで話しした時に背後から銃声がしました。兵が源三郎に斬りかかろうとしていたのです。何事かと振り返ると兵が倒れていて、銃を持っている黒装束の女性が立っていました。


「か、影猫。すまん、助かった」


「源三郎様。どうやら夜襲に紛れて敵兵が潜り混んでいるようです。ご用心を」


 そういうと、影猫は闇に溶けるように消えて行きました。矢沢は影猫の事を知りません。


「源三郎様。今のは?」


「影猫。チーム丁のリーダーだよ。父上の秘蔵っ子だ。矢沢が佐助と与助を育てたように影猫は父上が育てたんだ。与助はどうした?」


「山にいます。そっちが本命かと」


「外したな。というより蒲生に裏をかかれたんだ。敵の狙いは信忠様か!」


 源三郎はここを矢沢に任せて再び本陣へ戻ります。ところが、蒲生の狙いはまだ他にもあったのです。



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