徳、襲来!
蒲生氏郷はもしもに備えてすぐに魚鱗の陣を組めるように兵を待機させていました。氏郷の指示であっという間に陣をしき、攻めかけてきた丹羽長秀隊に鉄砲を打ちかけ、弓矢を放ちます。よく訓練されているようで丹羽隊はいいようにやられています。
「一度下がるぞ!引けー!」
丹羽長秀の作戦は魔神一号機の爆発で敵が驚いている隙を突こうというものでした。ところが、蒲生軍に隙がなく待ち受けているところに突っ込んだ形になってしまいました。この策は武藤喜兵衛によるものですが、丹羽長秀の長年の経験により、それは絶妙なタイミングで仕掛けられ上手くいくように思えました。ところが、蒲生氏郷の備えがそれをうわまったのです。結局丹羽は引くしかありませんでした。
それを見た源三郎は手筒隊を用意し、攻撃を仕掛けます。手筒隊とは、大砲、中砲よりは射程距離も短く、威力も弱いですが、鉄砲よりも遠くまで拡散弾を飛ばせる手筒と呼ばれるバズーカ砲のような物を肩に担いで発射する部隊の事を言います。
「打てー!」
源三郎の掛け声で拡散弾が発射されました。ところが蒲生軍の鉄砲隊の前に現れた鉄盾隊が、その弾を弾き、拡散弾は盾の手前で炸裂しました。爆風で盾を持つ兵がよろけましたが、肝心の鉄くず手裏剣は盾に防がれてしまいました。この距離では盾の高さを越えて撃つことはできません。
「射程距離が足りない。大砲は下げてしまったし、今からでは準備する時間を与えてはくれまい」
源三郎のつぶやきに矢沢が答えます。
「チーム丁を使って空から仕掛けてはどうですか?」
「撃ち落とされるだけだ。背後からでも近づけられれば別だが」
飛行隊は山の上からしか飛び立てません。敵の背後をつけるように飛ぶには時間がかかりすぎますし、近くのこちら側の山から飛んでは敵に見つかってしまうでしょう。結局その後、武藤喜兵衛も前線に出て敵を崩そうとしましたが、日が落ちてしまい休戦となりました。敵地での夜戦は不利です。織田・武田軍は一時引き下がります。源三郎は、
「父上、明日は大砲を使いましょう。夜のうちに準備をしておけば敵を崩せます」
「うむ、仕方あるまい。蒲生め、実に良くやりおる。さすがは織田信長公が見込んだ男だ」
そこに丹羽長秀が現れました。
「武藤殿、源三郎。申し訳ない、せっかくの好機を活かしきれなかった」
「丹羽殿。いや、わしが見ても丹羽殿の出た時機は完璧だった。敵が悪かったというべきか、備えがされていようとは」
「忠三郎はそういう男だ。抜け目がない。それはそうと、明日には敵の増援が来る頃だ。もう魔神一号機とやらはないのか?」
「丹羽殿。あれは一機のみでござる。それに一度見られておるので前のようにはいかないであろう。それにあまり兵器だけに期待するのは良くない」
「いかにも。だが、何かないと数で負けることになる」
丹羽長秀の言う通り、明日明智左馬助が戻ってくれば圧倒的に不利になります。その時、喜兵衛の背後で気配がしました。
「戻ったか、影猫」
喜兵衛は気配だけで誰だか見抜きました。影猫というのは特殊部隊ゼットのチーム丁のリーダーです。東北にいる勝頼へ文を持って行っていて戦場から離れていました。
「ただいま戻りました。お屋形様からの文にございます。それと、」
「なんだ、申してみよ」
「明智左馬助は来ません」
「なぜだ?何があった?」
影猫はここに現れる途中で得た情報を話し始めます。皆が驚く中、喜兵衛の笑い声が響きます。
「さすがは我が師匠。美味しいところを持っていかれる」
世界初の熱気球に乗り、松坂城上空を越えて北上する徳達は、ゼンマイブースターを使用し、とにかくひたすら使用しまくって明智左馬助の軍に追いつきました。この気球に配備されているゼンマイブースターは、再度巻き上げる事により何回も使用できる優れものです。ただし、巻き上げには専用の治具を使っても相当の腕力を使います。
井伊直政はもうヘロヘロでした。巻いては開放し巻いては開放しの繰り返しです。最初は面白がってやっていましたが途中から腕に乳酸が溜まりまくっています。源二郎は、隅っこに座り込んで加速して揺れる気球に酔っています。
信平は元気に下を見ていました。皆がだらしないので偵察を自らが行なっています。というより楽しいのです。この戦が終われば武田の姓を離れ関東の一大名に下ります。今を、この時間を無駄にしたくないという想いにかられています。そして敵軍に追いついた事を皆に知らせます。徳は立ち上がり
「追いついただわさ。科学忍法 火龍降臨改改改の出番だわさ」
と言って周りを見ますが、直政はへばって座り込んでいて、源二郎はうずくまっています。徳は呆れ顔で、
「しっかりしなさい。特に源二郎殿。あんたにこれを見せるために連れてきたのですよ。立て、立つんだ源二郎!」
「徳様、なんでこんなに揺れるのですか?ああ、気持ち悪い」
これが真田幸村ねえ?三雄殿の時代と歴史が違うとはいえこんなに頼りないのかしら。そうだ、あたいが鍛えればいいのよ!
「かなの仇、ここで晴らす。源二郎殿、これを持って。いいから持って」
徳は無理やり源二郎を立たせます。なにかのレバーを源二郎に持たせました。徳は下を見て休んでいた明智の進軍が始まったのを確認し、熱気球を敵の将と思われる上空に移動させました。
「風向きは、こっちね。ちょっと移動、そう、そのくらいかな。行くわよ源二郎殿。それを思いっきり引いて!」
源二郎は徳に言われるまま訳もわからずレバーを引きました。何か下の方で音がします。徳が叫びます。
「科学忍法 火龍降臨改改改 投下!」




