魔神現る
5人揃ってなんとか、というのは昔勝頼がチーム甲の5人に変身やら5色の衣装やらを考えていて、徳と喜兵衛に目立ってどうする!と却下されたという事がありました。徳は自分が目立ちたい方なので却下したのです。喜兵衛は却下はしたものの面白いとは思っていて何か機会があれば実現してみたいと思っていたのです。
チーム戊こと魔神組が操作している大きな木箱、それはコントローラー兼発信機です。以前、勝頼が中学三年までの教科書を写し終わった時に軍師である三雄が、
「これからは教科書より専門書の方がいいな。欲しいのはあるか?」
と勝頼に聞いた時のリクエスト、その一つが無線に関する情報でした。海と空は徳が得意としています。ならばと喜兵衛が取り組んだのは陸でした。すでに電気は水車から蓄電池を作りモーターボートにも使用されています。ガソリンエンジンも実用化されています。そして喜兵衛が作ったものはそれらの技術を応用してできた魔神一号機と呼ばれている世界初の大型ラジコン自動車でした。
チーム戊の女性陣は木箱のスイッチを使って魔神一号機を操作しています。木箱にも車輪は付いていて移動できるようになっています。
「テストの時はもっと小さかったから簡単だったけど、これはなかなかしんどい」
チーム戊のりかがぼやいています。それを聞いたリーダーのあいが答えます。
「あれじゃ小さすぎてね。実戦の距離では電波が届かないのよ。このくらいないと遠くまでの出力が足らないから」
「わかってはいるけど、届かなくなったらこれごと移動でしょ。これはなかなか大変」
源三郎はなんで5人も必要なのか?と思いながら女性陣の会話を聞いています。喜兵衛はじっと魔神一号機を見ています。
「父上、あれは……… 」
「煩い、黙って見ておれ。いや、見てる場合ではないであろう。引けば押せだぞ、お前は準備しておけ!」
え!この後押すの?なんで?聞きたくても聞けない源三郎は佐久間のところへ戻り再出撃の準備に入りました。するとそこにはすでに丹羽長秀が待っていました。
「遅いぞ、源三郎。何をしている?」
「丹羽様、先程はお見事でございました。それでここへは何を?も、もしや」
「そのもしやだ。遅いと置いて行くぞ」
甲賀衆は織田・武田軍が引いた後現れた謎の物体を見て足を止めました。波多野秀治も何が起きたのかと前に出てきました。何かがゆっくりとこっちに向かって来ています。
「やはりこちらへ向かって動いておる。どうなっておるのだ、あれは?」
「車輪のようなものがついておる。あれは荷車か?」
「だが、誰も押しても引いてもいないぞ。無人だ」
「まさか幽霊が押してる荷車なのか」
「馬鹿を申すな。まだ昼間だ」
「ではどうやって動いているのだ。おい、どんどん近づいてくるぞ!」
甲賀衆の手前1mのところでその荷車は突然停止しました。波多野秀治は配下の者に無理を言います。
「あれを調べて参れ!」
「殿、それは流石に……… 」
「なんだ、怖いのか?」
配下の兵は尻込みしています。さっきの爆発のショックもありびびっていた時に幽霊荷車の登場です。尻込みもするでしょう。この無人荷車は、近くで見ると結構大きく高さは身の丈程、横も1間はあります。波多野は兵が尻込みをしているのを叱責しますが、その隙に甲賀衆の何人かが明らかに嫌そうに荷車に近づいていきます。
「コンコン、入ってますか?」
甲賀衆が恐る恐る表面を小突いている。中に人がいるのではないかと考えたようだ。だが、返事はない。
それを見た他の兵も荷車を囲み出した。皆がかってに触り出す。なんともないとわかると波多野も兵に
「お前達も行け。甲賀衆に負けるな!」
とよくわからない対抗心を出して兵を煽る。結局荷車の周りは兵だらけになりましたが何も起きません。ただの荷車のようです。波多野は、
「結局なんだったんだ、この荷車は?」
と呟きながら荷車の近くに主だった者を集めるように指示しました。この荷車に虚を突かれ戦機を逃してしまったようだ。作戦の立て直しだ、と。
蒲生氏郷はそんな事が起きているとは知らず、少しづつ前進をしていた。その時前方で大爆発が起こった。
「動かなくなってしまったわよ」
「電波があそこまでしか届かなかったのね。チーム戊、全員移動よ!」
どうやら魔神一号機が前に進んだために電波が届かなくなったようだ。この魔神一号機はいわゆるラジオコントロール、通称ラジコンで動かしている。電波が届かなくなったらただの箱に過ぎない。リーダーあいの掛け声とともに、ひなた、りか、みれい、りこはコントローラー兼発信機を運び始める。一応車輪がついてはいるが結構重い。
「5人いればなんとかなるわね。ねえ、リーダー。私達が5人組になったのって運ぶためじゃないわよね?」
「やだねー、ひなた。そんなわけないでしょ。殿に聞いたところお屋形様が昔5人揃って!とか言ってたのを覚えていて5人にしたそうよ。徳様もいつかはやりたいって言ってたそうなのよ。私には意味はわからないけど」
「徳様かあ、どんなお方なのかしら。みんな怖いっていうけど」
「武田で一番偉いそうよ」
「一番はお屋形様でしょう。ってぼちぼち電波届くみたい。ねえ、あれ見て!中を開けようとしてる!」
あいは振り返って喜兵衛を見た。やっちまえのサインを出している。
「やれってさ!行くよ、爆破!」
魔神一号機の中は火薬でいっぱいだった。それに遠隔で発火させたのだ。
上手く行ったようだ、行くぞ源三郎!遅れるなよ。丹羽長秀は押しに移った。




