表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
未来を知った武田勝頼は何を思う  作者: Kくぼ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

259/471

武藤喜兵衛の陰謀

 黒い煙は瞬く間に広がりました。それを吸い込んだ人は咳き込み、目から涙を流し苦しみ始めました。これは真田信綱が川中島で使用した煙幕油の改良版で、焙烙煙幕玉と呼ばれるアイテムです。寺の屋根に潜んでいた佐助が焙烙煙幕玉をタイミングよく投げ入れました。矢沢は待ってましたと素早く離脱します。寺から飛び出ると佐助が用意していた馬に飛び乗り一気に自陣へと戻っていきました。


「ゴホ、ゴホって、な、何も見えん」


「な、何が起きた?」


 寺にいた全員が苦しみから逃れた頃、伝令が飛び込んできました。


「申し上げます。敵の部隊がこちらに向かって来ております」


 それを聞いた波多野は、


「小癪な。丹波、丹後の衆。行くぞ!」


 と言ってよろけながら寺を出ていきました。氏郷は伝令に、


「詳細を細かく伝えよ、物見の数を増やせ!」


 と指示して再び考え始めます。使者の目的、そして敵の動き、腑に落ちないのです。どう見ても撹乱戦法に思えますがそれで勝てるのか?ただ足掻いているだけなのか?なんにせよ情報が足りません。氏郷も寺を出て陣へ戻りました。




 馬に乗り自陣へ戻る途中、矢沢は味方の軍と出会います。丹羽長秀の隊でした。


「丹羽様。お役目お疲れ様でございます。合図をお見逃しなきようお願いいたします」


「わかっておる。しかしこれで上手くいくのか?」


「殿を信じていただければ。万が一があったとしても信忠様は真田家がお守りいたします。では」


 矢沢は再び駆け抜けていきました。丹羽長秀は武藤喜兵衛の策に乗る事にしたのです。川の堰を見破ったのは見事でした。それにこのまま何もしないのでは負けるだけです。


「正面の隊に仕掛けるぞ。合図を見逃すな!かかれー!」


 丹羽隊1000名全員が敵陣に突っ込んでいきました。そこは丹波の国衆の隊でしたが、主だった将が寺から戻る途中で体制が整えられていませんでした。突っ込んでくる敵を見つけ慌てて準備したものの一気に崩されてしまいます。丹羽隊は好き勝手に暴れていましたが空に緑の煙が登っているのを見て、


「合図だ。退却!」


 逃げるように織田・武田陣に戻っていきます。素晴らしい統制でした。寺から戻った波多野秀治は死傷者多数の陣へ戻り呆然としています。


「ふざけおって!目にもの見せてくれる。皆の者、体制を立て直せ、敵を追うぞ!」


 丹波、丹後の国衆が決起します。犠牲は100名ほどでしたがプライドが許しません。氏郷の許可も取らずに前進を始めました。



 報告を受けて驚いたのは氏郷です。すぐに敵の策に嵌っていると気づき、波多野にすぐに戻るように伝令を飛ばします。


「武藤喜兵衛め、何をしようと言うのだ?」



 合図を出していたのは佐助でした。佐助は逃げる途中で馬から降りて状況を探っていたのです。波多野が動いたのを見てすぐに再び動き始めようとしたのですが、何かが気にかかり潜んでいると氏郷陣営から伝令が走っていくのが見えました。それでは面白くないと伝令を処理してから自陣へ戻りました。




 波多野率いる丹波、丹後隊3000名が丹羽隊を追いかけます。ですが丹羽隊は素早くあっという間に織田陣営に戻ってしまいました。織田の前衛には佐々の旗印に混じって六文銭の旗が立っています。それを見た波多野は、


「六文銭は真田の旗印、武藤喜兵衛は真田一族だ。あそこにさっきのクソ使者がいるに違いない。鉄砲の用意を!」


 いくら頭に血が上っている波多野でもそのまま突っ込むような事はしませんでした。丹羽を逃してしまい一度軍を止めた波多野ですが、真田の旗印を見て再び攻める方向に考えが動いています。ここは鉄砲の射程距離外、まずはここで陣形を整えて、それから攻めかけようとしました。


「後詰めを氏郷殿に、甲賀衆にも伝令を!」


 配下に応援を依頼し、準備を整えます。しばらく敵の動きを監視しつつ準備に没頭します。織田軍は動きません。さっき奇襲を仕掛けて来たのだからこちらに突っ込んで来そうなものですが動きません。波多野側が準備万端というその時に、


「ドーーン!ドーーン!」


 という大きな音が敵陣からしました。なんだなんだと周囲を見ていたら突然地面が爆発して兵が吹っ飛びました。





 波多野の伝令を受けた蒲生氏郷は、


「なぜ引かん、こちらの指示はどうなったのだ」


 と波多野の暴走に驚きましたが、すぐに頭を切り替えて、


「こうなったら出るしか、いやおかしい。この展開は変だ。全軍下がって立て直すよう指示を!わしも出る」


 と本隊を前進させ始めました。また、同じく波多野の伝令を聞いた甲賀衆は、今こそ手柄をとばかりに猛スピードで波多野陣の後ろに詰めかけています。軍議で波多野が言っていた左馬助にみんな手柄を持っていかれるというのに同意していて、今こそがチャンスとばかりに波多野に乗っかたのです。


 その波多野は突然の地面の爆発で動揺する兵を抑えてこれはまずいと悔しいながらも一時下がることを決心しました。ところが、後ろから甲賀衆2000が我が先ぞと突っ込んできて波多野を追い越して敵前衛に向かって進み始めたのです。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ