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未来を知った武田勝頼は何を思う  作者: Kくぼ


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生意気な使者

 蒲生達は寺の中で軍議をしていた。それをどこから見つけたのか武田の使者がやってきたのだ。使者、矢沢頼康は寺に中に案内され蒲生氏郷の正面、距離にして3mのところに座った。周りには重臣なのか他の国衆なのか人相の悪いのがゴロゴロいる。


「武藤喜兵衛が家臣、矢沢頼康と申します。此度は織田・武田連合軍の使者として参りました」


「蒲生氏郷である。今にも戦が始まろうというのに、敵陣に現れるとは命乞いにでも参ったのか?」


 氏郷は使者が来たと聞いた時からこのタイミングで使者を出してくる意味を考えていました。橋を落とした事で織田・武田は引く事が出来ません。今回の氏郷の策でうまくいったのは橋を落とした事だけですが、それが功を奏しています。戦うなら使者を出す意味はない、とすると命乞いだがあの信忠が命乞いなどするわけがない。武田に説得でもされたのか?


 氏郷の作戦をことごとく潰した武藤喜兵衛の家臣の顔は自信に満ち溢れていて堂々としている。この戦に負ける気など微塵も見えない。氏郷のジャブに対して使者は自信ありげに


「はて?蒲生様はこの戦に勝つおつもりか?」




 氏郷はあまりの衝撃に一瞬声を失いました。なんだ、こいつは?何を言っている?黙っている氏郷を見て使者は言葉を続けます。


「蒲生様がお立てになった策なのかはわかりませんが、川の堰は無くなり山の隠し拠点も潰しました。後は蒲生様を攻めるだけでございます。武田信豊様は蒲生様を高く評価されております。武田に降る事をお勧めに参りました」


 話を聞いていた波多野秀治は刀を抜き矢沢に斬りかかろうとしましたが、それを周囲の者が止めます。矢沢は冷静に、


「それがしを殺すのは戦さ場でお願いしたいものです。ここで使者を殺すようでは明智様に未来はありませんな」


 それを聞いた波多野は抑えられながらも叫びます。


「生意気な!そのような事を使者に言わせるとは使者を見殺しにするようなもの、武田信豊という男はうつけ者だ。ええい、離せ!」


 氏郷は使者が来た意味を考えています。こいつの狙いは一体?冷静な氏郷とは異なり、波多野は氏郷との話でカッカしていた時に使者が現れ、またロクでもない事を言っているのを聞いて興奮が収まりません。


「蒲生殿、左馬助が来る前にこいつらを蹴散らしてしまおう!」


 氏郷は波多野に落ち着いて座るように話しかけてから、


「矢沢殿だったな。目的は時間稼ぎか?だとしたら何を待っている?」


「何のことで?」


 使者は揺るがない。氏郷が考えたのは、使者の目的だ。使者を寄越したのは信豊でも信忠でもあるまい、武藤喜兵衛であろう。ならば裏の裏に隠された何かがあるはずだ。氏郷は武藤喜兵衛に考えた策をほとんど潰されてしまった。この矢沢はその武藤喜兵衛の配下だと言う。それならば何か、何かがある。


 ・こうやって使者が来て我らを怒らせる→左馬助が来る前に我らが仕掛け戦が始まる

  これではあまりにも単純すぎる。武藤喜兵衛がどんな男かは知らないが裏が見えないし、仮に今戦が始まっても我らに負けはない。


 ・こうやって使者が来て我らを怒らせる→我らが使者を斬る

  この戦は負けても 明智は使者をを斬るような男だと世間に広め、次に勝つ。そんな姑息な事を考えているとは思えないし、使者を斬ったりはしない。それに斬らないとわかっているから身内を出してきたのであろう。


 ・今攻めてこられては困る何かがある→使者を出して時間を稼ぐ

  普通に考えれば明日、左馬助が到着後に攻めるはずだが念には念を?何のためだ?左馬助が到着すれば万に一つも勝ちはないだろうに。


 考えても武藤喜兵衛の思惑が読めなかった。仕方なく、


「矢沢殿。使者の役目がわしに寝返させる事であるなら、なぜわしに勝ち目がないのか教えてもらおう」


矢沢はすかさず、


「わかり申さぬ」


「先程、そなたはわしにこの戦に勝つつもりかと言ったな?そなたはわしが負けると思っておるのか?」


「いかにも。武田に負けはござらん。我が殿武藤喜兵衛はあの小田原城を落とした男、この程度の軍勢は敵ではござらん」


「明日、明智左馬助殿が到着する事は存じておろう。それでも我らが負けると申すか?」


それを聞いて矢沢は驚いたように見えます。


「応援ですと?それは一大事!ですがそれでは蒲生様には今回いいところがありませんな。丹羽様が蒲生様を褒めておいででしたがそうですか、応援ですか」


「知らないわけがなかろう。とぼけるのもいい加減にしろ!」


「それがしには初耳でございます。明智様は松坂を攻めているとばかり。で、蒲生様。回答はいかに?」


 回答だと!この男一体何なのだ!


「武藤喜兵衛殿に伝えるが良い。明日、戦場でとな。今までの分、たっぷりとお返ししよう」


「承りました。それと、そちらが波多野様で?」


「ヒョ、ううん。波多野秀治である。わしに用か。クソ生意気な使者殿」


 波多野秀治は、やっと息が整ったところだったが、突然自分に名前が出て声が一瞬裏返ってしまい、慌ててごまかした。


「うちの殿が申すには波多野様は木下秀吉と通じているとかいないとか」


「な、何を申す!」


 あたりがざわつき出します。波多野はまずいと思ったのか刀を抜きました。


「待たれよ!」


 蒲生氏郷が叫ぶと、それとほぼ同時に何かが投げ込まれ黒い煙が広がっていきます。




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