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未来を知った武田勝頼は何を思う  作者: Kくぼ


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真・加速装置

 武田信平は上から覗き込み予想が当たっていたとよしっとガッツポーズをしています。井伊直政はそんな信平を気にしていません。それどころではありませんでした。現れてから徐々に膨らんでいき空へと向かって伸びていく謎の物体に興味津々です。


 武藤源二郎はそれを見て震え始めました。まさか、これに乗れというのであろうか。確かに人が乗る箱のような物が付いています。高天神城で見たときには完成形ではありませんでした。ここまで来る間に中で組み立てていたようです。そしてその箱の中には顔馴染みの助蔵がすでに乗っていて何やら操作をしています。


「源二郎様、早くお乗りください。もうじき出発ですぞ!」


 いきなり何を言うのだ。冗談じゃない!


「いや、急に腹の具合が。イタタタタ」


「逃げられないだわさ。井伊殿、乗せちまいな!」


 逃げ出そうとする源二郎を井伊直政が徳の声を聞いて、掴まえてそのまま箱の中に乗り込みます。それを見た信平は徳の顔を見ます。


「乗りたいの?」


 信平はうんと頷き徳の目を見つめます。箱の中では往生際の悪い源二郎がわめいています。


「それがし、高いところはあまり得意ではないので、いいお勤めができないと思われます。ここはどうか一つ、井伊殿にお任せしたく」


 直政は笑いながら源二郎を羽交い締めにして離しません。そこに信平が乗り込んできました。


「徳様のお許しがでた。この信平も乗ることになった。源二郎、付いて参れ」


「へっ、信平様。信平様に何かあっては一大事。お考えを改めた方が。ここはそれがしと一緒に降りましょう。いや降りるべきです」


 源二郎はなんとか言い訳をして逃げ出そうとします。


「武藤源二郎が一緒にいれば安心であろう、そうだよな直政」


「もちろんでござる。あの武藤喜兵衛様のお子ともなればまさに一騎当千」


「お二人ともつまらぬ茶番はやめていただきって、徳様も乗られるのですか?」


 源二郎はふざけてる場合かとばかりに文句を言うが、徳が現れてどうにもならない事を悟った。


「あったり前だわさ。かなの仇を取らないと。半兵衛殿、留守は任せただわさ」


 竹中半兵衛はかしこまりましたとばかり深いお辞儀をしている。そして、日本初の熱気球が大空へ向かって上昇を始めた。






 そして熱気球は上昇を続け、そして進路を桑名へ向けた。松坂城上空から下を見ると、


「さすがは菅原殿ね。もうここに着いてる。あっ、出撃するみたいだわさ。て事は源二郎殿の読み通り明智は反転したね」


 源二郎は下を見てからすぐに中に戻って座り込みます。高いの怖い、人が蟻みたいだ。と言いながら一瞬で状況を確認しています。そこは抜け目がありません。


「菅原様がここに来ておられるとは。菅原様ならお任せしておいても大丈夫です。素晴らしいお方ですので。徳様、ですから早く戻りましょう」


「菅原殿を知ってるの?そういえば小田原で一緒だったのよね。確かに任せておいてもいいけど、もしかしたら間に合わないかもでしょう。それに、それじゃああたいの気が済まないんだわさ。いいもの見せてあげるからいい加減諦めなさいな!助蔵、速度を上げて」


「承知。ゼンマイブースター起動!」


 助蔵はゼンマイで巻き上げた留め金を外します。熱気球に付けられたプロペラが高速で回転を始めました。


「おお、ゆ、揺れる。ひえええ!」


 源二郎は泣きそうです。徳はスマホというやつがあれば動画に撮って喜兵衛に見せてあげられたのに、と思いました。それほど面白い絵面だったのです。ですがいくら徳でもスマホは作れません。


 この熱気球の人が乗る部分、箱と呼んでいるエリアですが円形をしています。つまりどこが前とか後ろとかは決まっていません。そしてゼンマイブースターと呼んでいたプロペラは四機装備されています。つまり四回は加速できる仕組みになっています。さらに、


「井伊殿。そこのプロペラが止まったらそのゼンマイ巻いといて。そこに治具があるからそれ使って」


 徳は直政にゼンマイ巻き上げを依頼しています。そうなのです。今までの使い捨て加速ブースターと違い、何回でも使うことができるようになっていたのです。


 直政は不思議そうに、面白そうにゼンマイを巻いています。なんでこれを回すとあの羽根のような物が回るのか?全然わかっていません。


「徳様、これは何がどうなっているのでしょうか?それがしには皆目見当がつきません」


「井伊殿。どうしてもっていうなら教えてもいいけど、お屋形様の許可がいるわね」


 直政は驚いた顔をしています。徳様は信平様をこの乗り物に乗せる事ができる権限をお持ちだと思っていました。ならばお屋形様の許可がいるのであろうかと。


 徳はゼンマイブースターについては秘密にしています。すでに空を飛ぶ兵器がある事は秀吉には知られています。秀吉は信長暗殺にハンググライダーを使いました。人は発想する、始めて作るのは容易ではありませんが、真似するのは容易なのです。今回、この熱気球の存在も秀吉に伝わる事でしょう。ですが、どうやって浮かんでいるか、方向を変えているか、加速できるのか?は知られたくありません。秘密は知っている人の数が増えるだけ、漏洩のリスクが高まります。それ故に、勝頼の許可がいると言ったのです。


「井伊殿。信平殿と一緒に関東へ行くのよね。その時にお屋形様にも会うでしょうからお願いしてみるといいわ。それまではよく観察することね」


 そう言って徳は次の準備を始めました。



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