源二郎、飛ぶ
源二郎の情けない姿を見て信平は大笑いです。井伊直政は呆れながら
「武藤殿は小田原で風魔小太郎と戦ったと聞いたが、まさかこのような体たらくとは」
「井伊殿。何を申される。それとこれとは別でござる。なんで皆様は怖くないのですか?」
源二郎は座り込んで震えています。笑いが止まらない信平は出発前の出来事を思い出していました。
「源二郎。徳様があんなに褒めるからどれだけ立派な男かと思えば情けない。シャキっとせい!」
高天神城から戦闘空母 朝霧改が出港しました。前回、小田原決戦で活躍した戦闘空母 朝霧を改良した最新型です。元特殊部隊ゼットのチーム丙にいた空撃隊の経験がある助蔵とともに乗りこんだのは武藤源二郎でした。源二郎はたまたま高天神城に来ていた時に、徳から緊急出航命令が出たのです。そこには源二郎も連れて来るように書いてありました。
「助蔵。なんで徳様は俺にこの船に乗れと言ったのだろう?そもそも俺がここにいる事を知ってる事が恐ろしい」
「源二郎様は高天神城に来る事をどなたかにお知らせしましたか?」
「父上だけだ。源三郎兄上にも話ししていない。と言うことは父上か。父上は徳様を菩薩のように慕っておるからなあ。師匠とか呼んでるし」
護衛の駆逐艦楓とともに伊勢湾に入ると前方に船団が見えてきました。源二郎は大興奮です。
「あれが、戦艦駿河なのか。あのでかいのは何?スッゲーぞ。海軍もいいかもな」
「源二郎様。昔からよくはしゃいでおられましたが変わりませんね。源三郎様は真面目でよく勉強されていたのを覚えておりますが、源二郎様は遊んでばかりで」
「馬鹿を申すな。あれも勉強の一種だ、世の中に為にならない経験は無いと父上が言ってたし」
そうこうしているうちに戦闘空母 朝霧改は船団に合流しました。
「よく来ただわさ、源二郎殿」
「徳様。ご無沙汰しております。やはりそれがしを呼んだのは徳様で?」
「そうだわさ。いいところに居ただわさ。これこそ飛んで火にいる源二郎」
あれ?なんかこれって不味くない?なんか前に聞いた事があるような気がする。と、徳の後ろから信平が現れた。
「の、信平様。なんでここに!」
「ん?源二郎か。久しいの。お主が甲斐を出てどの位経つのか?」
武藤喜兵衛は甲斐古府中に人質として息子2人を預けていた事があります。源二郎はその時に、徳や信勝、信平と会っています。源二郎は皆に挨拶をしてから状況を聞き出します。ここは海上です。なので最新情報は入ってきていません。織田・武田連合軍が出撃した事、志摩から兵が上陸し松坂へ向かっている事、明智軍が牛歩で進んでいる事までです。それと、海が燃えた事は目の前で見て知っています。源二郎は、一通り話を聞いた後、
「そうですか。気になることがあります」
徳は、教科書に出てきた真田幸村がこの源二郎だと知っています。この男がどう化けるのか、楽しみで仕方ありません。ちなみに真田家が出てくる社会、歴史の教科書は徳が封印しています。武藤喜兵衛には読ませない方が良さそうでしょ。その上で、
「源二郎殿。言ってみるだわさ」
と試すように聞きました。
「恐らくですが、明智十兵衛は志摩から援軍が上陸する事は読んでいるでしょう。そして牛歩作戦をいつまでもしていては援軍が間に合ってしまう事も。ですが、あまりに早く滝川様を倒してしまっては織田様が美濃へ戻ってしまいます。機を見て反転し、全軍で織田様を攻めるのではないでしょうか?」
それを聞いた信平は、
「ならばそんな小細工しないで最初から全軍で待ち構えていればよかろう」
ともっともらしい事を言います。それを聞いた井伊直政はえっと言う顔をしました。竹中半兵衛は黙っています。源二郎は、
「それでは織田様は出てこないでしょう。滝川様が危ないからと言うのが出陣の一大条件ですから。牛歩と言うのは見せかけです。恐らくは今頃明智軍が織田軍へ向かって進んでいます」
徳はニヤっと笑い、これが真田幸村か、と思いながら、
「信平殿。源二郎殿の言う事はあたいの読みと同じだわさ。さすがは武藤喜兵衛の息子、大したものね」
信平はなるほど、と頷きながら徳がやけに源二郎を褒めるのはなんでだろうと不思議に思っています。徳は続けて話し始めました。
「それでね。源二郎殿に来てもらったのは、新兵器に乗ってもらいたいんだわさ。いい経験になるわよ、絶対にね」
「新兵器でございますか?まさか高天神城で見たあれですか?あれは一体どういうもので?」
「どういうものかは乗ればわかるだわさ。さあ、飛べ、飛ぶんだ源二郎!」
信平は不思議そうな顔が継続中です。今度は飛べだって?源二郎は訓練していたのであろうか?以前錠が死ぬほど辛い訓練だったと言っていたのだが、それに耐えたのか。立派なやつだ。と思ったら源二郎は、
「徳様。飛べと言われてもそれがしはそういった経験が皆無でして。空を飛ぶには特殊な訓練がいると父が申しておりました」
「気にすることないだわさ。これは誰でも飛べる。さあ、飛べ、飛ぶんだ源二郎!」
なんで2回も言うんだ?そう思っていると戦闘空母朝霧の滑走路の様な部分がが中央から横に割れていきます。自動ドアの様に横にスライドすると船の中が見えてきました。そこには新兵器の姿が!




