蘆名決着
翌日、山上道及が黒川城へ入ると直ぐに城門が解放されました。兵は武装を解除しています。しばらくすると軽装の伊達小次郎がなぜか槍を担いだ義姫とともに城から出てきました。
「武田勝頼様、伊達小次郎と申します」
「うむ、そちらが母君か」
「義姫と申します。此度は素晴らしき申し出をいただき感謝申し上げます、と言いたいところですが武田様に伺いたき事がございます」
おばさん、いやお姉さん。そんな怖い顔しなくても。なんで槍担いでるのよ!
「申してみよ」
勝頼は顔色を変えずに答えます。
「この小次郎殿は当主の政宗よりも優れており、きっと武田様のお役に立てる事でしょう。ですが、武田様が天下を取られた後、どういう扱いとされるのかを伺いとうございます。伊達攻め、最上攻めの先鋒はもちろんお受けいたします。伺いたいのはその後です」
親バカ?母バカなのか。うちの嫁も似たようなところはあるが………、お市を見ると信勝の後ろに控えながら母の目をしている。実の子でもないのに。子供が可愛いのはわかるが、政宗も小次郎も実の子だよな?兄弟の争いってなぜ起こるかといえば誰かが唆して起こるのか、その子の野心なのか?五郎盛信はその両方だったけど、伊達家はどうやら母親が原因なのか。次男の方がいう事聞くとかあるのかな?
そういえば三雄殿が茶々は最後淀君とかになって余計な事を沢山したって言ってたな。母がでしゃばるのはよくないって事だ。
伊達家の細かい事情については錠や桃と合流すればわかるだろう。今は、できる範囲で答えないと。
「義姫殿。余は天下を取る。そのためにはこの東北の争いを鎮めねばならぬ。そして一丸となって西を攻める。いずれ幕府を開くつもりだ。そしてそなたの質問だが余が幕府を開いた後、小次郎殿には今の伊達領を治めてもらいたいと考えている。功があればそれ以上もだ」
「お約束していただけますか?」
「それは出来ん!小次郎殿の活躍次第である。だが余を信じてもらいたい。そこにいるのは織田信長の妹だ。余は織田家を潰す気は無いし、活躍次第では加増も考えている。そしてそこにいる男は徳川家康の家臣だった男で本多忠勝という。今では余の大事な家臣ですでに城持ちだ。忠勝の希望で徳川家も復活させて小さいが領地も与えた。後は働き次第だ。余は味方するものには悪いようにはしない。小次郎殿も同じ事」
「ならば、小次郎が伊達家当主を名乗ることをお許しください。そして米沢城にいる敵を攻めるのにお力をお貸しください」
「よかろう。情報では政宗は相馬から米沢へ引き上げたそうだ。結城殿、佐竹殿にこちらへ来るように伝えてくれ。城を引き渡すとな」
義姫は槍を配下に預けて跪きました。納得したようです。それを見た小次郎はホッとしたような顔をしています。勝頼は続けます。
「小次郎殿。この戦が終わったら我が娘を貰ってくれないか。そこにいる信勝の姉だ」
「謹んでお受けいたしまする」
「義姫殿、これが余の考えだ。人質と思うのも良し、そうでなくとも良し」
義姫は冷静に
「お屋形様。武田と伊達を繋ぐ絆でございます。大事な嫁として扱います」
とりあえず義姫は大人しくなった。だが、勝頼は危険人物としての警戒は緩めない。
伊達小次郎は黒川城から兵を引き払いました。そして勝頼の軍門に下り、米沢攻めに加わることになりました。その7日後、佐竹義重が黒川城へやってきました。
「佐竹殿、蘆名にはそなたの子を継がせるが良い。わかっていると思うが武田の下という事を忘れるなよ」
「かたじけのうございます。今回、山県昌景殿、馬場信春殿に助けていただき伊達政宗を追い払う事ができきました。その上に今回の蘆名の件、この佐竹、どうお礼をしたらよいか」
「嫡男は駿河へ奉公に出せ、悪いようにはしない。それと西を攻める時には頼む。で、これから米沢城を攻める。義姫殿!」
「お屋形様、なんでございましょう」
後ろに義姫、伊達小次郎が控えて佐竹との会話を聞いていた。今度は近隣の国になる。敵対されては困るので同席させている。
「そなたの実家だが、説得は可能か?」
「兄、最上義光は伊達家とは同盟を結んでいるわけではありません。伊達輝宗は周囲の豪族をけしかけて最上と戦をさせようとした事もあり、伊達家は縁戚ではあるものの敵と思っています」
「ではなぜ今回は手を組んだ?」
「私がけしかけました。小次郎に蘆名を継がせれば米沢を挟み撃ちにできます。それ故に今回は手を組み佐竹攻めを行なったのです」
この女、策士だな。だがいずれ邪魔になる、こんなのに引っ掻き回されてはかなわん。どこかで上手く排除しないと。勝頼は
「最上を味方にできるか?」
「可能かと」
「わかった。とりあえず何もするな、良いな」
「かしこまりました」
その夜は恒例のバーベキューです。伊達家、佐竹も初めての経験です。酒を飲み、肉を食べ、懇談しわだかまりを解いていきます。
「信勝、覚えておけ。こういうのを飲みにけーしょんと言うのだ」
「父上。難しい言葉ですね。例の南蛮語ですか?ですが面白いものですね。みんな不思議と仲良くなっています」
「そうだ。お前教科書を見た事はあるか?」
「話に聞いた事はありますが、あれは極秘だと徳様が言っておられました」
「そうだ。あれが広まると、まあ広まっても普通理解できないが。この戦が終わったら高天神城へ行け。半兵衛に色々と教わるがいい」
それをお市と茶々が聞いています。茶々は一緒に行きたそうです。
そして翌朝、一行は米沢城へ向かいました。道案内は小次郎です。




