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未来を知った武田勝頼は何を思う  作者: Kくぼ


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伊達小次郎

 期限の日まで2日あります。ただ待っていても仕方がないので、木の槍を使った模擬戦が行われました。もちろん、本多忠勝対山上道及です。1本目は道及が取りましたが、それ以降は忠勝の勝ちでした。


「むう、見事だ。力は五分でも技で負けている」


「いや道及よ。見直したぞ、これほどとは思わなんだ」


 本多忠勝は上泉伊勢守に剣だけでなく槍も教わっていました。この時代の槍は力任せに叩く、突くが基本です。強者は槍を小技というより力で制していました。ところが、本多忠勝はその戦法で上泉伊勢守に全く歯が立ちませんでした。伊勢守の技を盗み鍛錬し忠勝は真の強者と言える実力を身につけたのです。忠勝が道及を褒めたのはその時の自分より明らかに強かったからです。


「忠勝殿、これからもたまにお手合わせをお願いしたい。今日ので何か掴めた気がするのだ」


 忠勝は勝頼が頷いているのを見てから、


「承知した。お互い励もうぞ!」


 それをジー〜っと見ていたのは信勝である。信勝は幼少の頃から信平と一緒に勝頼が作ったアスレチックもどきで体幹を鍛えたり、剣術も稽古をしていました。男の血が騒いだのです。


「父上、それがしも忠勝に教えを請いたいのですが?」


「お前がか、歯が立たないだろう」


 勝頼はそう言って信勝の顔をみると真剣そのものだった。自分の実力を知るいい機会かもしれない。


「いいぞ、やってみろ。忠勝!手加減するなよ」




 地面に転がってハアハア言っているのは信勝です。忠勝は汗もかいていません。お市が話を聞いて駆けつけて来ました。


「何をやっているのです。忠勝殿、信勝殿になんて事を!」


 勝頼はニヤニヤしながら、


「お市。これは信勝が望んだ事だ。自分の実力がよくわかったであろう。信勝、お前は将だ。自らが戦うのではなく、人を使って戦うのだ。身体を鍛えいざという時に備えて剣術を学ぶのは良い事だが、そこを間違えるな。茶々を連れて来て看病してやれ、何日かはあちこちが痛いぞ」


 忠勝は命令通り手加減しませんでした。実際、信勝はそこそこの腕でしたが体格がまだ子供です。力で負け技で負け結果はボロボロでした。ただ、忠勝は今まで以上に信勝が好きになりました。武田の未来は明るいと。


 信勝は時間がある時に馬場信春に稽古をつけてもらっていましたが、ここまでやられた事はありませんでした。勝頼の言葉をゼエゼエ言いながら聞いたものの、いつかは勝ってやると結果は心の中で誓いました。そして愛しの茶々に抱えられながら下がっていきました。



 勝頼は忠勝と道及を呼び酒を酌み交わしています。


「忠勝、すまなかった」


「信勝様は将来武田を背負われるお方。あの位の気構えがなければ。家康様を思い出します」


「ほう、家康殿か」


「家康様も負けず嫌いでおられました。特に武藤喜兵衛様への怒りはものすごく。で、今その武藤様に仕えているのですから人の一生は不思議なものです」


「喜兵衛も人を怒らせる天才だからな。あの男は喜怒哀楽を意識的に表に出しているのだ。腹のなかでは笑いながら怒り散らす、人を褒めながら心の中ではこんちくしょうと思ってる」


「そうなのですか?それは今後気をつけて心底を探った方がいいという事ですか?」


「そういう意味ではない。計算しているのだ、人の使い方を。ある意味あの秀吉に通じるものがあるかもしれんな。喜兵衛は忠勝に対して思うところはないぞ、余が保証しよう。それと、次に戻った時に喜兵衛から何か言われるかも知れんが、その時は黙って受けよ」


「なんでござる?」


「今は言えん。それにどうなるかも分からん。ただ、武田のためと判断すればそうなるだろう」


 黙って聞いていた山上道及が、


「その武藤喜兵衛様というのは真田の?」


「そうだ、知っているのか?」


「お名前だけは。この間、ふらっと直江兼続殿が遊びに来られまして、話をしていていかれました時に」


「兼続殿が?佐野へか?」


「はい。佐野家と上杉家は長年争ってまいりました。今回、武田様に従う仲間として過去を水に流そうと越後の酒と米を持っておいでになりました。その後、宇都宮へ行くと言っておられました」


 あいつ、父上が死んだのを嘘と思って探り入れてるな?


「いつだ?」


「小田原攻めから戻ってすぐのことです。兵の殆どが東北へ向かわせているとかで少数でお見えになりました」


 俺が宇都宮へ行った後という事か。見張ってやがったな。


「そうか。で、兼続殿はなんて言っておった?」


「このまま東北へ向かうと。それと武藤様を褒めておられました。空から小田原城を攻めるとは見事だったと」


 忍びを使って見ていたか。風魔の小太郎の行き先も知ってるかな?会ったら聞いてみよう。


「道及、明日はまたお主に行ってもらう。蘆名は佐竹の息子に継がせる。その代わりに伊達家をやると言ってこい」


 政宗に春を嫁がせる予定が大番狂わせというか、これが流れだ。流れには逆らわない方がいい。



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