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未来を知った武田勝頼は何を思う  作者: Kくぼ


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氏直の正体

 勝頼は氏直の姿を見に陣を出ました。氏直は鶴翼の陣の中央を一人でこっちに向かって歩いて来ます。笑顔です。なぜか笑っています。その不気味さに周囲の兵は道を開けて行きます。右手には刀、左手には誰かの首を持っています。


 首は北条氏政でした。氏直は勝頼を見つけ走り出します。それを見た旗本達が勝頼の前に立ち守ろうとしますが、勝頼はそれを下がらせました。氏直は勝頼の前まで来て立ち止まり、勝頼の顔を見てニヤっと笑います。


「武田勝頼殿。北条氏直である。武田家との同盟を一方的に破棄し、お父上の仇でもある北条氏政の首を持参した。北条家にはすでに武田家に反抗するものはいない。これからは余が北条を仕切る。再び同盟を希望する」


 そう言って氏政の首を地面に置き、一歩下がって地面にあぐらを組んだ。刀は地面に突き刺している。勝頼は無言だ。黙ったまま氏直を見ている。首は確かに氏政だった。ついこの間まで姉の旦那だった男だ。つまり氏直は勝頼にとっても甥にあたる。


 父親の首を持って来たのには驚きました。しかも笑っています。気でも違ったのかと思いましたがそうではなさそうです。勝頼は冷静に、


「北条氏直。氏政の首を持ってくれば許されるとでも思ったか!」


「叔父上、身内の不届き者を成敗しただけでござる」


 氏直は真っ向から答えました。おかしい、氏直はこんなやつだったか!前はもっと優柔不断で落ち着きがなかった。まるで別人だ。


「不届き者と申したか。だが氏政は北条の事実上の主人、これは北条家が仕出かした事による報復だ。北条には滅んでもらう」


「では、なぜ氏邦は生かした?氏規も殺していないと聞くが?」


 なんでそれを知っている?


「氏邦は鉢形城で引き篭もっておる、相手にするのも馬鹿らしいので放っておるだけだ。氏規は今は殺してはいないが、さっきまで小田原城にいたのに情報通だな氏直殿?」


「余にも忍びはおる。そのような事より、北条家を滅ぼすと申したが始祖、早雲様より続くこの北条家。さらに申せば鎌倉幕府を支えた執権である北条家、その血を引きながら北条を攻め滅ぼし室町幕府を開いた足利家、その血を引く今川家、その血を引く最後の一族であるこの由緒正しき北条家を滅ぼすだけの覚悟が勝頼殿にはおありか?それができないから氏邦を殺さないのではないのか?」


「おかしな事を申す。今川を滅ぼしたのは武田である。北条を滅ぼす事になんのためらいもない」


「そうではなかろう。今川の女を正室にしているではないか?」


 なんなんだこいつ?勝頼は今川義元の末娘である彩を大事にしているのはそういう意味ではない。ではないがその側面が無いというわけでもない。彩が可愛いというわけではないが今川の名はどこかで残せないかとは考えていた。とはいえだ。


「名、家、そんな物は一時期のものぞ。今お主が言った家は皆、栄えた。そして衰退した。祇園精舎の鐘の声とはよく言ったものだ。時代は動いている、変わっていく。北条も滅びるのが必定」


 勝頼がそう言った瞬間、氏直が動いた。懐に手を入れたと思ったらいきなり手裏剣を投げ、そのまま地面に刺してあった刀を掴み勝頼へ斬りかかったのだ。


 勝頼は手裏剣を横ステップで避けて、刀を抜いた。その瞬間、背後に気配を感じ刃を背中に向け払った。


『キン!』


 金属がぶつかる音がした。目の前には氏直が斬りかかってきている。一瞬で間をずらし、正面を横殴りに刃を振る。氏直がバク転で逃げた。二回転、三回転目が着地する瞬間、勝頼の身体が氏直の身体をすり抜ける。


「勝陰流奥義、隼」


 勝頼は厨二病のように技の名前をつぶやき氏直を見ると、腹を横一閃に斬られ、地面に転がり呻いている。


「お前は誰だ?氏直ではないな?」


 勝頼が瀕死の氏直に向かって話しかける。氏直だった男は目を開き、苦しそうに


「よくぞ見抜いた。だが俺が誰だかはわかるまい」


「そうか。お前が本物の風魔小太郎か?」


「風魔小太郎。そう名乗ったことも、ううう」


 氏直だった男はそこで息絶えました。




 勝頼は重臣を集め情報を整理しています。小田原城は制圧が完了し、今は落ち武者狩りが始まっています。箱根方面に逃げた者が多く、箱根の武田勢はまだまだ合流できそうもありません。と、そこに空から錠が降りてきました。


「お屋形様。徳様と言われて二の丸を………」


「わかってる、お前も入れ!」


 錠は海から見えた山からの天守攻撃、艦隊戦、二の丸爆撃、二の丸砲撃の全てを報告しました。箱根勢の報告を聞かないと全てはわかりませんが大筋は理解できました。問題は風魔です。馬場は、


「お屋形様が手を出すなと言うので黙って見ておりましたが冷や汗が止まりません。あの氏直が風魔小太郎なのですか?」


「わからん。どこで氏直と入れ替わったのか。だが、あくまでも感覚だが風魔小太郎はこの様子をどこかで見ていたのではないかと思っている」


「なんと、そのような!?」


「あの氏直に化けた男はどこからか情報を得ていた。氏規が生きている事を知っているのはこの陣にいる者だけだ」


「それではすぐに警戒を!」


「待て。警戒は必要だがもうここにはおるまいて。山県、馬場に後始末は任す。余は宇都宮へ行く」


 宇都宮には信玄が隠れています。叔父上が死んだ事を報告しなければ、と。





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