大型空母
徳と錠が乗っている船の後ろに大型船が隠れていた。甲板にジェットコースターのようなカーブを描いたレールが見えている。徳は艦隊の指示を伊丹へ任せて錠とともにその大型船、別名戦闘空母 朝霧へ乗り込んだ。
「あーあ、乗らなくてもいいと思ってたのに」
「あんた、出番がないと存在価値ないでしょ。それに前回甲賀の忍びに負けてるんだから名誉挽回のチャンスよ」
「本当に大丈夫なんだよね?一応訓練はしたけど、この船から飛ぶのは初めてだし」
「あんたなら多分死なないわよ」
「!!!、いや姉ちゃん、身内に厳しすぎ!」
「褒めてんのよ。それにたまには桃に良いところ見せないと嫌われちゃうわよ」
「い、いや別に桃とはそういう関係では………、」
「ふーん、そう。じゃあ桃に錠は気がないって言っとくね」
「待って、待ってください。わかったからそっちの方はほっといて。さあ飛ぶぞー、準備するね」
錠は慌てて離れていった。
「全く、なんで煮え切らないのかしら。あたいの弟とは思えない。でも今回錠が飛ばなくてももう少し艦隊が近づけば二の丸まで弾が届きそうなんだけどね」
今回、徳は錠に手柄をたてさせたいのであった。そのための空母出撃である。一応これでも弟想いなのです。
伊丹は徳が何かやりそうなので、敵の船が出てくるのをここで待ち構えつつ、たまに二の丸に向かって砲撃をしている。元々今回の作戦では海に逃げる北条氏政、氏直を捕える事がお役目だと思っている。流石に小田原城本丸を砲撃できるとは思ってはいなかった。さっきの飛距離だと、ギリギリ近づいたとしても無理であろう。ここから近づけば二の丸を直撃する事も可能であろうが、徳の護衛もあるから無理をするつもりはなかった。
その時マストに登っていた物見から報告があった。この船の物見は、徳作成の双眼鏡、名付けて 見えるんです を使って遠くの方まで監視する事ができる。
「殿、敵の船が出港してきました。その数10隻」
「わかった。全艦砲撃準備」
「それが、殿。見たことのない盾のようなものが船首に付いてます」
「盾だと!?うーむ、わかった。試しに1発喰らわせてみよう」
北条水軍の将、梶原景宗は毛利が対織田で使用した焙烙玉の情報から鉄甲船を作り、里見水軍を圧倒した。攻撃は主に大鉄砲と呼んでいる小さめの大砲だ。里見相手には通じたが当然、この武器も防がれる時が来ると考えた。どうやって防ぐ?敵がもっと強力な武器を作った時に防ぐなにかが必要だと考えて、氏政に言って作らせたのが、今回初お目見えの鉄の大楯である。
船の船首に取り付けられた幅3m、高さ5mの鉄板。正面からの砲撃は防ぐ自信があります。梶原は、
「全船、武田の船に向かって直進!側面を向けるな!射程距離に入るまでは堪えるんだ」
と指示を出しました。船が進んでいくと武田の砲撃が始まります。武田の砲弾は船に当たらないで海に落ちるか、当たっても盾で防ぐ事が出来ました。ただ、盾に当たった砲弾の威力がすごく、船は大きく揺れ船員が数名海に落下しています。
「堪えるんだ!もう少しでこっちも撃てるぞ!」
伊丹は砲弾が当たっても怯まずに向かってくる北条水軍に敬意を持ちました。敵ながら見事です。それにあの盾はうまく出来ていました。盾を避けて船を狙おうと弧を描こうとすると船には当たりません。正面は盾で防がれます。砲弾が盾に当たると船はよろけますが、沈みそうにはありません。
「殿、ぼちぼち敵の大鉄砲の射程距離に入ります。どうしますか?」
「徳様の方はどうだ?」
「発射準備ができたそうです」
「ならば護衛に2隻残して我らは動くとしよう。久々の艦隊戦だ。腕がなる。ドリルミサイル装備の船は3隻だけだな。あの盾もドリルミサイルは受け止められまいて。残りは側面からぶっ放せ。全速前進だ!」
北条水軍10隻は3、3、1、3の陣形を取って進んでいます。指揮官の梶原は中央の1の船に乗っています。
「大鉄砲を全て側面発射に移動。武田の船の間を抜けてすれ違いざまに撃ちまくるんだ」
「殿、武田の船が動き始めました。速度が物凄く早いです。これではもうすぐすれ違います」
「構わん。大鉄砲の準備だ」
ところが、先頭の3隻が突然バラバラに海に浮かんでいます。その後ろを全速力で進んでいた船はその残骸に突っ込んでしまい、海に浮かんでいる味方にぶつかってしまい慌てて減速をし始めました。
「と、殿。前の船が!」
何があったのだ。怯まずに突っ込めと指示を出しますが、梶原の船が先頭になってしまいます。そして梶原の目に映ったのは、すぐ目の前にきていた武田の大型船でした。船首がなぜか凹んでいます。そしてその横にいた船が砲撃をしてきました。梶原の船は盾で砲弾を防ぐものの衝撃でうまく進む事が出来ません。そうしているうちに側面に回り込まれ砲弾を食らってしまいました。
北条に船は手漕ぎ、武田の船はガソリンエンジンとゼンマイ、足漕ぎによるスクリュー駆動です。機動力の差が大きくたまに反撃するものの全く歯が立ちませんでした。
海に放り出された梶原景宗は、捕らえられ、北条の船は全船沈められました。
「梶原殿とお見受けいたす。それがしは伊丹康直と申します」
「今川から武田に乗り換えたあの伊丹殿か。さっさと殺せ、話すことはない」
「まあそう焦るな。殺す気ならとっくにやっておるよ。それがしはそなたの闘いぶりに感服しておるのです。あの鉄の盾、今回の戦略、お見事でした」
「見事な事はない。何もできずに終わった」
その時、大きな爆音とともに男の悲鳴が聞こえたような気がした。
「ヒエーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」




