スクリュークラッシャー砲
<小田原城二の丸では>
北条氏政が海から逃げる事を思案していた時、突然二の丸前の広場に砲弾が着弾しました。そこには兵が多く集まっていて直撃です。
『ドーーン!』
二の丸が振動します。氏政は何が起きたか調べるように言おうと氏直を見ると怯えて座り込み頭を抱えています。頭にきて怒鳴ろうとすると、また
『ドーーン!』
再び砲弾が降ってきました。北条水軍の将、梶原景宗は
「大殿、これは海からの砲撃と思われます。それがしにお任せを」
「任せたぞ!おい、氏直。松田を呼べ」
氏直はなんとか立ち上がり重臣の松田憲秀を呼びに行きました。外では兵が二の丸に火の手が来ないように消火活動をしています。それ以外の兵は武田の襲撃に備えています。二の丸に残っていたのは氏政が脱出するときの護衛兵の予定でした。ところが、砲弾の直撃を受けパニックになっています。そこに北条氏規が現れ、
「静まれ!いいか、今我らは未曾有の危機に直面している。本丸は見ての通り今も燃えている。武田は8万の軍勢で二宮からこちらへ向かって来ている。だが、それがなんだ!北条家にはまだ多くの兵が残っている。武蔵の国衆は今は武田に脅され敵になっているが、この戦が収まればまた頭を下げに来る。ここを凌げば、外にいる北条家ゆかりの者達が息を吹き返す。武田の攻撃を抑えるのだ。この海からの攻撃はこれから海の勇者、梶原殿が抑えに向かう。皆は落ち着き、自分の役目を果たしてくれ。ここにいてはまた砲撃にやられてしまう、我に続け!武田勝頼めに一泡吹かせてくれようぞ!」
『おお!』
『氏規様に続けー!』
北条氏規は自らの判断で動き出しました。このままここにいてもジリ貧です。付いてきた兵は五千、火を消している者を残して、城の外へ出ました。はるか視界の向こうに武田軍が向かってくるのが見えます。
「北条を舐めるな!」
気合いを入れて出陣しましたが、氏政との連携が取れていませんでした。氏規は待っていられなかったのです。そしてその判断は間違ってはいませんでした。
北条水軍の将、梶原景宗は、二の丸にある運河から小舟に乗り、軍船にたどり着きました。すでに部下が出港の用意をして待っていました。出港できる船は10隻。いずれも鉄甲船で、大鉄砲を装備しています。出港してすぐに武田の船を探しますが、かなり遠くに船が見えました。この距離であの大きさという事は相当巨大な船という事になります。
梶原は部下に聞きます。
「さっきの砲弾はどこからだ?」
「あの遠くに見える船からでございます」
「馬鹿な、あそこから届くというのか。我らの大鉄砲は半分も飛ばんぞ、どういう事だ?」
「わかりません。ですが間違いありません。あれと戦うには近づくしかありません。ですが、近づく前にやられてしまいます」
「あれがあったろ。出港は一時取りやめにする。全船、準備を急げ!」
梶原は一時出港をやめて防御を固めています。そしてその時間を待ってくれる武田軍ではありませんでした。
徳は燃える小田原城を本丸を遠目に見ながら、
「やっぱ逃げてくるとしたら海よね。せっかくここまできてるのになーーーんにも活躍できないなんて徳さんの辞書にはありえないだわさ」
「姉ちゃん、何も無い方がいいじゃない。姉ちゃんはお屋形様の筆頭側室なんだから別に戦で活躍しなくてもいいでしょ」
「何を言ってるのよ、正室の彩ちゃんも正妻のいっちゃんも子供がいて、しかも今川の姫と織田の姫でしょ!あたいの価値はどこにあるのさ?」
「お屋形様は別に競う事ないって言ってたよ。みんなが大事だって」
「それはそれ、これはこれよ。あたいの、えーーと、何だっけ?そう、プライドよプライド」
「ブライト?なにそれ?」
「ちゃうわい!女の意地よ、あんたにも意地ってものがあるでしょ。そもそもチーム甲が空を制するんじゃなかったの?チーム丙の方が活躍してるじゃない。あんたそれでいいの?」
「お屋形様の護衛任務が多かったし、丙の連中は武藤様に鍛えられてたから別にいいかと」
「根性なし!しょうがない、やっぱ飛びなさい」
なんでそうなる!
徳は戦艦駿河マークIIのアームストロング砲もどき、砲身内側にに螺旋の模様を入れて、砲弾を球状から、弾丸状に細長い空気抵抗を減らす形に改良した長距離砲こと、名付けてスクリュークラッシャー砲を小田原城めがけて発射させました。
「届くかな?届かねえだろうな、おっ、届いた」
2発試射のつもりでぶっ放し、艦隊戦の用意に切り替えさせる。徳は敵の水軍は無傷の筈、絶対出てくると考えていた。その2発の試射が北条氏規が出陣するキッカケになったとは想定外である。
「伊丹殿に伝令、艦隊戦用意、全艦スクリュークラッシャー砲発射準備よ。それと念のためあれも、ね。それと、錠。小田原城攻略作戦B準備」
「嫌だあー!飛ばなくてもいいじゃん」
「喜兵衛殿が二の丸燃やし損ねたでしょ。やっちゃって」
錠は諦めた。こんな姉を持ったおいらはこの世で最も不幸な弟。




