佐助と与助
「人質などと卑怯な真似を。北条の者か?」
源二郎が銃を構えながら話しかけると、男は、
「北条か。そうでもありそうでもない。我ら忍びはな、主人を変える事がある。お主らのように主人に忠実ではないのだ」
「どういう意味だ?」
「小僧にはわかるまい。さて、大人しくしてもらおうか」
源二郎の前に矢沢頼康が立ち、刀を構えている。吾郎はうずくまったままだ。
「そこに倒れてるい忍びはもう長くはないぞ。その武器には毒が塗ってある。助けたければ銃を捨ててお前がこっちへ来い。そうすれば解毒薬をやろう」
「なんだと。うむ、仕方があるまい。その方、嘘ではあるまいな?」
「 この風魔小太郎、この名にかけて誓おう」
風魔小太郎だと!風魔の棟梁か?源二郎は頼康の目を見て止めるなよと語った。そうは言っても頼康の役目は吾郎を救うことではない、源二郎を護る事だ。
「ダメです。その忍びと源二郎様どちらが大事か。殿に顔向けができません」
「いや、こういう時は俺に任せるのが定石だろう」
「仰る意味がわかり申さぬ。ダメならものはダメです」
風魔小太郎と名乗った男は呆れている。と思いきや不意をついて手裏剣を投げてきた。頼康は慌てて刀で弾き飛ばす。
「卑怯な!」
「茶番はそこまでだ。こちらも時間がないのでそんなのに付き合ってはおれん」
源二郎は素早く銃口を小太郎へ向けている。当たらなくても牽制にはなる、小太郎は一気にケリをつけたかったがこのままでは近づけない。
「面倒なものだな、その銃というやつは。思っていたより厄介だ。むっ!」
小太郎と名乗った忍びは大きく飛び退いた。そこの地面に飛び苦無が突き刺さる。
「矢沢様、その者は風魔小太郎ではありません。偽物です」
現れたのは佐助だった。
「面白い事をいう忍びだな。なかなか腕は立つようだがわしが風魔小太郎だ」
「面白い事をいう忍びだな。この間見た風魔小太郎は小柄なおっさんだったぞ」
「なるほど。ではお前が見た方が偽物であろう。わしが風魔小太郎だ」
「なるほど。では俺が見た方が本物で間違いないようだ。矢沢様、風魔小太郎というのは正体がはっきりしないと言われていました。その理由は、色々な男があちこちで風魔小太郎と名乗っているからなのです。その中で本物は1人しかいません」
「佐助、よくぞ突き止めた。ではここにいるのは偽物という事だな」
それを聞いた自称風魔小太郎は笑いながら、
「面白い事をいう忍びだな。では本物の風魔小太郎はどこにいる?」
「この足柄城を見渡していた男がいる。今、俺の仲間が戦っているよ」
佐助はそう言いながら、毒消しを源二郎に向かって投げました。源二郎はそれを吾郎に飲ませます。
「お前の仲間が戦っているのが風魔小太郎だとしよう。風魔の頭領相手にその仲間がまともに戦えると思っているのか?」
佐助は平然と答えます。
「どうだろう。いい勝負だと思うが」
「舐めた事を。風魔小太郎を甘く見ない方がいいぞ」
「やはりお前は偽物か。で、風魔よ。3対1になったがどうするね、できれば引いてもらえると助かる。主人は守りたいし、怪我人もいるし」
「面白い事を言う忍びだな。何回この台詞を言った事か、そちらが不利と言いながら引けと言うのか。だがこちらもあるお方に土産が欲しいのだ。まずはお前から片付けるとしよう」
『ドッカーン!』
風魔の上で突然何かが爆発しました。桜花散撃です。高速でマキビシが風魔に襲いかかり全身に突き刺さりました。風魔は倒れて蠢いています。
「与助!そっちはどうだ?」
「さっきのおっさんは小太郎ではなかった。なんとか倒したよ。こっちも違ったよな?」
与助と言われた男、佐助にそっくりです。佐助は、
「ああ、こっちも偽物だ。で、与助、本物を連れてきたのか?」
その時、与助をつけてきていたと思われる忍びが木陰から現れました。
「よく気づいたな。やれやれ、手下はやられてしまったか。さらばだ!」
そう言って走り出した風魔小太郎?矢沢頼康は慌てて佐助に命じます。
「佐助、追え!」
「待て!」
止めたのは源二郎です。一同動きが止まります。頼康は何故止めると言う顔で源二郎を見ました。与助はなあるほどと言う顔をしながら、
「源二郎様。お初にお目にかかります。真田忍びの与助でございます」
と挨拶してから、思った事を口にします。
「罠ですか?」
それを聞いた佐助もそうか、と思います。矢沢頼康だけがわかっていません。
「頼康、あいつはわざと見つかったんだよ。だから追っていけば今度はこっちが大勢に囲まれる」
「源二郎様、そこまで考えておられたのですか?」
「最初はそこで呻いている男一人で俺を捕えるか殺すかするつもりだったんだろう。それが佐助の登場で予定が狂った」
佐助は、
「与助ともう一人の風魔を尾行していてこちらに来るのが遅れてしまいました。もう少し早ければ、そちらのお方、吾郎様とお見受けいたしますが、怪我をする事はなかったかと。申し訳ありません」
「自惚れるな!確かにお前たちは優秀な忍びだろう。だが、お前たちだけで何もかもなんとかできるわけではない。それに吾郎殿は俺を庇おうとしただけだ。戦って負けたわけではない」
佐助は叱られてうなだれている。与助は、
「もう一人の風魔はなんとか倒しました。さっきの男につけられている事には気がつきませんでした。佐助は俺が来ている事に気がついて話を伸ばし、そこの男を油断させてくれたのです。それで一発で倒す事が出来ました」
「うむ。見事な連携であった。双子ならではの物なのかもしれんな。佐助よ、俺はお前達に感謝している。だが決して自惚れるなよ。与助が尾行されていた事に気がつかないほどの手練れが敵にいると言う事を忘れるな」
「追っては来ないのか?仕方あるまい。手土産はないがこのままいくとするか。さらば北条」




