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未来を知った武田勝頼は何を思う  作者: Kくぼ


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甚内の形見

 翌日、源二郎は真田親族の矢沢頼康と共に再び山に入ります。昨日こっそり抜け出した後、陣へ戻ると頼康からしこたま叱られました。頼康は武藤喜兵衛から、源二郎を頼むと言われて来ており、父の矢沢頼綱からもきつく言われて来ています。矢沢頼綱は真田幸隆の弟で今は本家の真田信綱に仕えています。真田家譜代の家臣として今回初陣となる源二郎を護るのが役目です。幸隆の子のうち3人は城持ち大名になりました。もう1人、真田信尹という男がいるのですが、その話はまた。


 源二郎は仕方なく事情を説明し、ここでただ待っていても何も学べない。手柄になるかもしれないし、少なくとも勉強になると熱弁したところ一緒に行くならということになったのです。


「源二郎様、こんな山の中でそのような影の戦いが本当に起きているのですか?」


「この城は風魔の城だそうだ。大屋形様の仇の風魔だ。それを黙って見ていることなど出来ん」


「今回、真田の庄から忍びを2人連れてきております。今も影で見張っているはずです。昨日の源二郎様の動きも見張っていたのですよ」


「ん?昨日は吾郎殿といたのだがそんな事は言ってなかったぞ」


「吾郎殿にも気づかれないほどの忍びということです。上杉の甚内殿の忘れ形見ですよ」


「何!甚内殿といえばあの伝説の忍びと聞く。だが、その弟子は2人いて1人死んだと聞いたが?」


「はい、その通りです。甚内殿は上杉の忍びとして謙信公に仕え、弟子を2人育てたそうですが実は子がいたのです。甚内殿はお祖父様に子供をお預けになり、それは真田本家ではなく矢澤の家で預かる事になったそうです」


「そんな歴史が。父上も本家の叔父上も知らない事なのか。しかし何故だ?」


「甚内殿は元々は真田の庄の出身なのです。海野の家に代々仕えていたそうです。信虎様の時代に上杉についたそうなのですが子供を連れて行くことが出来なかったそうです。かといって甚内が上杉で活躍すると小県で子が嫌な思いをするかもとお祖父様がお考えになり、矢澤の家ならと。これは矢澤の父上しか知らない事だそうで」


 そんな事があったのか。その子供は双子で矢澤頼綱に真田の庄で鍛えられ甚内をも超える忍びに育ったそうだ。名を佐助、与助というらしい。今までは矢澤頼綱が情報収集に使っていたが今回源二郎の初陣ということで表に出てきたのである。






 足柄城では、突然敵兵20名が東、南、西の3箇所同時に外へ出て暴れ出しました。鉄砲と矢が城から放たれ武田軍を牽制します。武田軍が攻撃に出ると、南、西の兵は城へ引っ込みましたが、東側の武田軍の気が緩んでいたためそのままその隙をついて武田軍に突っ込んでいきます。そうして散々暴れた後、城の中へ戻って行きました。奇襲を受けた武田軍が慌てて体制を整えています。城を囲む北側の兵が警戒しつつも東側に動き始めました。


「今だ、行け!」


 その様子を監視していた風間与太郎は、タイミングを見計らい指示を出しました。東西南北から兵が一気に飛び出しました。北からは600名の兵が飛び出し、その中の100名ずつは東と西の武田兵に突っ込んでいき中央を手薄にします。風間与太郎は北に向かって真っ直ぐに進みます。その先には手薄になった武田軍と、木陰に隠れた源二郎がいました。




 源二郎は北側にいたので、東側で何があったのかわかりませんでした。ただ、兵の一部が東側へ移動したので自分も移動しようと動きかけた時、城から兵が飛び出してきました。


「い、いかん!」


 北側を囲っていたのは甲斐の勝沼、南部隊でした。慌てて鉄砲を撃ちますが敵の進軍を止められません。兵が崩れそうになっています。兵の数は北側に千名、数では優っていますが勢いが違いました。


「いけません、源二郎様。ここから動かないように」


 飛び出そうとした源二郎を矢澤頼康が止めます。出て行っても死ぬだけです。結局この2人は木の上で見ている事しかできませんでした。その間に敵兵200名ほどが包囲を抜けて走り去って行きました。


「昨日までと全く状況が変わってしまった。1人抜け出ては倒すを繰り返していたのに。それも敵の策だったのか」


「報告へ戻りましょう。小山田様は本陣です」


 2人は木から降りてまだ戦闘が続いている東側を通って本陣へ戻ろうとしたが、


「うっ、源二郎様。お、お逃げ………、」


「吾、吾郎殿」


 どこからか飛んできた手裏剣が源二郎を襲っていた。それを身を挺して吾郎が庇ったのだ。源二郎が懐から銃を抜いた。護身用に喜兵衛が持たせたものだ。

 源二郎は銃を構えてキョロキョロと敵を探しているが気配すらない。矢沢頼康は刀を抜いて周囲を伺っている。


「それは銃というやつだな。怪しいやつだと思ったがそれなりに価値のある男のようだ」


「何奴、姿を見せろ!」


 突然正面の木陰から姿を現したのは身の丈六尺ほどの大男だった。源二郎はいきなり発砲した。


『ダーン!』


「距離があればそうそう当たるものではないそうだ。命中率は火縄銃の方がいいみたいだな」


「源二郎様、冷静に。何者だ?」


「さて、簡単に名乗るわけにもいかんのでな。だいぶ北条が劣勢のようなので人質になってもらおうか、源二郎とやら」



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