その頃源二郎は?
武藤源二郎信繁、三雄の歴史では真田幸村として有名なこの男。現在は小山田信茂の軍に編成され、郡内から足柄城を囲んでいます。これが初陣ですが、今まで大した戦もなくここまで進んできました。というのはさっきまでで、今はこっそり抜け出し尾行中です。
小山田軍は足柄城を包囲していましたが、軍監の菅原が何やら怪しげな指示をしているのです。ただ城を囲むだけでなく、物見、忍びらしき者たちがうごめいています。
「菅原様は何をしておられるのか?」
そもそも小田原城を攻める戦のはずなのですが、一度武蔵へ出た後甲斐に戻り、そこから箱根へと遠回りをしています。そういうお役目なのでしょうが意味がわかりません。源二郎は利発な若者で、機転が利くのですが理解したがりなところがあります。
今頃父上は何をしておられるのか?例の航空隊を使って城を攻めているのではないかと気が気ではありません。黙って見てこいと言われた以上、勝手な真似は出来ないのですが、つい菅原の指示を受けた者の後をつけはじめてしまいました。
源二郎が少し距離を取りながら獣道を進んでいくと突然目の前に忍びが現れました。吾郎です。
「この先は危険です。お戻りください」
「そなたは?」
「お父上がまだ子供の頃からお屋形様にお仕えしている吾郎と申す者です。さあ、こちらへ」
「あなたが吾郎殿でいらっしゃいますか、これは大変失礼をいたしました。武藤源二郎信繁にございます。この先で何が?」
吾郎は源二郎の目をみました。喜兵衛に似て賢さが溢れている目です。これは引き下がりそうもない目です。吾郎は仕方がない、後で俺が怒られようと諦め、
「ついて来てください。ただし、ご自分の身はご自分でお守りください。いいですな!」
と言って先へ進みました。慎重に慎重に。
足柄城。風魔の拠点の1つです。こことは別に箱根山中に風魔の里というのがあり、本来はその風魔の里が本拠地になります。ですが、現在では風魔の里にいるのは少数精鋭部隊であり、この足柄城周辺に多くの風魔と兵が生活しています。城主は風間与太郎といい、北条家から正式に禄をもらっています。
世間では風間=風魔と言われていて菅原はなんとかしてここを抑える事をこの軍の目的としていました。風魔は大屋形様を殺した敵の一味だときいています。上杉事件の時も上杉謙信を殺したのは風魔でした。次に勝頼が狙われる事は十分にあり得ます。また、得体の知れない風魔を自由にさせないことがこの戦のキーになると考えたのです。
ただそれはこの軍の将、小山田信茂やこの武藤源二郎信繁も知りません。勝頼ならこうしてほしいだろうというのを想定して進めているのです。
足柄城は武田兵に囲まれていて通常ルートでは城から出ることが出来ません。ですがここは風魔の城、抜け道は多数作ってあります。菅原は事前に抜け道の在り処を調べさせました。ですが近づいた者は誰も戻ってこないという事件が発生し、それならばと城を囲ったのです。そして周囲の怪しげな場所を見晴らせました。すると、城から脱け出ようとした者があちこちから現れたのです。
そこからは、影の戦が始まりました。表では籠城している城兵と城を取り囲んでいる小山田軍ですが、影では外と連絡を取ろうとする風魔とそれを防ぐ武田忍びの争いです。菅原はこの戦に従軍するにするにあたり、勝頼に頼んで伊那忍びの吾郎とあの山本勘助が使っていた旧今川の忍びを借り受けています。
足柄城に籠る兵は700、囲んでいる武田軍は5000。普通なら外との連絡は無理ですが、そこは山城。城から抜け穴を使って連絡を取ろうとする風魔と、出てきた敵を見つけ殺して穴を塞ぐ武田の影の戦い。地道な作業を繰り返しています。多くの兵が動けば目立ちます。今までは1人づつ脱出を試みて全て失敗しています。
「風間様、敵の警戒厳しく、誰一人として脱出できておりません」
「そうか。小太郎様からの連絡もなし。ここで大人しくしているわけにはいかん。陽動作戦といこう」
城の中では外の風魔忍者、特に小太郎と連絡を取るために色々と手を尽くしたのですが上手くいかないため作戦会議が行われていました。流石の風間与太郎も城を大軍で囲まれては暴れようがないのです。本来なら風魔小太郎は風間与太郎と連携して、武藤喜兵衛の空軍を無力化しようとしたのですが、足柄城はすでに小山田軍により囲まれており、仕方なく小田原城の兵を使ったのでした。そのために戦力ダウンがあり、離陸を防げませんでした。
武田軍がゆっくりと進んでいたため、風魔は間に合うと見誤ったのです。ですが、本当なら小太郎は間に合ったのです。ところが、実際は小山田が意地を張って無理をしてめちゃくちゃに侵攻速度を加速して城を囲んだために間に合わなくなってしまいました。このちょっとした呼吸の差が戦局を左右するのが戦です。
風魔小太郎は、チーム丙の弾と戦った後、足柄城に来ていました。そして武田の配置を確認しています。その頃小田原城が燃えているとは知らずに。




