小田原城攻略作戦A
空を舞う武田空軍。特殊部隊ゼットのチーム丙の3人と訓練兵です。元々空を得意にしていたのはチーム甲の面々でしたが、チーム甲は勝頼の護衛任務が多いため、武藤喜兵衛がチーム丙をこの新兵器、スーパーグライダー 尾張出須を取り扱えるように鍛えたのです。元々特殊部隊ゼットは武藤喜兵衛が作ったチームなのである程度自由にする事が出来るのです。
現在は箱根を飛び立って小田原城まであと少しのところまで来ています。一度ブースターを使用しましたが高度が下がってきている兵が出てきました。チーム丙の乗る戦闘機は海からの風を上手く利用して高度を維持したまま飛んでいますが、訓練兵の乗る爆撃機はまちまちです。ここでスキルの差が出てしまいます。
速達は焦って叫びます。
「いかん。あのまま行くと小田原城にぶつかってしまう!」
空に飛び立った爆撃機は10機、そのうちの2機が小田原城の天守の高さまで落ちてしまっています。速達の声が聞こえたのでしょうか、慌てたこの2機が最後のブースターを使って上昇をかけました。
「あいつらブースターを使っちまった。もう戻れないぞ」
「仕方あるまい。訓練を始める時に死ぬ事は覚悟している筈だ」
チーム丙の英機と弦が空中で会話している様に、この部隊に立候補した時点で命はないのと同じでした。武藤喜兵衛はその事は訓練中に何度も繰り返し教育しています。訓練も地獄のような苦しさ、厳しさでした。空を飛ぶという事は簡単では無いのです。
2機は最後のブースターを使って上昇を始めます。ところが、それを城の北条兵が見ていました。ちょうど視線の高さに尾張出須が見えたのです。
北条氏政のところへ走って報告に来たのは氏直でした。氏直は天守に登り箱根の空を監視していたのです。
「父上。武田が空から来ました。秀吉の言う通りです」
「本当に来たのか!撃ち落とすぞ」
氏政は秀吉の言うことを半分疑ってかかっていました。空を飛ぶ道具などあるはずが無いと。だが、あの秀吉がわざわざこの小田原まで伝言を寄越したのです。意味がない訳がありません。現に氏直は鼻で笑って全く信じようとしませんでした。それが今で青ざめています。
「氏直。何をのんびりしている。準備は万端であろう。撃ち落とせ!」
家督を譲ったのですから当主は氏直です。周りに誰もいないとはいえ問題発言でしたが、氏直の顔を見て喝を入れるしかないとの判断でした。氏直は目が覚めたように、
「全て撃ち落とせば何のことはない!」
と急に強気に呟いて走って行きました。氏政はため息をついています。氏直はあまり頭が良くありません。考え方が単純なのです。強気で喧嘩ごしではあるのですが、中身は弱い、さっきのように気持ちを持ち上げてあげないと動かないのです。
せっかく滝山城まで行ったのに武田が出てくると聞いた途端小田原へ逃げ帰りました。もともと小田原城に籠城する作戦ではありましたが、籠城へ気持ちが逃げたのです。生れながらの強者、でも中身は弱者。氏政が早く家督を譲ったのは氏直を鍛えるためでもありました。
「長鉄砲隊、狙え! 放てー!」
氏直の掛け声に合わせて、長鉄砲10丁が火を吹きます。通常の火縄銃より射程距離が長いこの長鉄砲。今回のために用意したものです。ですが、弾はあたりませんでした。空に向かって撃つのは勝手が違いすぎます。全く違う方向に弾が飛んだようです。ですが何度か発砲するうちにコツが掴めたようで、1発がさっきの爆撃機を捉えました。
「!?」
弾が偶然爆撃機の爆弾部分、そうです。相良油田から汲み上げた油の入った容器をぶち抜きました。相良油田の油は成分はガソリンに近く、延焼力はハンパない強さです。一瞬で爆撃機が燃え上がり落下して行きます。
「おおっ!」
狙撃兵達はそれを見て大喜びです。氏直は、
「良くやった。全て撃ち落とすのだ。弾は腐るほど用意した。撃って撃ってうちまくれ!」
単純です。強気モードになっています。ですが、
爆撃機を操縦していた兵は燃えながらもがきました。ただで落ちてたまるかと!これで死んでは今まであんなに苦労した意味がない、と。そして身体は燃えていて思考力はもうないのに、無意識に小田原城へ向かって落ちていきます。それは小田原城二の丸に籠城していた北条兵の真ん中に落下しました。
「ドッカーーーーーーン!」
油はほぼ残ってはいませんでしたが、落下の勢いで炎を撒き散らしそこにいた兵を10名ほど道連れにしました。被害は大したことありませんでしたが、大きな音がして氏直はびびってしまいます。長鉄砲隊に撃つのをやめさせてしまいました。
空中では、一機が撃ち落とされた事がショックで城に近づく事が出来なくなっていました。城の上空を旋回しながら、
「弦、ここから落としたらどうだろう?」
「英機。それは無理だ。海風が強くて狙いが定まらん。あと9機しか残っていないんだ。無駄撃ちはできんよ」
「だがあれでは近づけん。時が来ればそのうちに全機落下せざるを得なくなるし。うーむ」
速達のいうとおり、いつまでも空中には入れません。今も少しずつ高度が下がっているのです。その時、弦が気がつきます。
「鉄砲が止んだ?」




