砲撃戦
突然、南の方向から砲弾を撃ち込まれました。水面に大きな水しぶきが上がり、携行していた船が沈んでいきます。
「ど、どこの船だ?」
「わかりません。見たことのない黒い船が4隻、先程の攻撃は大砲と思われます」
「なんだと。大砲なんて物を持っている船が他にもあるというのか?そうか、武田の船か?反撃しろ!」
「まだこちらの射程外です」
「そんな事はあるまい。向うの弾は届いているではないか!撃て、撃つんだ!」
小早川は敵船に向かって砲撃を指示しましたが、その間にも周りの船が沈められて放り出された兵が海上で溺れています。
「ドーン、ドーン!」
戦艦安芸の大砲が火を吹きます。ですが弾は届かず敵の船の手前の海に落ちてしまいました。
「なぜ届かん!風か、いや風はこちら側に有利だ。敵の船の方が性能が良いというのか?」
「殿。このままではやられてしまいます。ご指示を!」
「致し方あるまい。大阪湾へ入り、そうだ!本願寺に向かえ。周りの船は水路を使って逃げさせろ」
「この船はどうされます?」
「逃げるのだ。全速力で。そして敵が追ってきたら全速力で反転する。そうすれば一気に距離は縮まる」
毛利水軍は逃げ出しました。ですが戦艦安芸ほどの機動力がない周りの船は速度が出ません。それでも必死に逃げていきます。
「徳様、いかが致しましょう?」
「半兵衛殿。あれは本願寺へ向かっていると見ていいのですか?」
「おそらく。ですが戦艦富士は大きすぎて水路には入れません。おそらくは、ええとなんでしたっけ?そうそうUターン、Uターンしてこちらに突っ込んでくる作戦と思われます」
「それは面倒くさいわね。さっきので照準は大体掴めたわよね。ゆづ!」
「はい、徳様」
「富士を狙える?一番大きいから狙いやすいでしょ」
「はい。先程ので大体勘掴めましたので。数撃てば当たります」
「じゃあ、一気にやっておしまい」
「ええと、こういう時は何でしたっけ?あ、思い出しました。あいあいさー!」
戦艦駿河を改造して作られた最新式の大型戦艦駿河マークIIには、3連砲筒の主砲が3門、全て砲身内側に螺旋紋が彫られたいわゆるアームストロング砲もどきが装備されています。今までの大砲より射程距離が大幅に増えました。その分、命中精度が下がっていて何発か撃たないと補正ができにくくなっています。今回のように最初に試射ができれば問題ありませんが。
その他にも工夫がされていてなんと蒸気ボイラーを装備しています。艦尾のツインスクリューを人力ではなく蒸気の力で動かすのです。船首はドリルのようなものが付いていますがこれは一体なんでしょう?
「撃っちゃいなさいなー!」
徳の独特の掛け声をきっかけに砲撃が始まりました。駆逐艦櫻、欅は左右に展開して前進しています。駆逐艦には2連砲塔の主砲が2門装備されていますが、砲身が短く駿河程の射程距離はありません。その分命中精度は優っています。
ゆづが狙って放たれた砲弾は逃げる戦艦安芸を掠めます。続けて砲弾が放たれ今度は船尾に命中しました。
「敵の砲弾が船尾に命中、小破」
船員の報告に小早川隆景は悩みます。進むか、反転するか?タイミングを間違うとやられてしまいます。悩んでいるうちに次の砲弾がまたもや船尾に命中しました。衝撃で船が揺れます。
「敵の砲弾が船尾に命中、小破。表面の鉄板がめくれました。次に同じ位置に砲弾を受けると危険です」
船員の報告に小早川は決心します。
「反転だ。全速力で進み距離が詰まったら砲撃を開始しろ。それまでは回避しろ!」
戦艦安芸は周りの船を避けながら反転していきます。他の船は陸地を目指して進んでいきます。戦艦安芸が反転すると正面に大型の船、左右に弧を描くように少し小さい船が進んできます。小早川は一番大きな船に向かって全速力で突っ込むよう指示しました。敵船も全速力のようでみるみる距離が詰まっていきます。敵の大砲が発射されましたが、お互いに動いているのでなかなか当たりません。それでも2発が命中し、船が大きく揺れました。
「今だ!撃てー!」
小早川の声で大砲が発射されましたが、やはり当たりません。敵の左右に展開していた船は機動力に勝るようでみるみる近づいてきたと思いきや砲台がくるくる動き始めています。
「ま、まずい。狙われているぞ」
敵の船、武田海軍駆逐艦 楓と欅には、はなとかなが分かれて載っていました。一流の砲撃手です。
「ドーン!」
双方の船からタイミングを合わせたかのように大砲が発射されます。続けて何発も。小早川は頭を抱えて伏せましたが、何も起きません。あれ?外したのか?と思いきや、
「殿。味方の船が全て沈められました」
「!!!」
はなとかなは、戦艦安芸ではなく逃げていく船の方を狙ったのでした。そうこうしているうちに戦艦安芸は武田の大きな船に近づいていきます。
「こうなったら敵の船に乗り込むぞ!大砲を撃ちまくれ、この距離なら外れまい」
それはお互い様でした。いち早く大砲を撃ち始めた戦艦駿河マークIIの砲弾が戦艦安芸を襲います。そして、
「ドリルミサーーーーーイル!」
徳の声が海上に響き渡ると、戦艦駿河マークIIの船首から巨大なドリル状の物が発射され、それは戦艦安芸を直撃し破壊してしまいました。海に放り出された小早川とその兵は本願寺に向かって泳ぎだします。
「これで戦艦富士は無かった事になったわね。ドリルミサイルもなかなかの威力だったし、まあまあでしょ。ね、半兵衛殿」
「師匠、ミサイルというのは空高く飛ぶものかと思っておりましたが違うのですか?」
半兵衛は、科学的な話をする時は徳の事を師匠と呼びます。
「それが聞いてよ!ペットボトルロケットっていうのが教科書にあったでしょ?ペットボトルがなんだかわからなくてお屋形様に三雄殿に聞くように言ったのに、なんだかよくわからなかったみたいで結局わからないままなのよ」
「実験できなかったと」
「それでね。アームストロング砲の応用でネジ山を船首に掘ってね。発射時にグルグル回転しながら飛ぶドリルミサイルになったのよ」
「だいぶ話が飛躍しましたがなんとなくわかりました。まだミサイルは諦めてないのですな」
「当然よ!あれ?なんか敵の人達泳いで逃げて行ってるよ」
「放っておきましょう。陸地まではかなりあります。もし泳ぎきったならそれはご褒美という事で」
「そうね。敵の船は沈めたしって、あれ?こっちに向かって泳いでくる人がいるよ?」
「捕まえて捕虜にでもしますか?」
「なんか敵の水軍ぽくないわね、あ、沈んじゃう。半兵衛殿、あの人を助けましょう」




